山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2023年・第211通常国会

敵基地攻撃能力❝歯止めなし❞ IAMD 日米一体 あらゆる情報、射撃システムも共有

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
岸田政権が表明した敵基地攻撃能力、反撃能力の保有について伺います。
パネルを示します。(資料提示)
政府は、一九五九年三月、憲法との関係を次のように整理しています。誘導弾等による攻撃を防御するのに他に全然方法がないと認められる限り、誘導弾などの基地をたたくということは、法理的には自衛の範囲に含まれており、可能である、しかし、その危険があるからといって平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っているということは、憲法の趣旨とするところではないと述べています。これは、戦力を持たないとした九条二項に反するということにほかなりません。
では、その戦力とは何なのか。政府は、自衛のための必要最小限度の実力を超えるものだとし、保有が禁止される兵器を列挙してきました。
次のパネルを示します。
一九七〇年三月、次のような答弁があります。核兵器、特に攻撃的、戦略的核兵器、それから攻撃的兵器の中で例えばB52のようなもの、あるいはICBM、あるいは中距離誘導弾、このように他国の領域に対して直接脅威を与えるものは禁止されている、こういう答弁があります。この政府見解は変更されておりません。
総理に確認します。
これらはあくまで例示であって、他国の領域に対して直接脅威を与えるものは禁止される、これが憲法上の制約ですね。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 政府は従来から、我が国が保持できる自衛力は自衛のための必要最小限のものでなければならないが、その具体的な限度はその時々の国際情勢や科学技術等の諸条件によって左右される相対的な面が、面を有する、このように解してきました。
一方、政府としては、例えば長距離戦略爆撃機といった、性能上専ら相手国の国土の壊滅的破壊のためにのみ用いられるいわゆる攻撃的兵器を保有することは、直ちに自衛のための必要最小限度の範囲を超えることとなるため、いかなる場合にも許されない、このように考えております。

○山添拓君 総理、この一九七〇年の答弁は変わっていないと思うんですね。ですから、他国の領域に対して直接脅威を与えるものは禁止されている。その中には総理が今おっしゃった戦略爆撃機なども含まれるでしょうが、基本的には、それらは例示であって、基本的にはこの他国の領域に対して直接脅威を与えるものは禁止、これが九条二項の政府としての解釈ではないですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 先ほどの答弁の冒頭で申し上げたように、我が国が保持できる自衛力は自衛のための必要最小限度のものでなければならないわけですが、その具体的な限度はその時々の国際情勢や科学技術等の諸条件によって左右される相対的な面があると解しております。その上で申し上げています。いわゆる攻撃的兵器を保持することは直ちに自衛のための必要最小限度の範囲を超えることとなるため、いかなる場合においても許されないと、このように考えております。

○山添拓君 今いかなる場合においても許されないとおっしゃったように、この攻撃的な兵器、他国の領域に対して直接脅威を与えるものは禁止、これは相対的ではなく絶対的に禁止だとこれまで説明してきたわけですね。(発言する者あり)いや、今総理の後ろの方うなずいていらっしゃいました。
次のパネルを示します。
つまり、いろいろ限定を付けようとされるんですが、先ほどの答弁を変えたということはおっしゃっていません。他国の領域に対して直接脅威を与えるものは禁止、これは変わっていないわけです。
安保三文書で政府が導入するというスタンドオフミサイルは、一二式地対艦誘導弾を射程千キロ以上に延伸、迎撃困難な高速滑空弾は二千キロとか三千キロと言われます。極超音速誘導弾も三千キロなどと言われます。沖縄を基点とした場合、アジア全域が射程に入ります。
これらは、まさしく他国の領域に対して直接脅威を与える、憲法九条二項で保持が禁止される戦力そのものではないですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 従来から、この攻撃的兵器として、例えばICBM、長距離戦略爆撃機、あるいは攻撃型空母、こうしたものを挙げています。
その上で、スタンドオフミサイルについては、相手の艦艇や上陸部隊等に対処することを目的とした通常弾頭の精密誘導ミサイルであり、いわゆる攻撃的兵器とは異なり、憲法、そして専守防衛の基本方針の下で許容される自衛のための必要最小限度の範囲を超えるものではないと認識をいたします。

○山添拓君 相手の国を直接攻撃できる兵器を配備しようとしているわけです。それが、今、自衛のための必要最小限を超えるものではないと答弁なさいました。
しかし、自衛のために使うという意思さえあればよいのか。
一九六九年四月の閣議決定ではこう述べられています。自衛権の限界内の行動の用にのみ供する意図でありさえすれば、無限に保持することが許されるというものでもない、自衛のため必要最小限度という憲法上の制約があるので、当該兵器を含む我が国の防衛力の全体がこの制約の範囲内にとどまることを要するからである、このような閣議決定がされています。
つまり、自衛のためだと言いさえすれば、どんな兵器でも持ってよいということにはならない、これが政府のこれまでの見解です。この見解も変更はされていません。
軍事費を倍増し、長射程ミサイルなど敵基地攻撃能力の保有を進めれば、自衛隊全体を攻撃型の部隊に変えていくことになるんじゃありませんか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 我が国が保持できる自衛力は自衛のための必要最小限のものでなければなりません。しかし、その具体的な限度はその時々の国際情勢や科学技術等の諸条件によって左右される相対的な面を有すると申し上げております。
そして、その上で、スタンドオフミサイルについて、これはいわゆる攻撃的兵器とは異なり、憲法、そして専守防衛の基本方針の下で許容される防衛のための必要最小限度の、限度の範囲を超えるものではないと政府としては認識をしております。

○山添拓君 相対的な面があるのだと、だから、今度は相手の国まで届くようなミサイルを持っても必要最小限の範囲内なのだと、そういう説明を今されていたわけですね。これからスタンドオフミサイルを持っても必要最小限の範囲内なのだと。
しかし、これまでの政府の説明は、そのような攻撃型の兵器、相手の国まで直接届くような兵器は、それを持たないことが大事なんだと、持たないことが憲法九条二項の下での制約の表れだという立場で来たと思うんですね。
元内閣法制局長官の阪田雅裕氏は、量的な意味でも、反撃能力を持つという質的な意味でも、日本の自衛隊は既に専守防衛の組織ではなく、戦争に参加できる普通の国の軍隊と何ら変わりはありません、このように述べています。相手の国を直接攻撃できる兵器を保有しながら、陸海空軍その他の戦力でないとどうして言えるのでしょうか。
総理は、先日、我が党の小池晃議員の質問に、問題はこれをどう運用するかだと答弁しました。しかし、憲法は、運用の仕方によって戦力の保持を認めたり認めなかったりしているものではありません。運用のルールがどれだけ整えられても、憲法上保持できない兵器を持ってよいという根拠にはならないではありませんか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 委員の方から、阪田元法制局長官の発言の引用がありました。
まず、この発言は阪田氏個人の発言であり、政府としての見解を示すものではありません。
その上で、従来から申し上げておりますとおり、一九五六年の政府見解で述べたような措置を行うことは法理上可能であり、そうである以上、そのための必要最小限度の能力を保持することも法理上許されると考えております。
今回、保有することを決定した反撃能力は、憲法、国際法、国内法の範囲内で運用され、専守防衛の考え方を変更するものではなく、武力の行使の三要件を満たして初めて行使されるものであり、これまでの憲法解釈、これ変更するものではないと認識をいたします。

○山添拓君 今も運用という言葉を使われました。
他国の領域に直接脅威を与えるような兵器を一たび保有すれば、権力者次第で運用はいかようにも変わり得るわけですね。恣意的な判断で戦争の惨禍が引き起こされることのないように、戦力の保持そのものを禁止したのが憲法です。その自覚もなく、今安易に運用の問題だといって保有に突き進んでいく、これは既に権力の暴走と言うしかないと思うんですね。
総理が言う運用のルールというのは、安保法制で集団的自衛権も認めた武力行使の三要件ということになろうかと思います。この場合の三要件、集団的自衛権の場合の三要件ですね、これは、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し存立危機事態に至ること、他に適当な手段がないこと、必要最小限度の実力行使、この三要件だとされています。
第三要件、必要最小限度の実力行使について伺います。
日本が攻撃された場合、つまり個別的自衛権の場合には、急迫不正の侵害を排除するのに必要な最小限度と、こういうことになるかと思います。集団的自衛権の場合の必要最小限度とはどのような意味ですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 委員の方から集団的自衛権ということで御質問いただきましたが、本来の質問の趣旨は、我が国の存立的危機事態における条件だと理解をいたします。
そして、存立危機事態とは、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態であり、これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がなく、そして御質問の必要最小限の実力行使にとどまる場合において自衛の措置として武力を行使することが許容される、こうしたものであります。
その上で、政府は従来から、この武力の行使の三要件の第三要件に当たる必要最小限度について、その具体的な限度は、実際に発生した武力攻撃の規模、態様等に応ずるものであり、一概に述べることは困難であり、個別具体的な状況に即して客観的、合理的に判断すべきものである、このように解しているところであります。
これが政府の認識であります。

○山添拓君 今、第三要件の集団的自衛権行使の場合、まあ存立危機事態の場合と整理をされました、それで構わないんですけれども。
安保法制の審議に先立つ二〇一四年の国会で、当時の安倍総理からこのような答弁があります。新三要件に言う必要最小限度とは、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される原因をつくり出している、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃を排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るための必要最小限度だと。
これはこういう考え方ですね。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 御指摘の発言は、我が国の基本的な考え方を説明した答弁であると認識をいたします。

○山添拓君 我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃を排除しとあります。これは例えば、同盟国アメリカが勝利するまで共に戦うという意味ですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 存立危機事態、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによって我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある、こういった事態のことを存立危機事態と称しています。
我が国の国民の生命、自由、幸福追求の権利、こうしたものに対する危険、これを排除するためにこうした事態に対応する、こうしたものであると認識をしております。

○山添拓君 聞いたことに答えていただいていません。
我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃を排除しというのは、例えば、同盟国であるアメリカに対する攻撃を排除するまで、つまりアメリカが戦争に勝つか、少なくとも負けない、そういうところまで武力行使を続けるという意味ですかと伺っています。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) そういう意味ではありません。

○山添拓君 どういう意味ですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 先ほど申し上げました我が国の国民のその生命や自由、幸福追求の権利が覆される明白な危険、これに対して対処するということであります。アメリカが勝利するまで戦うなどということは全くここで申し上げておりません。

○山添拓君 今、必要最小限度という第三要件のその意味について確認したんですけれども、法律上明確な要件とされたと、そうおっしゃっているその要件についての説明も十分なされない。必要最小限度といいながら、生命、財産、生命、自由、幸福追求の権利が守られるまでなのだと、そういう答弁なんですかね。今の答弁では、必要最小限度の意味は全く明らかになっていないですよ。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 必要最小限度についての説明は、その前に答弁した答弁のとおりであります。
これ、具体的なこの限度は、実際に発生した武力攻撃の規模、態様等に応ずるものであり、一概に述べることは困難であり、個別具体的な状況に即して客観的、合理的に判断すべきものである、これが従来の政府の答弁であります。

○山添拓君 つまり、それはやってみなければ分からない、何の歯止めもないと言っているに等しいと思うんですね。そのときどんな武力行使をするのか。
次の問いに行きますけれども、総理は当時、当時というのは安保法制の審議の当時ですが、外務大臣として次のように答弁しています。自衛隊が武力行使を目的として、かつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘、すなわち、一般の方々が思い浮かべるような、敵を撃破するように大規模な空爆や砲撃を加えたり、敵地に攻め入るような行為に参加することはありません、このように答弁されていました。当時、敵基地攻撃は想定していないというのが政府の答弁でもありました。
今度、敵基地攻撃能力を保有するということは、武力行使のありようも変わり、大規模な空爆や砲撃、敵地に攻め入るような行為に参加することもあり得るということですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 敵地に攻め入るような攻撃、これはこれからも想定することはあり得ません。憲法との関係、憲法の要請から考えて、そういったものはありません。
反撃能力、これはあくまでも、従来のミサイル防衛体制に加えてこの反撃能力を用意することによって我が国の抑止力、対処力を向上させるためのものであります。

○山添拓君 当時の議論は、敵基地攻撃能力を我が国は保持していない、だからその敵基地攻撃を行うような武力行使は想定しないという答弁だったんですね。
今度その能力を持つわけですから、持てば想定しないというわけにはいかないんじゃないですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) ちょっと、先ほど委員の引用された私の発言、ちょっと正確には記憶しておりませんが、大規模に敵地に攻め込むようなことを考えていないという答弁であったと思いますが、それはそのとおりであり、これからも変わることはありません。
反撃能力は、あくまでも我が国の国民の生命、財産を守るために用意するものであります。従来のミサイル防衛体制と併せて用意することによって、我が国の抑止力、対処力を高めるためのものであります。

○山添拓君 これは、当時の議論は、敵基地攻撃能力を我が国は保持していない、保持していないので想定しようのしようがありませんから、ですから想定しないという答弁で通したわけですね。使いようがないですから、持っていなければ。
しかし、今度持つわけですから、持てば使い得るわけですよ。それを想定しないと言い張る。これは安保法制の審議のときと整合性が取れないと思うんですよ。持つんだったら想定し、なぜ使わないと言い切れるのかと。その政府としての解釈を示されることが必要だと思います。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) この大規模な攻撃を行う、敵地に対して大規模な、大規模に攻め入る、こういった能力、これは憲法との関係でこれからも許されるものではないと認識をしています。そういったものと反撃能力は別物であるということを説明させていただいています。
反撃能力、これはミサイル防衛体制と併せて国民の命を、暮らしを守るために必要な対応であると認識をして今回用意することを安保三文書の中で確認をした、こういった次第であります。

○山添拓君 しかし、そういう兵器を、さっきお示ししたように、沖縄を基点にすれば千キロ、二千キロ、三千キロ、アジア全体が射程に入るような兵器を大量に持っていこうとしているわけじゃないですか。それは使いようによっては攻撃的に使えるわけですよね。使わないというのは今そうだとおっしゃっているだけで、どういう場面で使うことになるかということを、政府としての解釈を求めているんですが、使わないと言い張るだけで全く歯止めになっていないと思うんです。
もう一点、別の点で聞きます。
集団的自衛権の行使として敵基地攻撃能力、例えば長射程のミサイルを発射すること、またその攻撃を続けることが必要最小限度かどうか、誰がどうやって判断するんですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) これは、その生じた事態に応じて、現場を含めて政府として判断をする。加えて、こうした武力行使については、国会の関与も絡めることによって説明責任をしっかり果たしていく。こうした仕組みになっていると理解しています。

○山添拓君 私は、集団的自衛権の行使ですから、他国に対する攻撃ですよね、その場合には日本政府が独自に判断することは困難が伴うのではないかということを指摘したいと思うんです。
IAMD、統合防空ミサイル防衛は、米軍が敵基地攻撃とミサイル防衛を一体で運用するために進めるもので、同盟国に働きかけ、安保三文書にも明記され、日米一体に進めようとしているものです。ところが、総理は、衆議院で我が党の志位委員長の質問に、アメリカの統合防空ミサイル防衛と我が国の統合防空ミサイル防衛は全く別物と述べました。
米軍が二〇一八年に発表したIAMD構想二〇二八は、全ての同盟国やパートナー国が共有でき、二国間での防空計画に代わって、脅威を阻止するために、あらゆるセンサー、シューターを活用できるネットワーク構造を提案するなどと述べています。各国のあらゆる情報収集、迎撃システムを一つに統合してしまおうという発想です。
一方、安保三文書には、ネットワークを通じて各種センサー、シューターを一元的かつ最適に運用できる体制を確立し、統合防空ミサイル防衛能力を強化すると書いています。全く別物と言いますが、言葉までうり二つです。
一月の日米2プラス2共同声明では、統合防空ミサイル防衛を挙げて、日本の反撃能力の効果的な運用に向けて日米間の協力を深化させることを決定したとしています。効果的な運用に向けて協力を深化していくというのは、このIAMDで日米のセンサーやミサイルを統合して米軍主導で運用を進めていくということではありませんか。

○防衛大臣(浜田靖一君) 国家防衛戦略においては、統合防空ミサイル防衛能力を強化し、我が国に対するミサイル攻撃についてはミサイル防衛システムを用いて迎撃しつつ、反撃能力を持つことによりミサイル防衛と相まってミサイル攻撃そのものを抑止していくこととしております。この際、日米が連携することが重要であると考えます。
一方、統合防空ミサイル防衛能力は、米国の要求に基づくものではなく、また、米国が推進するIAMDとも異なる我が国の主体的な取組であります。自衛隊及び米軍は、各々独立した指揮系統に従って行動し、かつ、自衛隊は憲法、国際法、国内法に従って行動することは言うまでもありません。
また、御指摘の日米2プラス2共同発表における反撃能力の効果的な運用は、情報収集、分析や日米間における様々なレベルでの調整要領などの検討を念頭に置いております。
以上です。

○山添拓君 独自にやるというんですけどね、米軍はそんなこと言っていないですよ。
昨年十月にバイデン政権が公表したミサイル防衛の見直し、MDRでは、同盟国との更なる協力が必要だとし、米国のパートナーは米国と同盟国のシステムが相互運用可能となるよう自国のIAMDシステムに投資するよう奨励されるべきと述べています。
防衛省の防衛研究所の二〇一七年の論文には、日米同盟においても、米国のIAMD構想に基づく日米の指揮統制統合について具体的な方策が求められることになるだろうと記してありました。米軍から情報共有を含めた相互運用可能な指揮統制システムにすることが求められてきていると、こういう実態はあるんだと思うんですね。
米軍の資料には、米国のIAMD能力を単独で高めるという実行不可能な選択肢を試みるのではなく、同盟国や友好国とセンサーや迎撃ミサイル、相乗的に活用し、インド太平洋軍のIAMD能力を拡大すべき、こういうことも書かれていました。アメリカが単独では実行不可能だと言っているシステムを日本が独自に構築するなど、これは荒唐無稽だと思います。
いろいろ言いますけれども、少なくとも米側は、米軍と一体、米軍の指揮下での運用を求めてきているというのが実態だと思うんです。私は、これは日米一体の運用となることは必然でもあると思います。
例えば、トマホークについて。これは事前に入力したレーダー地図と電波高度計で得た高度情報を照合しながら目標に向かいます。最終目標に近づくと、電子光学センサーで地上をスキャンし、事前に登録した情景と比較しながら進路を修正していきます。だから、高精度だと言われています。
防衛省に伺いますが、それでは、自衛隊は事前に入力できるようなレーダー地図など、情報を持っているんですか。

○国務大臣(浜田靖一君) 情報収集も含めて作戦の様々な場面において日米が協力していくことは当然であると考えております。
その上で、自衛隊及び米軍は各々独立した指揮系統に従って行動することから、運用に関わる意思決定はあくまで自衛隊が行うということでございます。
そしてまた、そのデータ関係でありますから、情報収集も含めて作戦の様々な場面において日米が協力をしていくことは当然のことであります。

○山添拓君 今、作戦の様々な場面で協力をすることは当然と言われました。そして、その情報は、トマホークに事前に入力するようなデータについては日本の今の装備では持っていないわけですね。これは当然、米軍の情報に依存していくことになります。そのシステムに統合され、事実上、米軍の指揮下で一体的に運用されることになるでしょう。しかも、米軍のIAMDビジョン二〇二八には、ザ・ベスト・ディフェンス・イズ・ア・グッド・オフェンス、これ訳せば、攻撃は最大の防御といったところでしょうか、こんなことまで書かれているんですね。先制攻撃まで含むようなシステムです。こういう構想に自衛隊を組み込んでいくなど、これ絶対に許されないと指摘したいと思います。
米国製ミサイルや戦闘機の購入は、FMS、有償軍事援助を中心に行われてきました。FMSを含む米国製兵器の、まあ売りさばきは各国に向けて行われています。そこで、ここ数年のベストスリーをリストアップしてみました。驚いたことに、日本は常に表彰台入りをしています。総理、なぜですか。

○国務大臣(浜田靖一君) 我が国の装備品のうち、イージスシステムやF35戦闘機といった装備品はFMSでしか調達することができず、FMSは我が国の防衛能力を強化する上で重要なものであると考えております。同時に、FMS調達については、経費について米国としっかりと交渉、調整し、価格の精査を通じて費用の抑制に努めており、米国からの、まあいわゆる爆買いとの指摘には当たらないと考えております。
引き続き、我が国に必要な装備品の、適正な価格で調達できるように努めてまいりたいというふうに考えております。

○山添拓君 全然お答えになっていませんが、アメリカの軍需産業団体の代表者らが、今年二月、下院の公聴会に出席して発言しています。一九八五年から二〇二一年にかけて、国防支出は、アメリカのですね、GDP比五・八%から三・二%に減少した、二〇三二年までに更に二・七%に減少する、このようなトレンドは大国間競争に必要とされる産業基盤創出とは相入れない、防衛産業基盤に対する予定どおりの十分な資金提供を行うことは最も重要なステップだ、FMS契約は供与まで十八か月掛かる、米政府全体でスケジュールを加速すべきだと、こうした軍需産業の要求を背景に、トランプ政権が同盟国に対してGDP比二%の軍事費を求めてきました。
米国製兵器の購入額で日本が表彰台入りを続けてきたのは、要するにアメリカ政府とアメリカの軍需産業の求めに際限なく応じてきたからではないですか、総理。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 我が国の防衛力を強化するに必要なものを我が国としてしっかりと調達する、このことが重要だというのが基本だと思っています。そして、我が国の装備品のうち、イージスシステムやF35戦闘機といった装備品はSMSでしか調達することができず、こうしたこのFMSといった仕組み、有償軍事援助、これは重要なこの取組である、制度であると認識をしています。
いずれにせよ、こういった制度を通じて必要な装備品を適正な価格で調達できるよう努力をしてまいりました。この数字につきましては、その結果であると認識をしています。

○山添拓君 結果であるとおっしゃるんですけれども、世界でも異常な米国製兵器の爆買いですよ。
今年一月、アメリカのシンクタンク、戦略国際問題研究所、CSISが、いわゆる台湾有事のシミュレーションを発表して話題になりました。
そもそも、このCSISとはどういう組織なのかと調べてみますと、ロッキード・マーティン、レイセオン、ボーイング、ノースロップ・グラマン、ジェネラル・ダイナミクス、世界トップファイブの軍需産業などが巨額の資金提供者として名を連ねています。これらの企業は、CNASという別のシンクタンクにも資金提供や人材の派遣を行っています。発表されているシミュレーションが、こうした企業の利益を反映したものだと疑われても仕方がないと思うんですね。
総理、私は、軍需産業の利益のために有事の不安をあおって異次元の大軍拡に突き進むなど、あってはならないと考えます。総理に最後に答弁を求めたいと思います。

○委員長(末松信介君) 申合せの時間が参っておりますので、答弁簡潔に願います。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 私の立場から、他国のシンクタンクの在り方、あるいはこの分析、政策提言、内容等についてコメントすることは差し控えるべきものであると考えています。
いずれにせよ、我が国として、我が国の国益を最大限重視しながら対応を考えてまいります。

○山添拓君 CSISには日本の外務省も毎年数千万円拠出しています。

○委員長(末松信介君) 時間が来ております。

○山添拓君 今、日本政府が行うべきは、軍事に軍事で対抗するシミュレーションではなく、戦争を起こさせない平和外交のための努力だということを述べて、質問を終わります。

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