山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2023年・第211通常国会

NATOに拠出やめよ ウクライナ支援 非軍事で/欧州安保の教訓 外交の失敗について総理の認識質す

要約
  • 岸田総理がウクライナ訪問で同国に約束した北大西洋条約機構(NATO)信託基金への3000万ドル(約39億円)の拠出について、使途を「殺傷性のない兵器」などに限定することは事実上できないと指摘。非軍事での支援と戦争を回避する外交努力が重要だと訴えた。また安保3文書がロシアの侵略の背景にウクライナの防衛力の不足を挙げている問題をとりあげ、紛争の平和的解決のための機関=OSCEを生かさず「力対力」に陥ったことを指摘して岸田総理の認識を質し、外交の失敗を看過すべきでないと主張した。

○議長(尾辻秀久君) 山添拓君。

〔山添拓君登壇、拍手〕

○山添拓君 日本共産党を代表し、岸田総理のウクライナ等訪問報告について総理に質問します。
冒頭、優生保護法による強制不妊を違憲とし、賠償を命じた大阪高裁判決について述べます。
原告勝訴の判決は七例目、高裁で四例目です。判決は、国がいまだに裁判で違憲性を認めないことを批判し、不法行為から二十年で損害賠償請求権が消滅する除斥期間の適用を否定しました。
総理に伺います。
この裁判でも原告五人のうち二人が既に亡くなりました。これ以上、尊厳を傷つけ続けることは許されません。上告せず、全面解決に踏み出すべきではありませんか。
判決は、違憲の法律を放置してきた国会の立法不作為を断罪しています。参議院として、上告すべきでないという意思を示すべきではありませんか。議員各位に呼びかけるものです。
二月二十三日、国連総会の緊急特別会合は、国連憲章の原則に沿ったウクライナの包括的、公正かつ永続的な和平を求める決議案を百四十一か国の賛成で採択しました。ロシアは直ちに侵略をやめ、撤退すべきです。ベラルーシへの戦術核配備の撤回を強く求めます。
総理とゼレンスキー大統領の共同声明は、ロシアのウクライナ侵略が、国連憲章にうたう基本原則、特に主権及び領土一体性の原則に対する重大な違反であるとしました。
国連憲章を守れの一点で国際社会が団結を強めることが一層急務です。この立場に立つ国を広げるために、どのような外交を進めますか。
首脳会談で総理は、NATOの信託基金を通じた殺傷性のない装備品支援に三千万ドルの拠出を表明しました。殺傷性のない兵器とは何ですか。NATOの信託基金を通じて支援するのはなぜですか。紛争当事国を直接支援する目的で、過去に類似の基金に拠出した例はありますか。
政府は、一九九一年、湾岸戦争に伴い、湾岸平和基金に合計一兆二千四百億円を拠出しました。当時の海部総理は、武器、弾薬には使わせないと国会で答弁し、その使途は交換公文で定められていると説明しましたが、九割以上は米国に渡りました。お金に色はありません。今度の三千万ドルも使途の限定など事実上できないのではありませんか。
日本は長年、武器輸出を原則として禁止してきました。ところが、二〇一四年、安倍政権が閣議決定で防衛装備移転三原則を定め、輸出解禁へ百八十度転換しました。
従来、武器輸出を原則禁止してきたのはなぜですか。外務省は、武器輸出を行わず、輸出を前提とした軍需産業がないことが軍縮外交を進める上で国際社会をリードできるとしていたのではなかったですか。
昨年、運用指針を改定し、紛争当事国への軍事支援をも認めました。さらに、自民党内では、殺傷力のある武器の輸出まで可能にするために運用指針の更なる変更に向けた議論まで行われているといいます。ウクライナ侵略に乗じてこの歯止めまで取り払えば、どうして平和国家であり続けるなどと言えるのですか。
ゼレンスキー大統領は、昨年三月、国会で行ったオンライン演説で、人々は住み慣れたふるさとに戻らなければならないと述べ、避難者が帰還した際の復興支援を求めました。こうした非軍事の支援に徹するべきです。答弁を求めます。
岸田政権が昨年十二月に閣議決定した安保三文書は、ウクライナの防衛力が十分ではなくロシアの侵略を抑止できなかった、軍事力の不足がウクライナ侵略の背景だとしています。これでは十九世紀と同じ力対力の世界であり、国連憲章も憲法も見えません。総理は、これがウクライナ侵略の教訓だとでも言うのですか。
ヨーロッパの教訓は、むしろ力対力で平和はつくれないということにあります。
ソ連崩壊後に発展した欧州安全保障協力機構、OSCEとはどのような機関ですか。また、一九九九年の欧州安全保障憲章がOSCEを紛争の平和的解決のための主要な機関と位置付けたことをどう認識していますか。
一九九四年、OSCEの会議で、アメリカ、イギリス、ロシアが署名したブダペスト覚書は、ウクライナの独立、主権、既存の国境を尊重し、威嚇や武力行使を控え、安全を保障するとしていました。ところが、OSCEの紛争予防、危機管理の機能が十分生かされず、NATO諸国もロシアも軍事力で相手の攻撃を抑止するという戦略を強め、力対力に陥った、これがこの間の経過ではありませんか。
もとより、ウクライナ侵略の責任は、国連憲章をじゅうりんしたロシア・プーチン政権にあることは言うまでもありません。同時に、戦争という結果になった背景には外交の失敗があるということを看過すべきではありません。この失敗を東アジアで繰り返さないために、地域の全ての国々が参加する平和の枠組みをつくり機能させる、これこそヨーロッパから引き出す最大の教訓ではありませんか。
中国が東シナ海や南シナ海で力による現状変更を推し進める動きは断じて容認できません。しかし、軍事的な対応を強化すれば緊張を激化させるのは明らかです。
にもかかわらず、安保三文書は、軍事力に裏付けられた外交を掲げており、典型的な力の論理です。戦力の放棄という徹底した平和主義を通じて国際社会における名誉ある地位を占めることとした憲法を、総理はどう認識しているのですか。
総理は、二十日にインドで行った演説で、安倍政権以来、政府が主張する自由で開かれたインド太平洋戦略、FOIPに言及し、その理念は多様性、包摂性、開放性の尊重です、誰も排除しない、陣営づくりをしない、価値観を押し付けないということと述べました。
しかし、FOIPは中国を含まず、むしろ中国を多国間で牽制する狙いを背景としています。日米豪印、クアッドの強化を始めインド太平洋での自衛隊と米軍などとの共同演習が劇的に増加したのはその現れです。実態は、中国包囲の取組にほかなりません。こうして軍事的包囲を強めれば、相手も軍事力をエスカレートさせることが十分想定されるのではありませんか。
昨年十一月、ASEAN首脳会議の閉幕に当たり、次期議長国インドネシアのジョコ大統領は次のように述べました。ASEAN十か国は、平和な地域、世界の安定の頼みの綱となり、一貫して国際法を擁護しなければならず、また、いかなる大国の代理人になってもならない。現在の地政学的な動態を我々のこの地域で新たな冷戦へと変化させるべきではない。米中対立をあおり、アジアにおける緊張関係を高めるのではなく、緊張緩和こそが求められます。日本はそのためにASEANとどのような協力を進めますか。
今年は、日本とASEANの交流、協力五十周年です。十六日に開かれた記念シンポジウムでマルティ・ナタレガワ元インドネシア外相は、東南アジア友好協力条約、TACに触れ、TACは紛争解決に軍事を使わない、外交と対話の重要性を示している、これは東南アジアのダイナミクスを紛争と緊張から相互理解と信頼へと変えるものだと述べました。総理はどう受け止めますか。
二〇一九年のASEAN首脳会議で採択されたASEANインド太平洋構想、AOIPは、東南アジア友好協力条約を指針に、東アジア規模での友好協力条約を展望する構想です。現に、ASEAN十か国に加えて日本や米国、中国など八か国が参加する東アジア・サミット、EASが存在します。これを活用し発展させる外交ビジョンを持ち進むことにこそ東アジアの平和への展望があると考えます。答弁を求めます。
軍拡競争の先に平和への展望はありません。大軍拡と軍事同盟強化の安保三文書はきっぱり撤回し、戦争準備ではなく、戦争を回避するための外交努力を尽くすべきことを重ねて指摘し、質問といたします。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 山添拓議員にお答えいたします。
旧優生保護法、国家賠償請求訴訟についてお尋ねがありました。
旧優生保護法に基づき、あるいはこの法律の存在を背景として、多くの方が特定の疾病や障害を理由に生殖を不能にする手術等を受けることを強いられ、心身に多大な苦痛を受けてこられたことについて、政府として真摯に反省をし、心から深くおわびを申し上げる次第です。
その上で、係争中の個別の訴訟につきましては、それぞれ個別に検討し、事案の内容に応じて一つ一つ丁寧に対応しており、三月二十三日の大阪高裁判決についても、関係省庁において判決内容を精査した上で適切に対応してまいります。
国連憲章の遵守についてお尋ねがありました。
昨年十月、百四十三か国が賛成したウクライナの領土一体性及び国連憲章の原則の擁護に関する決議は、国連総会の場で、国際社会の大多数が一致して国連憲章の原則と目的を守る強い意思を表明したものです。また、本年二月に百四十一か国が賛成した決議は、国連憲章の原則にのっとった包括的、公正かつ永続的な平和、これを求めております。
一刻も早くロシアが侵略をやめるよう、国際社会が結束して毅然と対応し、これらの決議の実施に至ることが重要であります。そのために、我が国として、G7を始めとする各国と連携しながら、力による一方的な現状変更の試みに対抗する国際社会の取組、これを主導してまいります。
NATOの信託基金を通じたウクライナ支援についてお尋ねがありました。
御質問で言及された類似の基金の意味するところは明らかではありませんが、今般拠出を行うNATOの信託基金は、殺傷性のない装備品の供与を実現できる枠組みで、拠出国が使途の指定を行うことができることから、先ほど申し上げたウクライナ支援に資するものと判断し、今般、当該信託基金への拠出、これを決定をいたしました。
我が国の拠出を通じた支援についても、殺傷性のない装備品の供与に使途をしっかりと指定をした上で、今後細部を調整することとしております。
防衛装備移転とウクライナ支援についてお尋ねがありました。
かつての武器輸出三原則等では、平和国家としての我が国の立場から、国際紛争等を助長することを回避するため、慎重に対処することを基本としていました。その結果、実質的に全ての地域に対して武器の輸出を認めないこととなったため、政府は個別の必要性に応じて例外化措置を重ねてきました。
こうした中で、新たな安全保障環境に適合するよう、それまでの例外化の経緯を踏まえ、包括的に整理をし、二〇一四年に防衛装備移転三原則を定めました。その中でも、平和国家としての基本理念は引き続き堅持をしていくこととしております。
御指摘のウクライナへの装備品等の提供については、こうした防衛装備移転三原則と自衛隊法第百十六条の三に基づき適切に行ったものであります。
今般の日・ウクライナ首脳会談においても、ゼレンスキー大統領から、日本のこれまでの支援に対して深甚なる感謝が述べられたところであり、今後も日本ならではの形で切れ目なくウクライナを支えてまいります。なお、軍縮・不拡散等の国際社会の取組に積極的に貢献するとの我が国の立場、これに変更はありません。
三文書とウクライナ侵略の教訓についてお尋ねがありました。
今般のウクライナ侵略を踏まえれば、国際社会の平和及び安全の維持に関する主要な責任を有する国際連合安全保障理事会の常任理事国によって、武力の行使の一般禁止という国際社会の大原則があからさまな形で破られており、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面する中で、同様の深刻な事態が、将来、インド太平洋地域、とりわけ東アジアにおいて発生する可能性も排除されないものであると考えております。
こうした状況も踏まえ、三原則においては、国民の命と平和な暮らしを守り抜くため、防衛力の抜本的強化を進めることとしておりますが、同時に、我が国に望ましい安全保障環境を能動的に創出するための力強い外交を展開する方針も明記をしております。
いずれにせよ、これらの取組は憲法、国際法、国内法の範囲内で専守防衛の考え方を堅持して進めていくものであり、このことは繰り返し説明をしているとおりであります。
そして、欧州安全保障協力機構、OSCEについてお尋ねがありました。
OSCEは、五十七か国が加盟する地域安全保障機構であり、政治的対話を行う場の提供などを通じて加盟国間の信頼醸成を行う機関であると承知をしております。
ウクライナ情勢をめぐるOSCEの動きについて我が国として評価を行う立場ではありませんが、ロシアのウクライナ侵略はそもそも国際法違反であります。OSCE加盟国が他の加盟国を侵略するという事態であり、これ、国際秩序の根幹を揺るがし、断じて正当化することができないものとして非難すべきものであると考えております。
東アジア地域における平和の枠組みについてお尋ねがありました。
我が国を取り巻く安全保障環境が戦後最も厳しく複雑になる中、我が国は各国との連携を強化し、自由で開かれたインド太平洋、FOIPのビジョンを共有する国の輪を更に広げていきます。
アジアではASEANが地域協力の中心として重要な役割を担っており、多層的な地域協力の枠組みがあります。ASEANの提唱するASEANアウトルック、AOIPは、FOIPと理念を共有するものです。引き続き、我が国として、ASEAN中心性を尊重し、積極的な貢献を行いながら、FOIPを実現するための協力、一層強化していく考えであります。
三文書と平和主義についてお尋ねがありました。
国家安全保障戦略等においては、まず優先されるべきは積極的な外交の展開であり、同時に、外交には裏付けとなる防衛力が必要であるとの考え方を示しました。こうした考え方に基づき、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に対峙していく中で国民の命や平和な暮らしを守り抜くため、防衛力の抜本的強化を具体化したところです。
国家安全保障戦略等に基づく施策はあくまで憲法の範囲内で行うものであり、平和国家としての我が国の歩み、いささかも変えるものではありません。
自由で開かれたインド太平洋、FOIPや、日米豪印の在り方についてお尋ねがありました。
自由で開かれたインド太平洋、FOIPは、包摂的で開かれたビジョンであり、特定の国を念頭に置いたものではありません。日本は、FOIPの考え方に賛同してもらえるならば、どの国、地域とも協力をしてまいります。また、日米豪印は、そうしたFOIPの実現に向け、様々な分野で実践的な協力を進める取組です。
その上で、諸外国に対して防衛政策の具体的な考え方を明確にするなど自国の安全保障政策の透明性を確保する、このことが重要であると考えております。
ASEANとの協力についてお尋ねがありました。
日本は法の支配に基づく国際秩序を守り抜く決意であり、そのためにも、グローバルサウスとの関係を強化することが重要であると考えています。そのような考えから、私は、先週のインド訪問に際して、自由で開かれたインド太平洋、FOIPのビジョンを更に発展させるプランを発表いたしました。
日本としては、ASEANを中心とした地域協力の枠組みへの積極的な貢献、さらにはその強化に取り組むとともに、FOIPを実現するためのASEANとの協力、これを一層強化していく考えであります。
東南アジア友好協力条約、TACについてお尋ねがありました。
同条約は、東南アジアにおける平和、友好及び協力の促進を目的としており、主権や領土一体性の尊重、紛争の平和的解決、武力の不行使など、国連憲章も掲げる基本原則を掲げております。
我が国を含む多くの国々が東南アジア諸国とともにこの条約を締結しており、国際社会が歴史的な転換期にある中、この条約の意義は引き続き大きいものであると考えております。
東南アジア首脳会議、EASと東アジアの平和についてお尋ねがありました。
東アジア首脳会議は、米中も含む各国首脳の間で地域共通の課題について率直な対話を行うことができる重要なフォーラムです。同時に、我が国は、自由で開かれたインド太平洋、FOIPと本質的な原則を共有するインド太平洋に関するASEANアウトルック、AOIPを一貫して強く支持をしております。
ASEANを含む関係国と緊密に連携しつつFOIPを推進していくとともに、AOIPに示されているような地域の平和と繁栄に積極的に貢献していく考えであります。(拍手)

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