山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2023年・第211通常国会

「被爆者」の言葉もない「核抑止」正当化するG7広島ビジョンを批判/日・バーレーン投資協定、租税条約2件に対する反対討論

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
G7サミットについて外務大臣に伺いたいと思います。
初めに、先ほど小西議員の質問を伺っていて、私も疑問に感じましたので伺いたいのですが、首脳らが原爆資料館を訪れ、被爆者から証言を聞いたことなど報道されてきました。ところが、視察は完全非公開とされ、何を見たのか、その詳細は明らかにされず、被爆者と会った様子も隠されました。これはなぜですか。

○外務大臣(林芳正君) 先ほども小西委員にお答えをいたしたとおりでございますが、この視察に当たっては、各国との準備、調整の中で、資料館訪問の内容ややり取りの詳細を非公開とすることにいたしたところでございます。

○山添拓君 準備、調整の過程でそのような要望があったということなんですね。

○国務大臣(林芳正君) 各国との準備、調整の中で、資料館訪問の内容ややり取りの詳細は非公開とすることにいたしました。

○山添拓君 お答えになりませんが、これはアメリカやフランスなど核保有国の首脳が展示を見る様子が伝わるのを避けたかったということも報じられておりました。被爆の実相に向き合うのを拒むような姿勢を日本政府の側がサポートしたと取られても仕方ないと思います。
しかし、被爆者の証言を聞いた以上は被爆の実相にも触れたはずです。人間らしく死ぬことも人間らしく生きることも許さない核兵器の本質的な非人道性に思いを致さざるを得なかったはずです。だからこそ、いかなる国の使用も威嚇もいかなる状況の下でも許されないという核兵器の廃絶が当然の道となるべきです。
大臣に伺います。
被爆の実相を踏まえた核兵器廃絶の必要性について、首脳間ではどのように合意したんですか。

○国務大臣(林芳正君) 被爆地広島で開催されました今回のサミットでは、G7首脳は平和記念公園での献花、資料館訪問、被爆者との対話等を行いました。これにより、世界のリーダーたちに被爆の実相に触れていただき、これを粛然と胸に刻む時を共有していただきました。このことは各々の首脳等が芳名録に記したメッセージにも表れていると感じております。
その後、外交・安全保障セッションで、平和記念公園訪問の印象が強く残る中でG7首脳との間で胸襟を開いた議論が行われ、こうした議論の結果、核軍縮に焦点を当てたG7初の独立首脳文書である核軍縮に関するG7首脳広島ビジョンを発出をしたところでございます。核兵器のない世界という理想の実現に向けたG7首脳の決意や、今後我々が取るべき行動を示す力強い歴史的文書になったと考えております。
同文書においては、G7首脳の総意として、広島、長崎に核兵器が投下されて以来七十七年間に及ぶ核兵器の不使用の記録の重要性、これを強調するとともに、粛然として来し方を振り返るこの時において、途中略しますが、核兵器のない世界の実現に向けた我々のコミットメントを再確認するなどと記載しているところでございます。
このように、被爆地を訪れて、被爆者の声を聞き、被爆の実相や平和を願う人々の思いに直接触れたG7首脳が先ほど述べたような内容を含むG7広島首脳ビジョンを発出したこと、これは歴史的な意義のあることだというふうに考えておるところでございます。

○山添拓君 今長く答弁をいただいたんですが、その広島ビジョンにもコミュニケにも、被爆者という言葉すら出てこないんですね。また、今省略をされた部分は、核兵器のない世界の実現、その枕言葉として、全ての者にとっての安全が損なわれない形でのと、条件も付しているんですよ。
ですから、今、こうした態度を取ったG7の成果文書とされるものについて、例えばICAN、核兵器廃絶国際キャンペーンの川崎哲氏は、被爆の実相と文書が断絶している、被爆地が踏みにじられた感じだと批判をしています。こうした憤りの声が上がるのは当然だと思うんです。
ウクライナへの侵略をめぐって、ロシア・プーチン大統領が、核兵器の使用を辞さない、威嚇を繰り返してきました。核戦争の危機に直面する中で、ロシアであれアメリカであれいかなる国であれ、使用も威嚇も許さないための国際社会の対応が問われてきました。ところが、サミットの成果文書、広島ビジョンは、中国やロシアの核政策を批判する一方で、G7側の核兵器は、防衛目的のため、侵略を抑止し、戦争及び威圧を防止するなどと正当化しました。
これは、大臣に伺います。
ロシアによる核使用の威嚇が許されないのは当然です。しかし、G7側にも核軍縮の義務があるはずです。NPT六条の義務です。なぜG7側の義務には触れていないんですか。

○国務大臣(林芳正君) 核軍縮に関するG7広島首脳ビジョンにおきましては、中ロに対して、第六条を含むNPTの下での義務に沿い、関連する多国間及び二国間のフォーラムにおいて実質的に関与することを求めております。
で、これは同ビジョンで記載しているように、ロシアによる核兵器の使用の威嚇やベラルーシへの核兵器配備の意図表明、また、中国による透明性や有意義な対話を欠いた加速している核戦力の増強といった昨今の動向を踏まえたものでございます。
同時に、同ビジョンでは、米、英、仏を含むG7首脳の総意として、核兵器のない世界へのコミットメントを再確認し、世界全体の核兵器数の全体的な減少傾向は継続しなければならないとしております。また、核軍縮を追求するための基礎として、NPTは堅持されなければならないと記載をしておるところでございます。
引き続き、同盟国である米国との信頼関係を基礎としつつ、また英、仏とも連携し、G7広島首脳ビジョンも踏まえつつ、中ロを巻き込む形で、軍備管理そして軍縮に係る取組を進めてまいりたいと考えております。

○山添拓君 いや、今の大臣の答弁された部分は中国、ロシアに対して求めるもので、これもう当然ですが、G7側の核兵器については、六条に基づく軍縮義務、これは明記されていないですね。

○国務大臣(林芳正君) 先ほど申し上げましたように、この同ビジョンに、米、英、仏を含むG7首脳の総意として、核兵器のない世界へのコミットメントを再確認し、世界全体の核兵器数の全体的な減少する傾向が継続しなければならないとしております。また、核軍縮を追求するための基礎として、NPTは堅持されなければならないと記載しておるところでございます。

○山添拓君 六条という核軍縮義務、それをあえて除外しているわけですよ。加えて言えば、中ロに対しても核兵器廃絶を求めるものとはなっていません。
こうして核保有国がNPT六条に基づく義務の履行に背を向ける中、多くの非保有国が被爆の実相を踏まえて作り上げたのが核兵器禁止条約です。昨年六月の第一回締約国会議では、ロシアのウクライナ侵略に公然とは反対していない国も含めて、全会一致であらゆる核兵器の威嚇を非難しました。既に九十二か国が署名し、国連加盟国の半数に迫っています。この流れにこそ核廃絶へ向かう力があります。
大臣に伺います。
今年、第二回締約国会議が開かれる予定です。政府は参加するんですか。

○国務大臣(林芳正君) 核兵器禁止条約は、核兵器のない世界への出口とも言える重要な条約であります。しかし、現実を変えるためには核兵器国の協力が必要でありますが、同条約には核兵器国は一か国も参加をしていないところでございます。
我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器国を関与させるよう努力していかなければならないと思います。核兵器のない世界の実現に向けて、唯一の同盟国である米国との信頼関係を基礎としつつ、今回のサミットの成果も踏まえて、ヒロシマ・アクション・プランを始め、現実的かつ実践的な取組を進めてまいります。

○山添拓君 いや、それで、第二回締約国会議には、政府としてはどのように対応していこうと今お考えなんでしょうか。

○国務大臣(林芳正君) 先ほど申し上げました基本的な考え方を下に対応をしてまいりたいと思っております。

○山添拓君 参加をするのかしないのかと、対応について明言することもされない。そして、核兵器のない世界を永遠の目標などと言って、核抑止力論にしがみつく。被爆地広島で核廃絶に背を向ける、開き直ったということは、これは断じて許されないと指摘したいと思います。
残りの時間で、投資協定に関わって伺います。
本日の議題である日・バーレーン投資協定には、ISD条項が含まれています。企業が進出先の国の制度や政策の変更により損害を受けたと主張し、当該外国政府を相手取り、損害賠償請求ができるようにするものです。
これは外務省でしょうか、経産省がお答えになるでしょうか。これまでISD条項に基づき日本政府が提訴された事例を御紹介ください。

○外務省 大臣官房参事官(片平聡君) お答え申し上げます。
日香港投資協定に基づき、日本政府が香港の投資家から太陽光発電の個別案件に関する再エネ特措法上の措置に関する事案についての国際仲裁手続に申し立てられた事案が一件ございます。
仲裁判断の結果につきましては、仲裁手続規則及び仲裁廷の命令により紛争当事者間の合意がないものについて開示が禁じられているため、これ以上の詳細についてコメントすることは差し控えさせていただきたいと思いますが、日本政府による賠償金支払が発生する状況にはございません。

○山添拓君 裁判費用は幾ら掛かったんですか。

○経済産業省 通商政策局通商機構部長(柏原恭子君) お答え申し上げます。
仲裁手続に関する情報については、仲裁廷の命令により案件の存在自体を除き開示が禁じられており、仲裁費用等、ただいま外務省から答弁のあった内容以上の詳細についてお答えすることは差し控えたいと存じます。

○山添拓君 いや、日本側で掛かった裁判費用も明らかにできないのですか。

○政府参考人(柏原恭子君) ただいま申し上げましたとおり、仲裁手続に関する情報については、仲裁廷の命令により案件の存在自体を除き開示が禁じられております。
経産省としましては、仲裁費用の金額についても仲裁廷の命令により開示が禁じられていると理解しており、お答えすることは差し控えたいと存じます。

○山添拓君 いや、これはちょっと、会計検査院本当に通るのかということを疑わざるを得ないですが。
法規制が争われたわけですね。ところが、費用すら公にできないとおっしゃるわけです。今後、提訴されたような場合も、合意がない限り、仲裁廷の命令によって国民にも国会にも説明しないおつもりですか、外務省。

○政府参考人(片平聡君) 私の方からは一般論のことを申し上げました。
個別の事案につきましては、経産省の方からお答えしたとおりでございます。

○山添拓君 公にできない、訴えられたにもかかわらずですね、そのような仕組み自体不合理と言うべきです。
近年、投資協定などでISD条項を採用せず、又は既に締結したISD条項を破棄する動きを見せる国があると言います。御紹介ください。

○外務省 大臣官房参事官(大河内昭博君) お答え申し上げます。
御指摘のように、投資協定におきましてISDS条項を規定しない方針等を取る国があるということは承知しておりますが、他国の政策判断でございますので、我が国といたしまして認識ないしは見解を示すことは差し控えたいと、このように考えております。

○山添拓君 ブラジルは、ISDSは憲法に反するとして締結していません。南アフリカ、ベネズエラ、ボリビア、エクアドル、インドネシアなどで破棄する動きが報じられています。EUでは、ISDSは死んだと宣言し、常設の投資裁判所の設置を提唱しています。アメリカとカナダの間では、発効後三年でISD条項が停止されました。オーストラリアの労働党は、今後の貿易協定にISD条項を含めないと宣言していると言います。
多国籍企業が国家主権を脅かすISD条項は不当だというのが世界の流れです。これに日本政府が固執し続けるのはやめるべきだということを指摘し、質問を終わります。

―――――

○山添拓君 日本共産党を代表し、日・バーレーン投資協定、日・アゼルバイジャン租税条約及び日・アルジェリア租税条約に反対の討論を行います。
日・バーレーン投資協定は、日本企業による投資の拡大を通じた海外進出を促進するため、投資環境を整備しようとするものです。
本協定に盛り込まれたISD条項は、多国籍企業が進出先国の制度や政策の変更により損害を受けたと主張し、当該進出先国の政府を相手取り損害賠償を求め、提訴できるようにするものです。進出される側の国の政府が多国籍企業に提訴されるのをおそれ、自国民の権利保障や環境保全のための国内規制を抑制する萎縮効果を生み、仮に敗訴すれば、自国民より外国企業の利益を優先させ、規制撤廃が求められることになります。国家主権を脅かすことは明らかです。
日・アゼルバイジャン及び日・アルジェリア租税条約は、配当、利子、使用料という投資所得に対する源泉地国での課税限度税率を軽減又は免除するものです。海外子会社による投資所得は課税されないため、親会社である日本の大企業は優遇されています。その上、両条約によって源泉地国での課税が劇的に軽くなり、税制優遇措置を二重三重に享受できることになります。源泉地国の課税権を制限することになるのも妥当ではありません。
経団連など経済界は、投資所得に係る源泉地課税を軽減することは海外からの資金還流及び国内における再投資という好循環の実現に資するなどと主張し、租税条約ネットワークの充実による更なる税制優遇を公然と求めています。
両条約は、こうした財界の要求に応え、国際課税分野での大企業優遇税制を国内外で更に拡大強化するものです。物価高が暮らしと営業を襲う一方、大企業は空前の内部留保をため込んでいます。不公正税制の是正こそ求められており、大企業や投資家への優遇税制を強める両条約には賛成できません。
以上、三条約に対する反対討論といたします。

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