山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2023年・第211通常国会

被害者・告発者に報復 自衛隊ハラスメント 追及

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
三つの条約については我が党も賛成です。
つい先ほど、法務委員会で入管法改悪案が怒号の中で採決をされました。国際人権水準に遠く及ばない難民認定の行政の在り方について、私はこの委員会でも質疑をしてきましたが、それを更に後退させるような法案を乱暴に通そうとすることには断固抗議を表明したいと思います。
その上で、その人権に関わっては、これは自衛隊内でも深刻な実態があります。昨日は、海上自衛隊佐世保基地を母港とする護衛艦で勤務していた海士長が長時間労働やパワハラを苦に自死したことについて裁判が始まりました。
防衛省に伺いますが、ハラスメントを理由とする裁判で現在係争中のものは何件あるでしょうか。そのうち、現役の自衛隊員が原告となっているのは何件でしょうか。

○防衛省 大臣官房長(芹澤清君) お答え申し上げます。
自衛隊員又は元自衛隊員がハラスメント被害に遭ったと主張している訴訟につきましては、令和五年五月末現在でございますが、二十件が係属していることを確認しております。また、現役の自衛隊員が原告となっている訴訟につきましては、このうち三件が係属していると確認しております。

○山添拓君 裁判に行き着くまでというのは氷山の一角ですが、それでも一般の組織では考え難い件数だと思います。
そのうちの一つが、四月十一日の当委員会で取り上げた航空自衛隊那覇基地の事件です。セクハラ被害を訴えたにもかかわらず適切に対応されなかったとして、現役自衛官が国賠訴訟を提起しています。今日はその裁判の期日で、ちょうど今、報告集会が行われている頃かと思います。
被害者は法務部門に相談したのですが、個人のセクハラには対応していないと言われたそうです。ところが、被害者が加害者を相手に、加害者個人を相手にですね、裁判を起こしたところ、その加害者側は全面的に支援していたというんです。
前回質疑の後、防衛省から出された資料が今朝の理事会に提出をされました。法務部門が隊員の個別の法律相談に応じる法的根拠は、規則にある法令の調査及び研究に関することだと伺いました。訴訟に関する具体的な相談まで、この法務部門は乗るんですか。

○政府参考人(芹澤清君) お答えいたします。
今委員の方から御指摘ございましたように、防衛省・自衛隊におきましては、防衛省組織令、それから各種の規則に基づきまして、陸海空各幕僚監部、それから陸海空自衛隊の部隊の司令部に法務部門が置かれております。そこにおきまして、法務部門で法律相談の対応をしてございます。
他方、一般論として申し上げますと、自衛隊の法務官が実施する法律相談は、法律相談に関する一般的な内容でございまして、隊員個別の訴訟につきましては、具体的な相談につきましては専門家である弁護士の方に依頼するように助言しております。

○山添拓君 ちなみに、この法務部門の法務官は誰の指示で動くんですか。

○政府参考人(芹澤清君) 各司令部には法務官が置かれておりますけれども、各部隊の司令部の事務全体につきましては、その司令官が掌理するとなってございます。

○山添拓君 つまり、相談者よりも組織の都合を優先する立場にある方だということです。
資料を御覧ください。相談しても対応してもらえなかった被害者は、弁護士に依頼して問題の対応を求める内容証明郵便を送りました。すると、那覇基地では全隊員を対象とするセクハラ教育が行われました。その資料を今日はお配りしています。これも、前回の質疑後、防衛省から出されたものです。
例えば、二枚目を御覧ください。左側のページ、黒塗りがありますけれども、加害者はAと匿名です。被害者は実名が書かれていると伺いました。これは事実でしょうか。なぜそうしたんでしょうか。

○防衛省 人事教育局長(町田一仁君) お答えいたします。
まず、教育に関する資料の作成経緯でございますが、今般御提出させていただきました教育資料におきましては、弁護人、代理士、代理人弁護士を通じて、セクハラ被害隊員から、本セクハラ行為とその後の経緯について那覇基地全隊員への書面による説明を求められたことから、部隊が那覇基地全員に、全隊員に対する教育資料として作成したものでございます。

○山添拓君 いや、その資料で、なぜ加害者は匿名で、被害者は実名なのかと伺ったんです。

○政府参考人(町田一仁君) お答えいたします。
御指摘の資料には被害隊員の名字を記載しておりますが、これは、当該被害隊員から弁護人、代理人弁護士を通じて、勤務内外を問わず、被害隊員に対して仕事以外の私的な話をしないこと、被害隊員が当面の間、職場の宴会に参加しないことを航空自衛隊那覇基地全隊員に周知し、被害隊員の心情に配慮した職場環境を形成することなどを求められたことから、被害隊員を特定するため、名字を記載しなければならなかったものであります。

○山添拓君 こういう資料で説明することを本人には確認取られたんですか。

○政府参考人(町田一仁君) 恐縮ですが、これ以上のことにつきましては、係属中の裁判であることから、今後の裁判に影響を与えないことから、お答えできないことを御理解ください。

○山添拓君 これは後から知られて、驚愕されたそうですよ。事前に相談もなければ調整もされていない。
この説明資料はセクハラがあったことを前提に作られていますが、ところが、加害者を匿名にし、被害者を実名にする、これは二次加害に等しいですね。セクハラ教育をその後やり直したかどうか、これは御承知ですか。

○政府参考人(町田一仁君) そのセクハラ教育、どのように行われたかということにつきましても、係属中の裁判に関することでございますので、今後の裁判に影響を与えかねないことから、お答えできないことを御理解ください。

○山添拓君 では、こういう説明会の仕方、ほかの基地でもやっているんですか。

○政府参考人(町田一仁君) 説明会を行っているか否かにつきまして、今後の裁判に係ることでございますので、お答えできないことを御理解ください。

○山添拓君 ほかの基地のことですからね。
これ、最後のページに内容証明郵便について解説があるんですよ。法的な効力がないので法律家の間ではただのお手紙と言われることが多いなどと書いているんですね。これは完全に被害者を愚弄するような説明会資料だと思います。
まだあるんですよ。関係者から提供された組織内の調査資料をこの被害者が裁判所に証拠として提出しました。すると、それが情報漏えいに当たるとして警務隊に告発されて取調べを受けることになったそうです。検察はこの事件を不起訴にしたそうですが、それから三年もたった昨年の七月になって訓戒処分を受けました。
裁判所に資料を出したのは二〇一六年です。処分は昨年ですから、資料を出してから五年もたって訓戒がされたわけですね。これは被害者がセクハラ被害を訴え続けたことへの報復だと受け止められても仕方ないんじゃないでしょうか。

○政府参考人(町田一仁君) お答えいたします。
御指摘いただきました訓戒処分でございますが、まず、この訓戒とは、訓戒等に関する訓令に基づく措置でございます。隊員の規律違反があった場合に、当該違反が軽微であって懲戒処分を行うまでに至らないと認めるとき、当該職員の懲戒権者及びその指示又は承認を受けた者は、当該職員に対して訓戒を実施することができるとされており、その手続に従って実施したものと承知しております。

○山添拓君 ですから、軽微なものだったわけでしょう、懲戒処分に至らないような。にもかかわらず、五年もたってわざわざ訓戒処分を行ったと。これは、単に職場における改善更生を図る目的というよりは、自衛隊として、被害者に対して被害を訴え続けることに対しての報復だと受け取られても仕方ないと思うんですよ。
裁判を受ける権利ですから、これは主張、立証を十分に行えてこそ保障されるものだと思うんです。その際、この被害者が被害を訴えて、ところが、こんな説明資料で説明会を行われたものですから、周りの隊員たちの中にも違和感を覚える方がおられたそうなんですね。そこでいろんな自衛隊内で行われている調査、そこでの資料について情報提供も受けることになったと。そうやって入手した、つまり、被害者の側ですから資料は圧倒的に少ないわけですよね、その中から書証として裁判所に資料を出したらそれが犯罪扱いされたというんですよ。
これはやはり処分は撤回すべきじゃないですか。

○政府参考人(町田一仁君) 繰り返しで恐縮でございますけれども、その行為を、当該職員の懲戒権者及びその指示又は承認を受けた者が調査を行い、軽微であって懲戒処分を至らないというふうに認めたときに訓戒を実施することができるとされていることを踏まえ実施したものと承知しております。

○山添拓君 撤回を検討されないですか、こういうやり方について。

○政府参考人(町田一仁君) 今の訓戒につきましては、所要の手続を踏んで実施されたものと承知しております。

○山添拓君 そういうことをいつまで繰り返されるのかということですよ。
海上自衛隊で、部下からパワハラを相談された自衛官が、懲戒処分の申立書を海上幕僚監部などに送ったところ、この件について、警務隊が虚偽告訴だと、つまり、パワハラの被害を、懲戒処分をするべきだと訴えたこと自体が虚偽告訴だという容疑で逮捕し、自宅を家宅捜索したという事件まで起きています。この方は既に釈放されて、一度も取調べされることなく不起訴となったようですが、この事件も、逮捕それ自体が不当だとして国家賠償請求の裁判になっています。
自衛隊は、ハラスメント被害の当事者やその協力者を犯罪者として扱うんですか。こうしたケースで警務隊が立件し、送検した件数をお示しください。なぜそんな対応を行うんですか。

○政府参考人(町田一仁君) ただいまお尋ねいただきました加害者の懲戒処分を申し立てた者、そしてハラスメントの当事者ないし申告者を警務隊が立件し、送検した件数につきまして調べました。
現時点で確認した結果、お尋ねの警務隊が立件して送検した件数は、過去五年間、これを調べることができましたが、二件が該当しているところでございます。

○山添拓君 その二件を今御紹介したということになるようですが、これはやはりやること逆ですよ。被害者の被害の申告あるいはその協力者に対して誠実に対応するべきだと思うんですよ。
大臣に最後に伺いたいと思いますが、自衛隊におけるハラスメント後を絶ちません。それだけでなく、お聞きいただいたように、組織的な隠蔽が常態化していると思います。なぜだとお考えですか。

○防衛大臣(浜田靖一君) 相次いで明らかになるハラスメント事案については、従来行ってきた防衛省のハラスメント防止対策の効果が組織全体で行き届いていなかったことの表れであり、極めて深刻で、誠に遺憾であります。
ハラスメントは、人の組織である自衛隊において、自衛隊員相互の信頼関係を失墜させ、組織の根幹を揺るがす、決してあってはならないものであります。そうしたことを各自衛隊員が改めて認識し、ハラスメントを一切許容しない組織環境を構築することが必要であると考えます。
そのため、現在、ハラスメント防止に係る有識者会議において新たなハラスメント防止対策について検討を行っているところでありますが、これを確立の上で、全ての隊員に徹底させるとともに、さらに時代に即した対策が講じられるよう、その見直しを継続的に行ってまいります。
大変、この件に関しては我々とすれば深刻に受け止めております。

○山添拓君 あってはならないとおっしゃるんですけれども、既にこれだけ繰り返されているわけですね。そして、裁判でもまだ争い続けておられます。規模ありきで軍事費を倍増しながら、ハラスメントが横行する実態は変わっていません。これでは自衛官の中途退職は決して減らないと思います。
安心して相談できるような第三者機関の設置など抜本的な対策を取るべきですし、これはやはり自衛隊の組織としての問題だということを重ねて指摘して、質問を終わります。

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