山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2023年・第212臨時国会

物価高騰に向き合わず 23年度補正予算案に対する反対討論

○山添拓君 日本共産党を代表し、二〇二三年度補正予算案に反対の討論を行います。
パレスチナ・ガザ地区での戦闘中断が二日間延長されました。ところが、ガザに入ったイスラエル・ネタニヤフ首相は、勝利するまで戦いを続ける、誰も我々を止められないなどと述べ、戦闘の再開を宣言しています。これ以上の殺りくを許してはなりません。戦闘中断から即時停戦へ、日本政府としても強く働きかけるべきです。
総理は、国際人道法違反の法的評価は難しいと繰り返します。しかし、いかなる理由があっても病院への攻撃は許されません。関係国との意思疎通を理由に即時停戦を求めることも拒みました。アメリカの顔色をうかがう余り法の支配を投げ捨てるなど、断じて容認できません。
本補正予算案に反対する最大の理由は、物価高騰にあえぐ暮らしの実情に全く向き合っていないからにほかなりません。
経済対策の目玉とされる減税、給付を評価しないと答える人が七割近くに上ります。一回限り、半年先の減税は、その後に大軍拡への増税が待ち構え、加えて税収増の還元という当初の説明が事実に反することまで明らかとなり、政権の人気取りだと多くの国民に見透かされています。税財政を弄ぶのはやめるべきです。
十月の消費者物価指数は二・九%上昇し、食料品では七%以上のプラスが十一か月続いています。減税するなら、消費税減税を今こそ決断すべきです。買物のたびに減税効果を実感でき、消費に結び付き、GDP押し上げ効果も見込まれます。今や世論調査で六割近い国民が求めています。総理は、この声を聞き、消費税五%への緊急減税、インボイス中止を決断すべきです。
物価高騰を上回る賃上げを実現すると言いながら、その方法に挙げられるのは効果が限定的な賃上げ減税と政労使会議でのお願いにすぎず、従来の延長です。実質賃金が十八か月連続でマイナスとなりました。賃金はむしろ下がってきたという現実を直視すべきです。
イギリスでは、来年四月、最低賃金を九・八%引き上げ、時給十一・四四ポンド、二千百三十二円に引き上げます。一方、直近二年半の日本の最低賃金の伸び率は、名目、実質ともOECD平均値の三分の一にとどまります。政治の責任で賃金を底上げするには、日本でも最低賃金の大幅な引上げが必要です。
日本共産党は、異常に膨れ上がった大企業の内部留保に時限的に課税し、中小企業を支援し、最低賃金時給千五百円を目指した引上げを提案してきました。自民党の中からも、内部留保課税で賃上げ支援をという案が出ています。総理は、二重課税に当たるという指摘があると及び腰ですが、法的根拠もない言い訳はやめ、本腰を入れた議論を進めるよう求めます。
本補正予算案による介護や障害福祉の処遇改善は僅か月六千円、一桁足りません。
政府は、社会保障費の歳出改革と称して、診療報酬や介護報酬の削減を検討しているといいます。全体の一四%、九百万人に上る医療・介護従事者の賃下げは、経済全体に波及し、医療と介護を崩壊させかねません。やるべきことが全く逆です。
審議を通じて、公務職場の非正規労働者の処遇改善に後ろ向きな政府の姿勢があらわになりました。田村智子議員が全省庁から資料を取り寄せたところ、いわゆる正規職員は男性二十万人、女性五万九千人、非正規は男性約三万人に対して女性は約六万人と、非正規で女性が多数を占め、しかも女性は男性より低賃金でした。河野大臣は、法に基づき適切に運用されていると開き直りましたが、これは典型的な間接差別です。問題意識を持たない姿勢自体が大問題です。
非正規職員が、ハローワークで就労相談や求人開拓など専門性の高い仕事を担っています。保育士や消費者生活相談員、図書館司書など、自治体で働く多くの専門職が非正規です。公務の職場から大幅な賃上げを進め、間接差別をなくすべきです。
三十年来のコストカット型経済を変革するというなら、非正規化による人件費の削減、これを支えてきた政治の責任を率直に認め、待遇格差をなくし、恒常的な仕事は正規を当たり前にする、低賃金の構造を政治の責任で改めるべきです。
十三兆円を超える本補正予算案のうち、物価高から国民生活を守るという項目は二・七兆円、二割程度にすぎず、物価対策と無縁で民意に反する税金の無駄遣いが多数盛り込まれています。
その顕著な例が大阪・関西万博の関連経費です。世論調査で、会場建設費二倍化に納得できないが七割近くに上る中、日本館建設費など更に八百三十億円を超える国庫負担があることが改めて明らかになりました。湯水のように税金をつぎ込み、国民の身を削る万博は中止を決断すべきです。
保険証を廃止し、マイナ保険証を推進するため、利用率が上がった医療機関の支援に八百八十七億円も計上しています。総理は本会議で、メリットを丁寧にお伝えしていくと述べましたが、十月の利用率は四・五%と六か月連続で低下しました。デメリットや不安の方が大きいからこそ使われていません。これ以上税金を費やすべきではありません。
半導体企業など特定企業への巨額の補助金を可能とする多額の基金が積み上げられています。四千七百六十億円の補助が決定している台湾の半導体企業TSMCに追加の補助を行おうとしています。三千三百億円の支援決定を受けている先端半導体企業ラピダスは、更に二兆円の支援を国に要求しています。稼ぐ力といい、歯止めなき国費投入で特定企業を支援するのは、相変わらずの大企業優遇政治です。
過去最大、八千百三十億円に上る軍事費まで潜り込ませているのは異常と言うほかありません。スタンドオフミサイルを始め、憲法違反の敵基地攻撃能力保有に前のめりの岸田政権が、これら兵器の前倒し配備を狙うなど言語道断です。
オスプレイ配備を予定する佐賀空港、米空母艦載機の着陸訓練を行おうとする馬毛島、さらには沖縄の民意も地方自治も踏みにじって進める辺野古新基地など、基地増強の加速は許されません。
その上、防衛力強化資金一兆円の積み増しまで計上されています。
国際社会の現実は、武力では決して平和は築けないことを示しています。絶対に戦争にさせない平和外交で、対話と協力の地域を築くことこそ政治の役割です。戦争準備の大軍拡に断固反対します。
自民党主要五派閥の政治資金パーティーをめぐる疑惑は、収支報告書の訂正で済まされる問題ではありません。
不記載が発覚したのはパーティー券を購入する側が収支報告義務を負う政治団体の場合に限られ、企業が購入する分で同様の問題がないのかは明らかにされていません。氷山の一角である可能性が大いにあり得ます。
収入を実際より少なく記載し、パーティー券を売った議員が自由に使えるようにする、裏金ではないかという指摘が自民党関係者からも相次いでいます。総理は、自民党全体で裏金がないとは断言していません。徹底的に調査すべきです。
昨年、総理は、一回の収入が一千万円を超える大規模な政治資金パーティーを六回も開催し、その利益は計一億三千百万円、利益率八九%という荒稼ぎぶりです。総理自身も説明できなかったように、ここには対価性などありません。
そもそも、企業、団体がパーティー券を購入するのはなぜか。政治的な見返りを期待するからです。政治資金パーティーを含め、政治をゆがめる企業・団体献金は全面的に禁止すべきです。
政治と金の闇にまみれ、国民の声に耳を貸さない政治は変えるしかありません。日本共産党は、アメリカ言いなり、財界、大企業中心の自民党政治を大本から変えるために全力を挙げる決意を述べて、討論といたします。(拍手)

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