山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2024年・第213通常国会

「殺傷兵器輸出 殊更強調しなかった」 2014年防衛省装備移転三原則の議論について高見澤公述人

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
御意見拝聴いたしました。
まず、高見澤公述人に伺いたいと思います。殺傷兵器の輸出に関わってです。
従来、我が国の立場は武器輸出禁止であり、一九八一年には衆参本会議の全会一致の国会決議でも確認されています。その後、例外がつくられ、包括化されるなどしましたが、国際紛争の助長を回避するというその理念は維持されておりました。
これを大転換したのが、安倍政権下、二〇一四年四月の防衛装備移転三原則であり、ここでは国際紛争を助長しないという言わば革新的な理念も消してしまいました。我が党はこれを厳しく批判してきました。
ただし、当時の三原則とその運用指針を読みますと、殺傷能力のある武器の輸出は国際共同開発、生産の場合に限り、それ以外の輸出は救難、輸送、警戒、監視及び掃海、いわゆる五類型に制限し、殺傷武器の輸出はしないことを原則にしていたと言えるのではないかと思います。
伺いたいのですが、少なくとも二〇一四年のこの当時、国会答弁など政府の発信では、五類型に殺傷兵器の輸出が含まれるとはしていなかったと思うんですが、いかがでしょうか。

○公述人(高見澤將林君) まず、冒頭申し上げたいのは、日本政府というか日本は武器を輸出してきたということは事実でありますので、それは殺傷性も含めて、殺傷性のあるものもずっと輸出していたわけですね。それを転換したのが政府の見解なわけですので、まず大前提として、今まで一度も日本政府が、日本が殺傷性のある武器を輸出していなかったかということを前提としたかのような御質問については、それは事実と違うというふうに申し上げたいと思います。
それから、第二点目でございますけれども、二〇一四年のいわゆる防衛装備移転三原則の考え方というのは、二〇一三年十二月にできました国家安全保障戦略の考えに従って整理をしたものであると。つまり、当時の国家安全保障戦略の目標の達成に必要な範囲で、いわゆる武器輸出三原則等を見直して、防衛装備移転三原則だったというものだと思います。
そのときの大きな考え方は、基本的には、まずその閣議決定した方針と、それから国家安全保障会議で決定する運用指針がございまして、そこで運用指針というのはある程度機動的に見直すということが前提になっていたように思います。そして、その五類型というのはその運用指針に含まれているということではないかと思います。

○山添拓君 五類型に殺傷兵器、殺傷能力のある兵器が当然に含まれるかのような、そういう発信は当時は政府としてはしてはいなかったんではないかと思うんですが、この点は重ねていかがでしょうか。

○公述人(高見澤將林君) 当時は自公の与党協議でも非常に慎重に議論したので、いわゆる殺傷性ということを含むということを殊更強調するような議論というのは、それはございませんでしたし、かなり具体的にどういったところまで認めるのかということについては慎重な議論が行われていたということは事実だと思います。

○山添拓君 ありがとうございます。
実は昨年四月二十一日の衆議院安保委員会では、防衛装備庁の土本長官が、直接人を殺傷することを目的とする防衛装備の移転がこれら五類型に該当することは基本的には想定されていないと、こう答弁していますので、したがって、二〇一四年の当時だけでなく、少なくとも昨年四月頃まで政府も殺傷兵器の輸出は原則としてできないと、こういう前提で臨んできたのだろうと思います。そのことを確認できたかと思います。
その上で、もう一点、高見澤公述人に伺いたいと思います。
以前、ジュネーブ軍縮会議の大使を務めておられました。そこで伺いたいのですが、今のイスラエルのガザ攻撃では、欧米、特に米国によるイスラエルへの軍事支援が事態を一層深刻にしているという側面があると思います。このときに日本の姿勢が改めて問われると思うんですね。
日本は中東を植民地にしたことがなく、宗教的にも中立であり、欧米諸国やロシアや中国と違って武器輸出もしてこなかったと。中東で戦争が起きても、軍需産業がもうかるという構図にないのも信頼につながる、こうある自民党の議員がかつて述べていたようなんですけれども、こうした日本の立場に基づく中東和平への関わり方、その意義について公述人の御意見を伺いたいと思います。

○公述人(高見澤將林君) 御質問ありがとうございます。
私自身はその中東の専門家ではないので、今の議員の御質問にお答えするような識見は持ち合わせておりませんけれども、いずれにいたしましても、私が思ったのは、ハマスが十月七日にイスラエルの国内的な状況に付け込んであれだけの大規模な攻撃に出たときに、それの性格なり対応についての評価を政府全体として総合的に行っていただくことが非常に大事だったのではないかと。それを踏まえて、いろんな外交的な対応なりを政府全体としてできたのではないかなというふうに思っております。

○山添拓君 外交的な対応としては、現在、国連総会では即時停戦を求めるという決議が賛成多数となり、またICJはジェノサイドを防ぐための措置を講ずるように暫定措置命令を下すと、こういう状況があるかと思います。御意見も参考にしたいと思います。
高田公述人に伺いたいと思います。
武力攻撃などの事態認定を早めるべきだと、それは平時は火薬取締法や道交法や土地収用法、いろんな申請をして承認を受けなければならないと。公述人のお言葉では、言わばがんじがらめだということでした。そして、それに加えて、事態認定以前においても自衛隊に関して様々な法規の適用除外を拡大するよう求めると、こういう御意見であったかと思います。
私は、これは率直に言って驚いたんですね。我が国が平和憲法を定めて自衛隊についてシビリアンコントロールを厳格にしているのは、戦前の軍国主義による侵略戦争と植民地支配が国内外におびただしい犠牲をもたらした、その反省に立つものです。憲法の平和主義とは、我が国が攻められない、そして国民の命を守るというだけの意味ではないかと思うんですね。したがって、自衛隊の活動については、有事はもとよりですが、平時においても軍事的合理性が優先されるということではなく、制約を受けるのが大前提だと思うんです。
公述人のお考えは、これは自衛隊の幹部やOBの皆さんの間でかなり共有されている考えなのでしょうか。

○公述人(高田克樹君) お答えします。
例えば車両制限令というのがありまして、車幅とか高さ、重さで一定の制限を超える車両については事前に申請をしてくださいねというところがあるんですが、例えばこれを、自衛隊の車両は平素からこれ適用除外して、自分たちで勝手に通れると、もっと言えば、赤信号でも自衛隊の車両は通れるという、こういうことを申し上げているわけではないわけであります。
私が申し上げているのは、三十六個、私が数えただけで三十六個あるんですけど、その法律の中で既に平素から適用除外を受けている法律は十二個あるんです。例えば、自衛官が鉄砲を持つ銃刀法の話だとか、危険物を取り扱うとか、通信事業者としての、まあ通信をするとかですね、そういうのは適用除外を受けて、自衛隊員であれば、その職にある者はやっていいよということになっているんですね。そういった部分をもうちょっと広げるようなところはないでしょうかという御提案でありまして、何も赤信号で渡らせろとかそういうことを言っているわけではありません。
以上です。

○山添拓君 それはもちろんだと思います。ですが、こうして適用除外を求める、その範囲を拡大することが事態認定前も含めて広範に必要だということは、それはやはり自衛隊の性質からして一定の制約を受けるのは当然だと思うんですね。そのことをお伝えしようと思いました。
もう一点、高田公述人に伺いたいと思います。
現在審議している来年度予算案には、陸海空自衛隊を一元的に指揮する常設の統合司令部として、統合作戦司令部の創設が盛り込まれています。その目的は、米インド太平洋軍司令部と調整する機能だと説明されております。
調整とは何を意味するのかという点も大変気になりますが、この統合司令部の創設は米国側にとってはどのような意味があるとお考えでしょうか。

○公述人(高田克樹君) 一般的に、統合幕僚監部というのは、大臣を制服の代表者の統合幕僚長が運用に関して一元的にお支えする組織ということで、性質的には大臣の補佐機能が主であります。
一方で、例えば三・一一のときなんかは折木統幕長でしたが、大臣が出された命令を一部指揮するということで、部隊を、まあ指揮しているわけじゃないんですけど、大臣の指揮機能を補佐するという形でなっておりました。したがって、その部隊指揮の部分はちょっとおろそかになって、大臣補佐、それから官邸報告というような部分が、統合幕僚長の仕事でいうと、当時は六対四、七対三だったなというようなことを折木統幕長も回顧録で書かれております。
そういった意味から、部隊を専門的に指揮する部署という観点で統合作戦司令部をつくるという趣旨だと思いますし、カウンターパートの関係でいいますと、統合幕僚長のカウンターパートはワシントンの統幕議長なんですね。本来、本来はですね。で、PACOM、インドPACOMというのは作戦司令部ですから、いわゆる国防大臣、国防長官を補佐する機能ではないわけです。そういった意味でちょっと制度上のねじれがあったので、それを統合作戦司令部を国内につくればインドPACOMとの正式なカウンターパートになれるんじゃないですかという、そういう趣旨だろうというふうに思います。

○山添拓君 日米2プラス2で米国側は、常設の統合司令部の設置、日本の決定を歓迎するとしておりまして、より効果的な指揮統制関係を検討するとも表明しておりましたので、今後の議論の参考に御意見もしていきたいと思います。
ありがとうございました。

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