山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2024年・第213通常国会

次期戦闘機輸出許されぬ ”歯止め”装い国会無視

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
殺傷兵器の輸出解禁について伺います。
政府は、昨年十二月二十二日、防衛装備移転三原則と運用指針を改定し、武器輸出を大幅に緩和しました。(資料提示)
その一つが、ライセンス生産品の輸出です。外国の軍事企業から許可を得て、日本で製造し、ライセンス元の国へ輸出できることとし、第一弾として地対空ミサイル、パトリオットの米国への輸出を早々に決めました。殺傷能力を持つ兵器の完成品輸出を認めるのは初めてです。国民的な議論なく、なし崩しに進めたことに断固抗議をいたします。
運用指針では、ライセンス元から更に第三国への輸出については、現に戦闘が行われていると判断する国は除外するとされ、日本製のパトリオットが第三国に渡ることはない、これを米国にも確認したとされています。
総理に伺います。
米国はウクライナにパトリオットの追加支援を決めています。日本からの輸入によって在庫を補い、米国製のパトリオットをウクライナに提供すれば、これは結局、米国の武器支援を日本が支えたことになります。迂回輸出ではありませんか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 今般、日本政府としては、この米国からの要請に応じ、米軍のペトリオットミサイルの在庫を補完し、米国政府以外に更に提供されないこと、これを米国政府との間で確認をした上で、自衛隊が保有するペトリオットミサイルを米国に移転することを決定いたしました。その上で、日米間では、今般の移転は我が国の安全保障及びインド太平洋地域の平和と安定に寄与するものであること、これは日米間で確認をしております。御指摘は当たらないと考えています。

○山添拓君 いや、当たると思いますよ。
米国の在庫を補完すると今総理もおっしゃいました。米国の在庫が不足しているのはなぜかといえば、ウクライナへの支援にも充てているからです。その米国は、ヨーロッパや中東、少なくとも十六か国にパトリオットを輸出しています。何とイスラエルまで含まれます。日本製のパトリオットが、中東におけるイスラエルの優位を保証することにもなってしまう。やめるべきだと思います。
次に、次期戦闘機について伺います。
先日、当委員会で公明党の西田議員が、二〇二二年末に政府・与党が共同開発を決めた時点では日本の完成品は第三国に輸出しない前提になっていたと述べ、総理も認めました。今日も繰り返しそのことが確認されておりました。従来の三原則や運用指針に照らせば当然だと思います。
そこで、防衛大臣に伺います。
政府は、英国やイタリアと国際共同開発の協議に入るに当たって、日本のルールでは日本から第三国への輸出はできない、それが前提条件なのだと伝えていなかったのですか。

○防衛大臣(木原稔君) 我が国の輸出管理制度でございますが、次期戦闘機に係る協力の在り方について協議をする中で、輸出管理制度については英伊に対してもちろん説明をしております。
その中で、今般の日英に係る、日英による、日英伊による共同開発に合意したその二〇二二年十二月の時点、その時点において、我が国からパートナー国以外の第三国に対してその完成品を直接移転することについては、運用指針における国際共同開発・生産に関する海外移転として認められるものではない点について説明はしております。

○山添拓君 説明していたにもかかわらず、英国やイタリアから言われたからといって、簡単に前提を覆してしまうんですか。
前提だとおっしゃっていたんですよ。前提が覆ったんだったら立ち止まるのが当然じゃないですか。だから、結論ありきで輸出に突き進んでいると批判されているわけです。
自民党と公明党が十五日にも輸出容認で合意かと報じられています。先ほど、次期戦闘機に限ってと言われておりましたが、次期戦闘機は紛れもない殺傷兵器であり、その後の先例になることは明らかだと思います。
歯止めとして言われていたのは、現に戦闘が行われていると判断される国は輸出先から除くという点です。総理も先ほど答弁されました。しかし、輸出する時点で戦闘中でさえなければ歯止めになるんでしょうか。
イギリス、イタリア、ドイツ、スペインがかつて共同開発した戦闘機ユーロファイターは、サウジアラビアに輸出され、二〇一五年、イエメンへの空爆で使われ、一般市民に大量の犠牲をもたらしました。共同開発していく次期戦闘機はこのユーロファイターの後継機です。
私は、昨年十一月の予算委員会で総理に尋ねましたが、そのときは詳細を御承知ないという答弁でした。ですから、改めて伺います。
次期戦闘機が、英国からであれイタリアからであれ、また日本からであれ、輸出した先のその国でユーロファイターのように国際法違反の攻撃に使われかねないと思います。歯止めなど掛けられないんじゃありませんか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) まず、現在、次期戦闘機の将来的な第三国への移転について何ら決定したものはありませんが、その上で、他国への侵略など国連憲章に反するような行為に使用されることがないよう、将来、次期戦闘機を実際に移転する場合には、移転先を国連憲章の目的と原則に適合した使用や第三国移転の事前同意を義務付ける国際約束の締結国に限定する、このように考えております。
したがって、次期戦闘機が輸出先の第三国において国連憲章に反するような国際法違反の攻撃に使用されること、されるとの懸念は当たらないと考えています。

○山添拓君 ユーロファイターだってそうだと思いますよ。ユーロファイターについても、輸出された当時は国際法違反の攻撃に使われるなど想定されていなかったんじゃないですか。にもかかわらず、使われた実績があるわけです。
そのことをどう認識されているかと伺っています。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 先ほど、第三国への移転について答弁をいたしましたが、その上で、イギリス、イタリアとの間では、それぞれの国との防衛装備移転に関する協定において、国連憲章の目的及び原則に適合した使用を義務付けています。イギリス、イタリアとの間においてもそういった取決めを行っております。
両国は信頼できるパートナーであり、今般の次期戦闘機の国際共同開発は、今後何世代にもわたり我が国と両国との幅広い協力の礎となり、世界の安全、安定、そして繁栄の礎になると考えております。

○山添拓君 いや、全くお答えいただいていない。
私が伺っているのは、過去既にユーロファイターという、サウジアラビアで輸出された、そしてイエメンへの空爆で使われたという事実があるわけです。そのことについての認識を去年に続いて聞いているのですが、いまだにお答えにならない。このどこが丁寧な説明なんでしょうか。
それで、いや、防衛大臣、お手を挙げておられるので、では伺いますけれども、今総理から歯止めの内容として言われた防衛装備品・技術移転協定、こういう協定を結んでいる国なら大丈夫なのだというお話でした。先ほど十五か国だとおっしゃいました。それらは国会の承認を受けたものですか。

○国務大臣(木原稔君) その歯止めですけれども、日本から直接ではなくて、英伊からの第三国移転については、その我が国の防衛装備移転三原則及び運用指針並びに我が国と英伊それぞれとの防衛装備移転に関する協定に従って、我が国の事前同意が必要となります。(発言する者あり)今、おっしゃった。それで、運用指針上、第三国移転に係る事前同意に当たっては、移転先が国際的な平和及び安全に与えている影響等を厳格に審査することとしております。
先ほどの協定、十五か国、私申し上げましたけれども、直接的なお答えからすると、これは国会で、それを、国ごとの審査をしたということではございません。(発言する者あり)ない、ございません。国会で承認したということでは、国会で、こういう場で承認したことではございません。

○山添拓君 国会に諮られていない協定ということなんですよ。ですから、先ほど、西田議員から、国民に余り知られていないという話があった。それは当然ですよ、国会に諮っていないんですから。ですから、今後も国会の関与なく協定の締結国が増えていくということも十分あり得るかと思います。
歯止めとして、輸出全体についての容認と、個々の輸出の判断、二重の閣議決定で厳格に行うという話もありました。しかし、政府と与党の協議のみで閣議決定で発表するというのでは、幾ら厳格だと言っても、国会無視じゃありませんか。総理、いかがですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 装備品協定、国会の承認を受けていないのではないかということでありますが、これは、これは、国会の承認を受けた外為法の範囲内で政府として協定を結ぶものであります。ですから、そういった意味で国会の認めた法律の中での対応であるということであります。
こうした枠組みの中で、相手国に対してしっかりと歯止めを掛ける、こういった取組は重要であると考えます。

○山添拓君 聞いたことにお答えいただきたいんですよ。二重の閣議決定は国会無視ではないかと伺っています。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 二重の閣議決定、閣議決定を行うことによって、国会においてこの御議論をいただくことになります。国会無視であるとは考えておりません。

○山添拓君 二〇一四年の武器輸出三原則の撤廃、集団的自衛権の行使容認、安保三文書、みんな閣議決定ですよ。二重の閣議決定と言いますが、勝手な決定を二重に行っても、これは透明にはなりません。政府・与党が国会と国民を無視して進めてきたこと自体が大問題です。
国会の意思は示されています。一九八一年の衆参両院の本会議、全会一致の決議です。これと一体を成すのは、昭和五十一年、一九七六年の政府統一見解ですが、三木内閣が表明した武器輸出三原則であり、武器輸出を原則として全面禁止するものです。そして、この国会決議は撤回されていないんですね。
総理に伺います。政府と与党の協議で、いや、与党がよしとさえすれば武器輸出をどんどん行ってよいというのでは、全会一致の国会決議に明確に反するのではありませんか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 御指摘の決議ですが、これ、共産国や紛争当事国等の対象地域への武器輸出を認めないとする当時の武器輸出三原則等を前提に、政府は武器輸出について厳正かつ慎重な態度をもって対処すべき、このことを内容とするものであります。これ、武器輸出全般を禁止している決議ではないと理解をしています。
その上で、時代にそぐわなくなった武器輸出三原則に代えて、二〇一四年に策定した防衛装備移転三原則においては、国連憲章を遵守するとの平和国家としての基本理念と歩みを引き続き堅持し、新たな安全保障環境に適合するよう、それまでに積み重ねられた例外化の経緯、これを包括的に整理し、明確な原則を定めています。そして、防衛装備の移転に係る具体的な案件、審査の視点、基準や手続を明確化し、内外に透明性を持った形で明らかにしたものであります。
今回の次期戦闘機の第三国への移転についても、先ほど委員も御指摘になられた厳格なプロセスを行う、平和国家としての歩み、変えるものではないと認識をしております。

○山添拓君 厳格なプロセスはお手盛りだと思いますよ。国会が決議した武器輸出禁止を国会審議なく骨抜きにしようとしているわけです。歯止めを装って武器輸出大国へと突き進むことは許されないと指摘したいと思います。
先ほど西田議員からは、限られたメンバーでの協議では荷が重いという発言もありました。私は正直驚きました。限られた皆さんで荷が重いんだったら、国会全体で議論するべきだと思います。
この間、与党協議で出された資料、その議事録、委員会に提出を求めたいと思います。

○委員長(櫻井充君) 後刻理事会で協議させていただきます。

○山添拓君 総理は、日本が要求する性能を実現するためには輸出による価格低減努力で貢献する必要があると言い、だから日本も輸出し、英国やイタリアと同じように貢献することが我が国の国益だと今日も述べました。
価格低減、これはコストダウンというわけですが、要するに、それは輸出によって販路を拡大し、たくさん売ることによって利益率を上げるということです。もうけを大きくするために海外へ武器を売りさばくという発想は、死の商人国家と言われてもその批判を免れないのではありませんか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 共同開発のプロジェクトに貢献することによって、この共同開発で目指す戦闘機の性能について、我が国の国民の命や暮らしを守るために必要なものとする、こういったことで国益につながるということを申し上げております。
この共同開発というものが装備品の開発において国際的に常識になっている、こういった状況の中で、我が国として国民の命を守るために必要なこの技術、能力、これを得るためにこのプロジェクトに貢献することは重要だということを申し上げております。

○山添拓君 伺ったことには全くお答えいただいていないと思うんですよ。価格低減、利益率を上げる、軍需産業がもうけを上げることによって貢献し得るんだと、そういう説明をされてきていると思うんですね。
国民の命と暮らしを守るためと言います。しかし、政府は、自衛隊は必要最小限度の実力としてきたわけです。ですから、その自衛隊のためだといって軍需産業がもうけを上げなければならない理屈はないと思います。
二〇二二年四月、経団連が提言を発表しています。安保三文書の改定に向けて、武器輸出を位置付け、戦略を持ち、官民連携で進めようと記しています。それだけではないんですね。企業が契約上のリスクを負うのは難しいので、政府が発注を受けて、軍需産業が納品し、政府の責任で輸出する仕組み、日本版FMSの仕組みも創設を検討せよと言っています。つまり、軍需産業が自らはリスクは負わず、しかしもうけは確実に上げる、そういう仕組みを求めています。
当時の岸防衛大臣にこの提言を建議したのが三菱重工の泉澤清次社長です。政府の有識者会議で更なる大軍拡をあおるなど、もってのほかだと思います。
総理に伺いたいんですが、総理が時々口にされる平和国家とは何ですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) まず、防衛産業をもうけさせるためにこういった取組を行うという指摘は当たらないと思います。我が国の国民の命を守るために必要な能力、性能を得るためにこういった取組を行っている、こういったことであります。
そして、平和国家とは何かということでありますが、我が国は戦後一貫して専守防衛に徹し、そして他国に脅威を与えるような軍事国家、軍事大国にはならず、非核三原則を守る、こうした基本原則を堅持してきました。こうしたこの憲法の平和主義にのっとったこの精神、これがこの我が国の平和国家としての考え方であると認識をいたします。

○山添拓君 外務省が二〇〇五年に公表した平和国家としての六十年の歩み、ファクトシートには、平和国家としての実績として、自衛のための必要最小限度の防衛力しか保持せず、攻撃的兵器を保有しない、戦後一度たりとも武力を行使したことがない、防衛費の対GNP、国民総生産比は一%程度、武器の供給源とならず武器の売買で利益を得ない、武器輸出三原則、海外援助で軍事への転用を厳格に禁じ国際紛争を助長しない、ODA大綱などを列挙しています。
今、岸田政権は、専守防衛を投げ捨て、戦後初めて、敵基地攻撃能力となる長射程ミサイルなど攻撃的兵器の保有に突き進み、集団的自衛権の行使を可能にし、日米軍事一体化を進め、海外での武力行使に道を開き、軍事費二倍、GDP比二%を目指すと言い、殺傷兵器の輸出解禁、それに伴う巨額の利益を上げようとし、途上国への支援でも軍隊への装備品提供を行おうとしています。
総理は、日本の平和国家としての実績をことごとく壊しています。その自覚をお持ちですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 委員の御指摘でありますが、例えば反撃能力、これは自衛のための必要最小限の防衛力の範囲内だと説明をしております。また、戦後一度も武力の行使は行っていないこと、これは継続されております。防衛費についても、必要な防衛力の内容を積み上げ、国際比較の指標も考慮した上でGDP二%目標を掲げているということでありますし、装備移転は、力による一方的な現状変更を抑止し、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出のための政策手段であるということ、こうしたことを考えますときに、我が国のこの国際安全保障戦略等で示した政策、これは、積極的平和主義の下、我が国の平和と安定を維持し、国際法に基づく国際秩序の維持を目的としているものであり、平和国家の歩みについて何ら変わるものではないと認識をしております。

○山添拓君 その答弁自体が極めて不誠実だと思います。
私は、国際社会の現実は、軍事力では平和を築けないことを示していると思います。国際紛争を助長する武器輸出、とりわけ殺傷兵器の輸出解禁は断じて認められない、このことを指摘して、質問を終わります。

○委員長(櫻井充君) 以上で山添拓君の質疑は終了いたしました。(拍手)

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