山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2025年・第217通常国会

戦争に動員されBC級戦犯とされた朝鮮半島、台湾出身者への差別 「不条理強いられた当事者遺族を救済する政治決断を」

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
戦後八十年を迎え、歴史に真摯に向き合い、未解決の問題を解決すべきと考え、質問をいたします。
外国籍の元BC級戦犯の問題です。朝鮮半島や台湾出身で旧日本軍に動員され、戦後の軍事裁判では日本人として裁かれたにもかかわらず、釈放後は外国人として扱われたために、日本人が受けられた援護措置を受けられなかった人々がいます。
まず、法務省に伺います。
旧日本軍のBC級戦犯者の総数、そのうち朝鮮半島、台湾出身者の数、また、そのうち死刑となった数をお示しください。

○法務省 大臣官房審議官(中村功一君) お答え申し上げます。
法務省では、過去に戦争犯罪裁判に関する資料を保有しておりましたけれども、平成十二年に国立公文書館に全て移管済みでありまして、現段階でそれらの資料を保有していないため、お尋ねについてお答えすることは困難でございます。
その上で、質問主意書等に対する過去の政府答弁に基づいてお答えいたしますと、朝鮮半島出身者及び台湾出身者で戦争犯罪裁判において起訴された者の数、その裁判結果等については、いずれもその実態を正確に把握できないが、資料から推定できる受刑者総数は、朝鮮半島出身者について百五十人程度、台湾出身者について百七十人程度と承知していると答弁したものがあると承知しております。

○山添拓君 朝鮮出身者の中では二十三人が死刑になったということであります。
一九五五年、朝鮮半島出身者の戦犯が刑務所内で結成した同進会が日本政府に国家補償と名誉回復を求め、直近では二〇一六年に超党派の議員連盟で特別給付金を支給する法案もまとまりましたが、これは、自民党内での手続が間に合わず、いや、なされず、国会提出には至っていません。
最後の当事者で同進会の会長だった李鶴来さんが二〇二一年三月に亡くなり、遺族が活動を引き継いでおられます。朝鮮半島からは三千人以上の青年が東南アジア戦線に動員されました。李鶴来さんは、皆さんの中にも御承知の方がいらっしゃるかと思いますが、十七歳で、映画「戦場にかける橋」で有名な泰緬鉄道の建設現場に配置されました。イギリス、フランス、オランダ、オーストラリアなど連合国軍の捕虜を労働現場に送る監視員で軍属でした。ここでは、過酷な労働と虐待、一万人を超える捕虜が亡くなったという現場です。
李鶴来さんは戦後、シンガポールの刑務所に収監され、一度釈放されたものの戻され、死刑とされたものの、後に減刑となって巣鴨プリズンに移送されました。仮釈放されたのは一九五六年、三十一歳のときです。日本人として戦犯となったわけです。
一方、一九五二年四月二十八日、サンフランシスコ平和条約が発効し、日本が主権を回復すると、朝鮮人は日本国籍を失いました。選択したわけではなく、剥奪されたわけです。四月三十日、戦傷病者戦没者遺族等援護法が作られましたが、戸籍条項があり、翌五三年に復活した軍人恩給には国籍条項がありました。
外務大臣に伺います。
植民地支配の下で日本人とみなされ、戦争に動員され、戦犯となって受刑し、しかし、戸籍や国籍を理由に日本人なら受けられた援護措置も受けられない、この事態が理不尽だという認識をお持ちでしょうか。

○外務大臣(岩屋毅君) いわゆるBC級戦犯の方々が今日まで様々な御苦労をされてきたということについては、大変心が痛む思いがいたします。

○山添拓君 もうちょっとしゃべっていただきたいなと思うんですが。やはり理不尽だと思うんですね、不条理だと、そういう訴えです。大臣、いかがですか。

○国務大臣(岩屋毅君) 朝鮮半島、台湾出身の方々のうち、いわゆるBC級戦犯の方々につきましては、道義的見地から、一九五三年以降、日本人と同様の帰還手当が支給されたほか、見舞金、生活資金の一時支給が行われております。また、なりわいの確保、公営住宅への入居につきまして、好意的な措置がとられたというふうに承知をしているところでございます。

○山添拓君 謝罪や補償ということとは程遠いかと思うんです。そして、こうした問題が訴えられる際に政府側が示すのは、日韓請求権協定、一九六五年の協定によって解決済みという説明です。
しかし、韓国政府が二〇〇五年に開示した文書では、一九五二年二月四日、韓国側がこの問題について日本政府の方針を尋ねたのに対して、日本側は、それは別個の問題であるから別途研究すると答弁したと、こういう記録があります。
資料をお配りしています。日本側の記録はどうなのかという点が十年前にこの委員会で質問され、民主党の藤田幸久議員が質問したのに対して、政府が調べたというんですね。そうしたところ、二つあったといいます。その一つが、そこにもあります、一九五三年、昭和二十八年五月二十九日の第三回国籍処遇関係部会。韓国側、日本側の扱いには腑に落ちない点が多くあり、意見の応酬が若干行われたなどとあります。
意見の応酬とあるんですね。これ決着が付いたという記録は、外務省、あるんでしょうか。

○政府参考人(柏原裕君) お答えいたします。
今委員から御指摘のありましたとおり、当時、昭和二十八年五月二十九日の会議、あるいは昭和二十八年六月十八日の会議において、資料に記載のあるようなやり取りがあったというふうに認識をしております。
これは、日韓の国交正常化に向けた交渉の中で、いろんなやり取りがある中での一つの場面だったというふうに認識しております。重要なことは、日本と韓国の間では、長年の協議を経て日韓請求権・経済協力協定が締結されているということ、そして、その合意議事録において、対日請求要綱、いわゆる八項目を含めて、いかなる主張も韓国側がなし得ないということが確認されているというその結論であるというふうに認識しております。

○山添拓君 私が伺っているのは、日韓協議の中で、外国籍の元BC級戦犯に対する補償がこの請求権協定の対象として含まれることが確認されたのかどうかと。そうしたことが明記された記録というのは外務省内では確認されていますか。

○外務省 大臣官房参事官(柏原裕君) お答えいたします。
先ほど申し上げましたとおり、一連の協議の結果、日本と韓国の間で請求権協定が締結されたということであるというふうに認識をしております。そして、その日韓請求権並びに経済協力協定の合意議事録においては、先ほど申し上げましたとおり、明確に規定されているということでございます。

○山添拓君 いや、もう一度お答えいただきたいんですが、BC級戦犯の問題について、この請求権協定で、いや、韓国側の記録によれば、別途研究をすると日本側は述べたと言っています。その研究の結果としてこうだと、そういうことが明記されているような文書というのは政府内では確認されていますか。

○政府参考人(柏原裕君) お答えいたします。
日本と韓国の間で種々のやり取りが行われる中で、韓国側からは、対日請求要綱、いわゆる八項目というものが提示された経緯がございます。その中には、戦争による被徴用者の被害に対する補償といったような内容も含まれております。
この内容を含めて、この韓国の対日請求要綱、いわゆる八項目につきましては、日韓請求権の協定の合意議事録におきまして、この韓国の対日請求要綱の範囲に属する全ての請求が含まれていると、韓国側はいかなる主張もなし得ないということが確認されていると、これが日本と韓国の間の合意文書の中に規定されているということでございます。

○山添拓君 事実の問題ですから、八項目の中にBC級戦犯について特段の言及はないですよね。

○政府参考人(柏原裕君) お答えいたします。
いわゆる八項目の中に、B級戦犯あるいはC級戦犯という言葉そのものが出てくるというふうには認識しておりません。

○山添拓君 一九五二年二月四日の韓国側の記録によれば、日本側が別途研究したいと述べたと、そういう会議があったようですが、その議事録について当委員会にも提出を求めたいと思います。

○委員長(滝沢求君) 後刻理事会で協議いたします。

○山添拓君 二〇〇〇年三月三十日の参議院国民福祉委員会で、社民党の清水澄子議員の質問に、当時の丹羽雄哉厚生大臣が、どういう対応策が取れるかということについて十分に私の立場で今後検討していきたいと答えています。
厚労省に伺います。この間どんな検討が進められてきたんでしょうか。

○厚生労働省 大臣官房審議官(岡本利久君) お答え申し上げます。
厚生労働省で所管をしております戦傷病者戦没者遺族等援護法による給付につきましては、戦犯であることにより受給権が制限されるものではございませんが、日本国籍が支給要件となるため、外国籍の元BC級戦犯の方には支給をされていないということでございます。
なお、現在、超党派の日韓議員連盟におきまして元BC級戦犯及びその遺族に対する特別給付金の支給を内容とする議員立法が議論されているふうに承知をしております。
厚生労働省としましては、引き続きその動きを注視してまいりたいというふうに考えております。

○山添拓君 二十五年にわたって何を検討してきたのかということを伺ったんですが、お答えはありません。そもそも援護法上対象外とされたのは、その附則の二条ですね。戸籍法の適用を受けない者については、当分の間、この法律を適用しないという条文に基づいています。
当分の間適用しないと、そもそもこういう条文にした理由は何だったんでしょうか。

○政府参考人(岡本利久君) ちょっと突然のお尋ねですので、承知している範囲で御答弁申し上げますが、援護法におきまして国籍要件というものが設けられている経緯というものにつきましては、同様に国籍要件を設けております恩給法に準拠をして制定をされたというふうに承知をしております。

○山添拓君 援護法は戸籍なんですね。旧植民地の出身者は戸籍法ではなく、外地戸籍令の登録者でした。日本人と異なる扱いをしていました。それは植民地だという差別意識の反映でもあると思います。徹頭徹尾、差別的な扱いをしてきたと。しかし、戦争に動員し、戦犯の罪を負わせ、日本が主権を回復した後は、戦犯に対する刑の執行も、本来韓国政府などに渡すべきだったのに日本側が持ち続けたということであります。
厚労省にもう一点伺います。
政府は、戦後四十年以上にわたって靖国神社に戦没者の情報提供を行ってきました。朝鮮半島や台湾出身の軍人軍属についても情報提供してきました。なぜでしょうか。

○政府参考人(岡本利久君) お答え申し上げます。
旧厚生省におきましては、朝鮮半島出身の軍人軍属の死亡、死因等を記載した身上記録というものを保有しておりまして、靖国神社からこれらの者についても調査依頼があったので、一般的資料提供の一環として回答を行っていたものというふうに承知をしております。

○山添拓君 一般的資料請求というんですけど、しかし、朝鮮人と台湾、朝鮮と台湾出身、日本の臣民として亡くなったのだからと平和条約以降も日本人扱いして、だから靖国神社に提供してきたんじゃないんですか。

○政府参考人(岡本利久君) お答え申し上げます。
繰り返しになりますけれども、靖国神社からこれらの者についても調査依頼があったので、一般的資料提供の一環として回答を行っていたということでございます。

○山添拓君 私は、余りにそれは御都合主義の答弁だと思うんですね。
資料の二枚目は、同進会結成から七十年となった今年四月一日、国会内で開かれた集会のアピールです。不条理、差別を強いられたままの当事者、遺族を救済するだけでなく、日本が歴史に向き合い、人権後進国と批判されてきた汚名を遅まきながら返上、克服することを強く願いますと訴えています。
大臣、ちょっと最後にもう一度伺いたいんですが、戦後八十年です。日韓国交正常化六十年です。今年、前向きに解決していくべきじゃないでしょうか。

○国務大臣(岩屋毅君) 先刻も申し上げましたとおり、あたかも、何というんでしょうか、歴史の激動の合間に滑り落ちてしまったかのような方々がこの間味わった御苦労には本当に心が痛む思いがいたします。
しかしながら、日韓の間には様々戦後処理について今日もなお議論がありますけれども、しかし、この日韓請求権・経済協力協定によって日韓間の財産請求権の問題は最終的に、そして完全に解決済みであるというところが我が方の基本でございますので、ここを崩していくと、これまで積み上げてきた努力も水泡に帰してしまいます。
そういうことで、そういう立場に基づいて、しかし、誠心誠意、誠実にこれからも対応していきたいというふうに考えているところでございます。

○山添拓君 時間ですから終わりにしなければなりませんが、大臣、それは極めて残念です。そうであってはならないと思います。日韓議連でも継続してテーマに上がってきた内容ですから、与党の皆さんも含めて問題意識をお持ちだと思います。今年、政治的な決断が求められているということを改めて指摘して、質問を終わります。

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