山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2025年・第217通常国会

トランプ関税 米裁判所「違法」判断 「米側に説明求め国会にも説明を」/女性差別撤廃条約選択議定書未批准 「四半世紀の検討で問題の指摘一つもなし 直ちに批准を」

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
私は、外務、防衛両省に今日は伺いたいと思います。
トランプ関税をめぐる日米協議について伺います。
トランプ大統領は、二十三日午前の電話会談で石破首相に、アメリカにはすばらしい戦闘機があるなどとセールスを持ちかけたと報じられ、赤澤大臣は訪米前の会見で、関税交渉において、米国からの兵器の購入も視野に入り得ると述べていました。
外務大臣に伺いますが、今回の日米協議で兵器購入の拡大が議論に上がったのでしょうか。

○外務大臣(岩屋毅君) 今回の日米協議の議論の内容については、外交上のやり取りでございますので、お答えは控えさせていただきたいと思いますが、言うまでもなく同協議は主に経済分野の取組に焦点を当てるものでございます。
防衛力整備については、その関税措置の見直しの見返りとしてではなくて、我が国を取り巻く安全保障環境を踏まえて、我が国の独立、平和、国民の命と平和な暮らしを守るために何が必要かという観点から検討して実施すべき事項を積み上げていくべきものでございます。装備品についても、何が日本の防衛力強化にふさわしいのかを第一に考えて、具体的な機種や数量を決定することとなるわけでございます。
そのような考え方については、米国に対しても様々な機会を通じて伝達をしてまいります。

○山添拓君 総理も安全保障と関税交渉はリンクさせるべきでないと述べていましたので、今大臣がおっしゃったような姿勢なのだろうと思います。
ところが、赤澤大臣は、防衛装備品の購入などが入ってくれば事実上米国側の貿易黒字が積み上がると、で、視野に入るかと言われれば、入り得るかと思うと述べていたんですね。
防衛大臣に伺いますが、そうしますと、米国の貿易赤字解消のために米国製兵器を購入するという選択肢があり得るということなんでしょうか。

○防衛大臣(中谷元君) 基本的に、やっぱり防衛力整備の内容は、我が国を取り巻く安全保障環境を踏まえて、我が国自身の独立と平和、これを守るために何が必要かという観点から決定すべきことでございますので、何が日本の防衛力にふさわしいかという観点で必要な機種、数量を決定するというふうに考えております。

○山添拓君 そうすると、赤澤大臣が言っていることは間違いですか。

○国務大臣(岩屋毅君) 赤澤大臣の発言については承知しておりますけれども、同時に赤澤大臣は、安全保障は関税や通商政策の交渉とは全く切り離された世界の話であるということも述べておりますので、そこはそういう御指摘は当たらないと考えております。

○山添拓君 いやいや、事実上米国から貿易黒字が積み上がると、だから、視野に入るか入らないか、入り得ると、こういう話で、要するに、安全保障上の必要云々という話ではなく、米国の貿易赤字解消に貢献するために視野に入るとあけすけに語っているものだと思います。
私は何も言いがかりを付けているわけではなく、トランプ大統領は第一次政権のときも、大量に購入すべきだと、こう日本に求めて、F35戦闘機四十二機、あるいはイージス・アショアなど、爆買いにつながったわけです。その経過があるだけに、繰り返しかねないという懸念があります。
一方で、リンクさせないと言いながら、交渉担当の大臣が率先してリンクする発言を行うと、これは支離滅裂だと思うんですね。トランプ政権は五月上旬、日本政府に在日米軍駐留経費の日本負担増額を打診し、日本側は米軍住宅など提供施設整備費を数百億円規模で上積みする方向で検討しているとも報じられました。
しかし、私は今年三月にこの委員会で質問しましたが、その際、政府の答弁は現在の駐留経費は適切に分担されていると、こういう認識でした。そうしますと、今増額する理由というのはないかと思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(岩屋毅君) いわゆる同盟強靱化予算、ホスト・ネーション・サポート、HNSにつきましては、これまでも日米両政府の合意に基づいて適切に分担されてきていると考えております。
そして、現行の特別協定の期間は二〇二七年からまた新しい期間に入っていくということになりますので、今後の負担の在り方について予断することは控えたいと思いますが、今後とも我が国の適切な負担の在り方について不断に検討してまいりたいと考えております。

○山添拓君 いや、予断することは控えたいと言って、そうすると増額せよという求めに応じていくことになるんでしょうか。今適切に分担されていて増額する必要がないんだったら、今そのような必要はないということを日米協議でもお伝えになるべきかと思うんですが、伝えられていますか。

○国務大臣(岩屋毅君) 適切な負担の在り方について不断に検討していくというのは今後についても適切に負担を行っていくということでありまして、その中身について協議もまだ始まっておりませんし、この段階で予断をすることは控えたいと申し上げたところでございます。

○山添拓君 協議は始まっていないとおっしゃるんですが、トランプ氏の側は日本側の負担の在り方が不公平だと既に述べていますから、認識が違うのであれば今からはっきり物を言うべきだと思います。
アメリカの国際貿易裁判所は五月二十八日、トランプ関税の大半について違法とし、差止めを命じました。米国の憲法上、関税引上げは連邦議会の権限とされているにもかかわらず、トランプ氏は国際緊急経済権限法、IEEPAの制裁措置を根拠にしました。米国の貿易赤字が国家安全保障や経済に対する異例かつ重大な脅威だとして緊急事態を宣言して行ったものですが、裁判所は、トランプ関税のような関税措置は大統領の権限を逸脱していると判断しました。違法、無効な関税措置であるなら、譲歩する理由はいささかもありません。
判決について日米協議で何らかの説明を受けているでしょうか。

○国務大臣(岩屋毅君) 御指摘の判決ですね、米国際貿易裁判所の判決や同判決をめぐる動向については承知をしております。これが今後の日米協議に与える影響については、予断を持ってお答えをすることは差し控えたいというふうに思います。
我が国としては、この判決をめぐる動向を注視しながら、その影響も十分に精査をして適切に対応していきたいと考えております。

○山添拓君 日米協議で何らかの説明は受けられているんでしょうか。

○国務大臣(岩屋毅君) 今確たることをお答えすることは控えさせていただきたいと思いますが、日米協議は協議として粛々と進んでいるというふうに承知をしています。

○山添拓君 私は、憲法違反で無効だと裁判で指摘されているときに、大臣が言われるように協議だけは粛々と進めていくということでよいのかと、極めて疑問です。
ホワイトハウスの報道官は、裁判所は一切関わるべきでないと、選挙で選ばれたわけでもない裁判官が大統領の意思決定過程に介入するという有害で危険な傾向があるなどと述べています。これは三権分立どころじゃないですね。
大臣、少なくとも米国政府に対して今度の措置の合憲性について説明ぐらいは求めるべきじゃないでしょうか。

○国務大臣(岩屋毅君) 一連の関税措置全般について我が方としては見直しを、撤廃を求めているわけでございます。先ほどの裁判所の判決についても、米政府側はすぐに控訴しておりますから、結局、関税措置が今日なおも継続しているという状況が続いているわけで、そういう中で日米協議進めておりますので、引き続きこの一連の関税措置の見直し、撤廃を求めていくという姿勢に変わりはございません。

○山添拓君 いや、それはもちろんだと思います。しかし、説明も求めるべきじゃないのかと。政府として、アメリカ政府としてはこの関税措置の合憲性についてどう考えているのかと、その説明は求めていく必要があるんじゃないですか。

○国務大臣(岩屋毅君) 米政府側はこの裁判所の判決を不服としてすぐさま控訴をしているという状況でございますから、これはもう私の予測ですけれども、恐らく米政府側からこれについて説明をするという考えは余りないのではないかと思われます。

○山添拓君 いや、考えがなければすごすご引き下がるということでよいのかという問題だと思いますね。
そもそも、日米FTAに反する、またWTO協定違反の疑いを政府自身も主張してこられました。国際法上も、米国の憲法上も違法と疑われる関税措置です。そうであれば、説明を求め、そして聞いたことを国会でも説明いただきたいと思いますね。ルールなき貿易戦争に加担するべきではないという点も指摘をしたいと思います。
この点は引き続き伺いますが、別のテーマを伺います。
外務省は、今年一月、国連の女性差別撤廃委員会に対して任意拠出金を使わせないと通告した問題について伺います。
これは、皇室典範の改正を勧告されたことが理由だという説明です。皇位に就く資格というのは基本的人権には含まれないと、だから女性に対する差別には当たらず、皇室典範を女性差別撤廃委員会で取り上げるのは適当ではないという理屈で、かつ理由として挙げられたのはそれだけでした。
外務省に伺いますけれども、逆に言いますと、皇室典範以外の問題での日本への指摘というのは、これ基本的人権の問題だと、そういう認識なんですね。

○国務大臣(岩屋毅君) 女子差別撤廃委員会による我が国の女子差別撤廃条約の実施状況に関する第九回の政府報告審査を受けた最終見解については、我が国としては全体としてこれは受け入れて、受け止めているわけでございますけれども、その中でも、皇室典範改正の勧告に対しては、これは撤回をされたしということを再三にわたって繰り返し丁寧に説明してきたにもかかわらず、この要求が受け入れられなかったということを重く受け止めて、先般のような判断をさせていただいたところでございます。
女性活躍そして男女共同参画は非常に大事なことでございますので、これはCEDAWと今後とも女子差別撤廃に向けた協力は継続していく考えでございます。

○山添拓君 そうであるなら、問題のある点に絞って主張すれば済む話だと思うんです。
調査が気に入らないから、勧告が気に入らないからといって、国際機関に対する資金提供を停止するという姿勢は、例えば中国やロシアが行って、またトランプ政権も国連人権理事会からの脱退を命じています。日本が同様の姿勢を取るのでしょうか。それは、国際機関の、国際人権機関の弱体化を招き、日本の信頼も損なうものです。除外措置は撤回すべきだと思います。
ほかの項目については受け入れているという話を大臣されました。
選択議定書について聞きたいと思うんですが、今回CEDAWは、二〇二〇年の第五次基本計画が早期締結について真剣な検討を進めるとしていることに留意するとしながら、この問題に関して、つまり選択議定書の日本の批准について、関係省庁研究会を二十三回開催しているにもかかわらず、選択議定書の締結の検討に余りに長い時間を掛けていることに遺憾の意を表するとしています。いつまでたっても検討なんですね。
大臣、これは余りにも長いんじゃないでしょうか。

○国務大臣(岩屋毅君) 女子差別撤廃条約選択議定書で規定されている個人通報制度については、注目すべき制度ではあると思ってはいるのですけれども、この制度の受入れに当たりましては、我が国の司法制度や立法政策との関連での問題の有無、そして個人通報制度を受け入れる場合の実施体制などの検討課題がございます。例えば、国内の確定判決、つまり最高裁判決とは異なる内容の見解、通報者に対する損害賠償や補償を要請する見解、法改正を求める見解等が出された場合に、我が国の司法制度や立法政策との関係でどのように対応するか、実施体制も含めて検討すべき論点が多々あると認識をしております。
したがいまして、関係省庁と二十三回議論を行ってきているわけでございますが、引き続き真摯に政府として検討を重ねてまいりたいと考えております。

○山添拓君 いや、二十五年以上検討中なんですよ。で、二十三回の研究会、その中で、具体的に日本が批准したら問題になるようなケースというのは指摘されたんでしょうか、外務省。

○外務省 大臣官房審議官(松尾裕敬君) 政府としては、これまで、二十三回にわたりまして個人通報制度関係省庁研究会を開催するとともに、諸外国における個人通報制度の導入前の準備や運用の実態などについて調査を行っております。
こうした諸外国の事情に加え、各方面から寄せられる意見なども踏まえつつ、個人制度の受入れの是非について、引き続き政府として真剣に検討してまいりたいと考えております。

○委員長(滝沢求君) 申合せの時間が参りましたので、おまとめください。

○山添拓君 時間ですから終わりにしますけれども、具体的な問題が一体あったのかなかったのか、これではらちが明きませんので、この間の研究結果を踏まえて、具体的に日本が批准した場合の問題があるのかどうか、その点をまとめて委員会に報告を求めたいと思います。そして、その問題、一つも指摘できないんだったら、心配は杞憂だということですから、直ちに批准に進むべきだと、委員長にお取り計らいを求めて、質問を終わります。

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