山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2017年・第193通常国会

原子力規制委員会委員長候補に所信聴取

要約
  • 政府が国会に同意を求めている更田 豊志原子力規制委員会委員長候補の所信聴取。福島原発事故を引き起こした原子力規制行政の責任や、新規制基準下での火山対策などについて質問しました。

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。よろしくお願いいたします。
私からも、初めに、福島第一原発事故を振り返りまして、先ほど来お話もありましたが、とりわけ原子力規制行政が反省すべき点はどのようなところだったかということについて伺いたいと思います。
三月十七日の前橋地裁の判決では、事故についてあるいは津波について国の予見可能性があったと、あるいは結果回避可能性があったと、これを認めて、あの事故は防げたんだと断じているところでもあります。
個別の問題についてはなかなか御発言難しいところもあろうかと思いますが、ただ、事故をもたらした国の責任、とりわけ規制権限の行使の在り方についてどのようにお考えでしょうか。

○参考人(更田豊志君) たくさんありますけれども、三つのことをお答えしようと思います。
一つは、規制行政の中での優先順位付けを誤っていた部分があると思っています。
本当に安全上重要なことではなくて、むしろ一般の方の関心の高いものであるとか、あるいは事業者の財産保護に関わるようなことの方に随分時間を費やしてしまって、真に安全上やらなければならないことの優先順位付けを誤っていた部分、それから、細部にこだわった細かい検討に非常に多くの時間を費やしていたというところがあろうかと思います。
二つ目は、先ほどの御質問の際にもお答えをしましたけれども、規制と推進の分離、これは行政組織としての体制だけの問題ではなくて、それぞれの責任に当たる者の意識の中でも極めて曖昧な部分があったであろうと思っています。
そうなりますと、どうしても事業者の経済的事情であるとかそういったものにしんしゃくしてしまって、きちんとしたセーフティーファースト、安全第一というものから離れてしまった部分というのがあろうかと思います。
それから、これは既に優先順位付けのときにもお答えしたことですけれども、やはりできることはもうさっとやるという迅速さ、これに欠けていたこと。さらに、もう一つ申し上げますと、緊急時のときの備え。端的に申し上げますと、当時の体制でいえば、事故のときに、緊急時対応に陣頭指揮を執るべきは原子力安全・保安院ですが、まあ院長の方は事務官の方でしたし、一方、原子力安全委員会の方は諮問委員会としての認識しか持っておりませんから、いざああいった緊急状況下で自分たちが陣頭指揮を執るというような思いは恐らく持っておられなかっただろうと思います。
そういった意味で、本当にあのような災害が起きたときに、しっかりとした知識を持った者がどう対応するかという体制が本当の意味でできていなかったというのが大きな反省になろうかと思います。

○山添拓君 次に、新規制基準のことについて伺いたいと思うんですが、地震動の想定が過小評価である可能性があると、こういう指摘がされています。
名古屋高裁の金沢支部に係属している大飯原発の運転差止めの訴訟の控訴審で、四月二十四日ですが、島崎邦彦さんが証人として出廷をされて、地震動の想定に用いる関係式を変えれば大飯の基準地震動は大幅に引き上がる可能性があると、必要な審査がまだ行われていないと述べておられます。
島崎さんは元規制委員長代理で、大飯原発についても地震動や津波想定を審査した方ですので、その証言というのは重いんではないかと思いますが、こういう指摘を受けて、どのように更田参考人としては受け止めておられるでしょうか。

○参考人(更田豊志君) 個別の係争中の訴訟に直接関することはお答えできないですが、御質問にありましたように、島崎元委員長代理は、原子力規制委員会において特に地震に関わる部分について審査に当たっておられた方ですから、原子力規制委員会も、特に島崎さんを規制委員会に来ていただいて、実際御意見を伺って、委員長それから石渡委員の二人で島崎さんと会って、御意見を、どのような主張をされているかというのを伺いました。まず、とにかく主張の把握に努めました。
その上で、私どもも、規制委員会、規制庁の中で島崎さんの主張について検討を進めましたが、まず私自身としては、今回の島崎さんの指摘には科学的、技術的に見てかなり無理があるというふうに考えています。そして、既にこれは規制委員会として判断を下したことですけれども、現在の地震動の評価において島崎さんが主張されるような過小評価に当たる部分はないと判断しております。

○山添拓君 島崎氏は規制委員会を退任された後、様々研究されたり、あるいは熊本地震の観測データを踏まえて証言をされているということですので、先ほど更田参考人がおっしゃった常に最新の知見に学ぶ姿勢ということからすれば、やはりその意見について耳を傾けるに値するものではないかと思います。
もう一つ、新規制基準に関わって伺いたいんですが、これ火山対策についてですね。これも、二〇一六年四月に川内原発の再稼働差止めを求める福岡高裁の宮崎支部の決定や、あるいは今年三月に伊方原発の再稼働差止めを求める広島地裁の決定で不合理だという指摘がされています。特に立地評価は、設計上は対応できない事態の発生を基準とする際に、その火山の評価を誤ると火砕流が襲って重大な事故になりかねないんだと、しかし、噴火の時期や規模を的確に予測することは困難だと。予測は可能だということを前提にした規制委員会の火山ガイド、これは不合理だとされています。火山ガイドそのものを見直すということは今検討されているんでしょうか。

○参考人(更田豊志君) これは火山活動に限ったことではありませんけれども、全ての基準、全ての審査ガイドにわたって、新しい学ぶべき科学的知見が得られた場合にはこれに沿って改善を進めるというのが基本姿勢です。
その上で、火山については、特に火山灰の密度、降下してくるときの密度に対して一般から御指摘をいただいたこともあって、これについては、現在、その検討を進めて、規制の強化、必要な場合は規制の強化ですけれども、に向けた検討を進めております。二つの側面がありまして、どのくらいの火山灰密度を考えればいいのか、それから、どこまでの火山灰に個々の機器が耐えるのかといった議論は、まさに原子力規制委員会で現在行っているところであります。

○山添拓君 今の点は火山灰対策としての非常用ディーゼル発電機のフィルターの問題に関わってのところだと思いますが、是非、それは大事な指摘かと思います。
最後に一点、電源開発が青森県で建設している大間原発のことなんですが、これ、ABWRというんでしょうか、改良型の沸騰水型軽水炉だと呼ばれていて、世界で唯一建設中の型式だと伺っています。これはヨーロッパでは多国間設計評価プログラムの承認が得られていない、建設、運転の見込みが立っていないということも伺いまして、こうした国際的には承認されていない型式について、規制委員会として、世界最高水準だと、こういうことが果たして言えるのかどうか、疑問があります。この点についての御意見を伺いたいと思います。

○参考人(更田豊志君) 今のABWRという型式でいいますと、柏崎刈羽の六、七号機がABWRです。それから、島根の三号機と志賀の二号機ですか、ABWRは国内で既に幾つもございますし、また、現在、英国、イギリスはABWRの建設に向けた検討を進めております。あと、ちょっとこれは不確かな知識ですけれども、恐らく台湾にもABWRがあったと思います。
御質問をいただいたのは、むしろフルMOXという、MOXを全ての炉心に入れて運転するABWRという意味では、御指摘のとおり、大間が世界で唯一のものです。まだ大間は運転に入っておりませんけれども、通常、炉心の三分の一ないしは四分の一にいわゆるプルサーマル燃料、MOX燃料を入れて運転をしている、この実績は国内でもありますけれども、フランス等々も炉心の三分の一ないし四分の一のMOX、フルMOXで運転するというのは大間が世界初になります。このために、制御棒の数であるとかフルMOX炉心に合わせた設計上の改良がされていますけれども、先生御指摘のように、大間が唯一のものであるのは事実です。
MOX自体は、言葉は乱暴ですけれども、福島第一原子力発電所事故のような事故に至ってしまったら、これはウラン燃料もMOX燃料もないような側面はあります。一方、それよりも、事故に至りやすさであるとか、あるいはそれよりも程度の軽い事故において、事故になってしまえばMOX燃料であろうとウラン燃料であろうと大きな差はないんですけれども、制御棒の機器等々が多少変わってきますので、大間の審査の中で、原子力安全委員会それから保安院の既に行った審査の中でそういった点については確認がなされています。
しかしながら、原子力規制委員会としてはまだ大間について審査に入っておりませんので、これは今後の審査の中を通じて検討を進めていくことになります。

○山添拓君 終わります。

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