山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2017年・第193通常国会

鬼怒川水害を踏まえ 行政の水害対策の充実を

要約
  • 水防法等の一部を改正する法律案についての質疑。「鬼怒川水害を踏まえた河川行政の課題」をテーマに、今後の洪水防止のための行政のあり方などを問いました。

 

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
私は先日、茨城県の常総市を訪れてまいりました。二〇一五年九月の水害で鬼怒川の堤防が決壊したり、あるいは溢水をして、そのために市の面積の三分の一、四十平方キロ、人口の四割、二万五千人が被害を受け、一年半がたちましたが、五十七世帯が避難生活を余儀なくされているということでした。
資料の一ページに水害前に作成されていたハザードマップを付けておりますが、御覧いただいてお分かりのとおり、市内のほとんどで洪水時には一メートルを超える浸水が想定されており、現に市役所や避難所に指定されていた場所も被害を受けたと。
市の担当者に伺いますと、今後、広域の避難計画をどう作るかが課題だと。障害者や高齢者などに対応する避難先が被災地の中にあるのでは用を成さないわけです。隣のつくば市などへの搬送を考えているが、そのためには複数の市町村との事前の協定が必要になるというお話でした。
今度の法改正では、社会福祉施設や学校あるいは医療施設など要配慮者利用施設について避難確保計画の策定を義務付けられることになりますが、義務付ける以上はこうした市町村間の協定など事前の条件整備が必要になるのではないかと思いますが、大臣のお考えを伺いたいと思います。

○国務大臣(石井啓一君) 要配慮者利用施設の避難確保計画は、地域における避難の在り方を踏まえまして、施設の管理者が市町村と相談しつつ作成することが重要でございます。一方、市町村による水害時の広域的な避難の検討に当たりましては、近隣市町村などと一体となった地域全体での取組が必要と考えてございます。このため、要配慮者利用施設の避難確保計画におきまして、広域的な避難が必要となる場合には、流域の複数の市町村や河川管理者等が参画をいたしました大規模氾濫減災協議会での検討が有効と考えております。
国土交通省といたしましては、協議会におきまして、近隣市町村間の連携が深まるよう助言をするとともに、要配慮者利用施設の計画の作成状況をフォローアップすることによりまして、要配慮者の広域的な避難につきましても実効性のある計画となるよう、関係機関と連携をして取り組んでまいりたいと考えております。

○山添拓君 義務化をして、作っていなければ指示をし、そしてさらに、作らなければ施設の名称も公表すると、こういう仕組みをつくるわけですから、施設任せというわけにはいかないということであろうと思います。
常総市のある避難所では最大で一千百人が避難をしてきて、来る人来る人みんなパニック状態だったと伺いました。避難所内の動線確保を最優先し、障害者や高齢者には畳のある部屋に誘導するなど工夫をしたと伺いました。今、その経験とそれから市民の声を反映させた避難所対応マニュアルを作り、あるいは自らアンケートを取って防災マニュアルを提案してこられる障害者団体などもあると伺いました。甚大な被害に遭った常総市の皆さんの声は大変貴重だと思います。常総市に限らず、河川の防災対策は流域の特性を踏まえる必要があります。歴史や現状をよく把握する地域住民の積極的な参加が不可欠だろうと考えます。
今後、設置が義務付けられる大規模氾濫減災協議会の議論では、こういう住民の意思はどのように反映されることになるでしょうか。

○大臣政務官(根本幸典君) 災害リスク情報の提供や避難体制の構築など洪水氾濫からの減災対策を検討するに当たっては、住民の意思を取り入れることが重要であるというふうに考えております。
大規模氾濫減災協議会は、大規模氾濫による被害の軽減に資する取組を総合的かつ一体的に推進するために必要な協議を行う場であるため、これを推進するために不可欠な責任を有している、現地において河川を管理する河川管理者や、住民の避難等の事務を担う市町村の長などを必須構成員としています。これらの構成員は、それぞれの役割を果たすに当たり、日頃より住民と接していることに加え、とりわけ市町村は住民による身近な行政組織でありその機会が多いことから、当該必須構成員の参画により住民の意思がおのずと反映されることが期待されております。また、協議会には、当該地域の実情に応じて自治会長など住民の代表者に参加いただくことも可能であります。
引き続き、水害から国民の生命と財産を守るため、住民の意思を踏まえ、全力を挙げて防災・減災対策に取り組んでまいります。

○山添拓君 実は、昨日も常総市の水害被害者の会の皆さんが国交省を含む政府への要請を行っておられます。茨城県、大臣の御地元でもありますが、是非大臣自身も、一年半たってもなお苦しんでおられる実態や要求をお聞きになってはいかがかと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(石井啓一君) 私は、この常総市の隣のつくば市に住んでございます。今、閣僚となりまして、なかなか地元に戻る機会はございませんけれども、あの地域の首長さん、あるいは議員の皆様等々、御要請いただくこともございますし、あるいは機会があればそういった住民の方々からの御意見も伺いたいと存じております。
○山添拓君 是非お願いしたいと思います。
資料の二枚目に、堤防が決壊した三坂地区の様子を付けております。この決壊の原因についてですが、鬼怒川堤防調査委員会はどのように結論付けたでしょうか。

○政府参考人(山田邦博君) お答えいたします。
平成二十七年九月の関東・東北豪雨によりまして、鬼怒川では流域平均の二十四時間雨量が観測史上最も多い四百十ミリを記録いたしまして、鬼怒川下流の水海道地点等におきまして観測史上最高水位を記録いたしました。三坂町地先の堤防決壊の原因につきましては、関東地方整備局が学識者等により構成されます鬼怒川堤防調査委員会を設置をいたしまして究明を行いました。
委員会の報告書によりますと、記録的な大雨により鬼怒川の水位が大きく上昇して堤防高を上回り越水が発生をし、越水により川裏側で洗掘が生じ、川裏側の堤防のり面の付け根に当たりますのり尻、この洗掘が進行、拡大等をして決壊に至った旨の報告がなされております。また、越水発生前に河川の水が堤防に浸透いたしまして、この浸透流によって堤防や基礎地盤の土が徐々に洗い流されるいわゆるパイピングが発生したおそれがあって、主要因ではないものの決壊を助長した可能性は否定できない旨も報告をされているところでございます。

○山添拓君 資料の三枚目に、堤防を越えた流水が堤防を裏からえぐり取ったと、こういうことが解明されています。
三坂地区の堤防を整備するに当たって、この今回崩壊した裏のり面、あるいはのり尻と呼ばれる堤防と表土が接する部分というんでしょうか、この部分の強化は行ったのでしょうか。

○政府参考人(山田邦博君) お答えをいたします。
三坂町地先を含みます鬼怒川におきましては、鬼怒川堤防調査委員会における堤防決壊原因の検討結果等を踏まえまして、水位を低下させるために必要な河道掘削と計画上必要な断面を確保する堤防の整備を行っているところでございます。また、三坂町地先におきましては、堤防への浸透あるいは基礎地盤のパイピングへの対策といたしまして、堤防の川表側に護岸、そして遮水矢板を設置するとともに、川裏側に水抜きをするドレーン工を設置をしているところでございます。
氾濫リスクが高いにもかかわらず、当面、上下流バランス等の観点から堤防整備に至らない区間などにおきましては、決壊までの時間を少しでも延ばす対策を実施しておりますけれども、三坂町地先では、まずは確実に地域の安全度を高め、越水の発生頻度を低減することができる堤防整備や河道掘削等のハード対策を着実に推進することとしているところでございます。

○山添拓君 今回の決壊の原因と指摘されているのに、やらないということなんですね。
計画高水位に抑えるんだ、そのために堤防の高さを確保する、あるいは河道の深さを確保して流量を確保するんだと、ここは当然なんですよ、元々求められていたことですから。それをやった上で、かつ、今度の水防法の考え方というのは、それでもなお防ぎ切れない水害があるだろう、洪水があるだろうということで対策を必要としているわけですから、今回、この川裏側の堤防が洗掘された、崩壊が進んだ、この地域については是非対策を取るべきだと思います。
私も現地を訪れましたけれども、決壊した区間というのはいまだに更地の状態で、家々戻っていないところがございます。現に、越水して堤防が裏から削られた箇所であり、住民の皆さんからは、壊れにくい堤防にしてほしい、資産価値も下がっているんだ、こういう要求があります。浸水実績以上の水位はあり得ると、今日の議論の中でも御答弁ありました。是非、いま一度検討すべきだということを指摘したいと思います。
次に、資料の五ページを御覧いただきたいのですが、これは、若宮戸地区というところの農家をされていた小林さんという方についての記事です。
堤防がこう掘削されたんですね。この堤防が掘削されて、それに不安を感じて要望もされてきたんですが、被害を受けたと。購入したばかりの田植機やコンバイン、農機具などが被水をして、六割の補助を受けましたが、一千二百万円の自己負担が残ったと。同時に、自宅の再建も重くのしかかりましたので、結局、離農を決断されました。
昨年九月に自宅の方は完成したんですが、その後、十一月に突然倒れてお亡くなりになったということでした。代々続いてきた農業を手放すストレスを大変に感じていたと小林さんのお母さんもおっしゃっております。
この区間、約一キロにわたって無堤防区間で、砂が堆積した自然堤防があるだけでした。確保すべき流下能力の半分程度の流量で溢水する、あふれてしまう状態が放置をされて、少なくとも二〇〇一年以降は、毎年継続して地元から関東地方整備局に築堤の要望もされていたと。ところが、二〇一四年の三月頃から、ソーラーパネルを設置するために自然堤防が幅二百メートルにわたって掘削をされて、土のうを積む程度の対策でしかなかったために溢水が起きて甚大な被害を招きました。
資料六ページですが、この土のうは緊急的な措置として設置されたものだと国交省も書いています。しかも、自然堤防の、元あった堤防の最も低い高さに合わせて土のうを積み上げたにすぎなかったわけです。緊急の対応の必要性を意識していたんであれば、堤防整備を急ぐべきだったんではないでしょうか。大臣、お答えいただけますか。

○国務大臣(石井啓一君) 鬼怒川の茨城県内区間の整備は、上下流のバランスを勘案しながら、流下能力が大きく不足する箇所を優先をいたしまして、下流から順次実施してきたところであります。
若宮戸地区を含みます約六キロの一連の区間におきましては、堤防等の整備に向けまして、平成二十六年度から順次用地調査を進めていたところ、関東・東北豪雨による洪水で浸水被害が発生をしたところでございます。
若宮戸地区を含む鬼怒川におきましては、現在、平成三十二年度をめどに、河川激甚災害対策特別緊急事業等によりまして、計画上必要な断面を確保した堤防等の整備を進めているところでございます。
地域の安全、安心の確保のため、引き続き早期完成に向けて取り組んでまいりたいと存じます。

○山添拓君 今、平成二十六年から、二〇一四年から整備をという話だったんですが、もう二〇〇一年からは少なくとも毎年毎年要望がされていたんです。地元の皆さんは人災だと言っています。計画堤防より二・六メートルも低い高さにしかなかったと。この水が土のうの七十センチ上を溢水していった、七十センチ上回って溢水していったと。堤防がきちんと造られていれば十分に防ぐことができたと。長年要望がされ、掘削による危険も指摘されていたと。改修を計画していました、だから過渡的な安全性で足りると、こういう話では済まされないと私は考えます。そもそも、堤防整備のこの遅れの問題があります。
そこで伺いますけれども、今度の法案は、施設整備により洪水の発生を防止するものから、施設では防ぎ切れない大洪水は必ず発生するものへと意識を根本的に転換する、こういうものだと説明されています。協議会を設置したり避難計画を作る、この対策は必要性があると考えますが、しかし、だからといって施設整備の必要性が後退するわけではないと考えます。鬼怒川でも決壊した三坂地区は堤防の高さが一メートル以上不足していたんですね。計画どおり進められていれば決壊を防ぎ、被害を小さくできた。
大臣に確認したいんですが、水防災意識社会の再構築と言っています。しかし、その中でも水害対策における施設整備の重要性は変わらない、こう伺ってよいでしょうか。

○国務大臣(石井啓一君) 気候変動等の要因によりまして集中的な豪雨が増加するとともに、施設の能力を上回る洪水の発生も懸念されております。そのために、施設では防ぎ切れない洪水にも備えることはもちろんですが、まずはハード対策を着実に推進することが重要でございます。
具体的には、洪水氾濫を未然に防ぐ対策といたしまして、優先的に対策が必要な全国約千二百キロの区間におきまして、平成三十二年度までに堤防整備などを実施することとしております。また、既存ストックを最大限活用する取組といたしまして、既設ダムを有効活用して治水機能等を強化するダムの再開発等の取組を進めているところでございます。
国民の生命と財産を守るハード対策は極めて重要であると考えておりまして、今後もソフト対策と一体となって引き続き着実に推進してまいりたいと考えております。

○山添拓君 時間ですので終わりますが、やるべき整備をやらずに住民の自助、共助を強調するべきではなく、洪水を起こさない対策、施設整備をきちんと進めることが河川管理の基本であるということを改めて強調させていただいて、私の質問を終わります。

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