山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2018年・第196通常国会

本会議で、国際観光旅客税法案について質問

 

○山添拓君 日本共産党を代表し、国際観光旅客税法案について質問します。

法案に先立ち、森友問題について伺います。

証人喚問で佐川前理財局長は、疑惑の核心を一切語らず、刑事訴追のおそれと関係のないことまで証言を拒否し、一方で、安倍首相や安倍昭恵氏、官邸については、関与も影響もなかったと、根拠も示さず繰り返し断言しました。

佐川氏は、国有地売却の交渉当事者ではなく、前任の迫田氏からは引継ぎを受けなかったと証言しています。ならば、迫田氏に国会で説明させるべきではありませんか。財務大臣の答弁を求めます。

読売新聞の世論調査で、佐川氏の説明に納得できないが七五%に上りました。首相官邸前の抗議行動に初めて参加したある男性は、この問題が長引いている責任は政府にあると怒りを示しています。これが多くの国民の率直な思いではないでしょうか。

特例扱いで土地の貸付け、売却を認めた決裁文書を、いつ、誰が、誰の指示で、何のために改ざんしたのか。財務省は、改ざん問題が報じられて一月がたつにもかかわらず、こうした疑問に全く答えていません。十四もの決裁文書で改ざんがあったことは動かぬ事実です。僅か一年前のことです。なぜいまだに改ざんの経緯や理由を一切明らかにできないのですか。そのこと自体、財務大臣の重大な責任ではありませんか。

麻生大臣は、先日、森友の方がTPPより大事かとの暴言を吐きました。改ざん文書を国会に提出、虚偽答弁を重ね、国政調査権をじゅうりんし、国民と国会を欺き続けてきた、国民主権と議会制民主主義という憲法の基本原理を根幹から揺るがす歴史的犯罪を起こした事態の重さをどう受け止めているのですか。改めて反省と謝罪を求めます。

そもそも、なぜ国民の財産である国有地がただ同然で森友学園に売却されたのか。

佐川氏は、不動産鑑定に掛けた価格であるから適正だと述べました。大阪航空局が行った、ごみの撤去費用の見積りを前提とした鑑定です。ところが、その見積りは今やあらゆる面で根拠を失っています。

近畿財務局と大阪航空局が同席する場で口裏合わせでごみを捏造した事実が、音声データによって明らかです。調査を行った業者も、国や学園に求められ虚偽の報告をしたと証言しています。航空局がごみの深さを示す証拠だという写真も、目盛りすら読めない代物です。そのため、航空局の見積りは、十分な根拠が見出せず慎重な調査検討を欠いていたと、会計検査院から指摘されるに至っています。

国交省は、ごみの撤去費用の見積りが正しかったのかどうか、なぜ自ら調査しようとしないのですか。この問題がいまだに解明されないのは、調査、検証をかたくなに拒否する国交大臣の責任ではありませんか。答弁を求めます。

政府・与党からは、政治家らの関与について、疑いが晴れた、首相夫人が関与していないことがはっきりしたなどと国民の意識と懸け離れた発言も聞かれますが、これで幕引きなど到底許されないことを強く主張した上で、法案について質問いたします。

国際観光旅客税は、観光先進国の実現に向けた整備のための財源確保を目的とするといいます。日本の文化や歴史、自然などの魅力が広がり、訪れる外国人が増えることは歓迎すべきであり、何度でも訪れたいと思うような魅力を広げる努力も必要です。問題は、現在進められている施策が本来求められる観光政策の理念に即していると言えるのか、新税は本当に必要なのかという点です。

安倍政権は、訪日外国人客を二〇二〇年四千万人、二〇三〇年六千万人へと目標を掲げ、観光を成長戦略の柱の一つに位置付けました。その中身は、もうけ本位の観光ビジョンであり、大規模開発と規制緩和で、住民生活への配慮なく受入れ体制をひたすら拡充しようというものです。文化財も保護よりもうけを優先する活用を推進し、文化的、歴史的価値を損ない、中長期的に見れば観光資源を失うおそれさえあります。

首都圏空港の国際線を増便するため、二〇二〇年までに羽田、成田で合計八万回の発着枠を拡大するといいます。都心上空の低空飛行ルート、夜間飛行制限の更なる緩和や新滑走路の建設により、周辺住民に、騒音や落下物、事故の危険など、新たな負担をもたらすことをどう考えるのですか。住民や自治体から懸念や反対の声が多数上がっている事実をどう認識しているのですか。

さらに、六月からは民泊まで解禁するといいます。管理人が常駐せず、管理体制もない密室で、殺人事件や麻薬密売の隠れ家に利用されたというニュースが相次いでいます。京都市の民泊通報・相談窓口には悲鳴のような苦情が押し寄せ、一自治体では対応できない状態だといいます。

違法民泊の指導や取締りもままならず、住環境の悪化や火災の危険など、既に住民生活が脅かされています。見切り発車で民泊解禁など、やめるべきではありませんか。

観光立国推進基本法に定める観光の基本理念は、住んでよし、訪れてよしの観光まちづくりです。もうけ優先で大規模開発や規制緩和を推し進め、地域住民が不安や迷惑を感じ、住み続けられなくなるようでは、観光客にとっても魅力が失われてしまいます。住んでよしでこその訪れてよしだと考えますが、政府はこの立場を投げ捨てたのですか。

以上、国交大臣に答弁を求めます。

本法案による新税は、国税としては二十七年ぶりのものです。本来なら、十分な意見集約と議論の上で提案されるべきものです。なぜこれほど拙速に導入を進めるのですか。しかも、新税は、政府自身が無駄遣いの温床になるとしてきた特定財源とされます。なぜ特定財源にしなければならないのか、財務大臣、明確にお答えください。

特定財源による新税の導入を急ぐのは、使い勝手の良い財源を安易につくろうとするからにほかなりません。この間、観光振興の名目で大型開発絡みの予算が増大してきました。新税も、結局、従来型の公共事業を拡大するために使われるのではありませんか。

昨日の国土交通委員会での私の質問に、大臣は、新税がカジノを含むIRの整備に使われる可能性を否定しませんでした。世論調査では、カジノ解禁反対という国民の声が六割、七割に達しています。それは、賭博が刑法で禁じられた犯罪であり、ギャンブル依存症を蔓延させ、青少年にも悪影響を及ぼすからです。

改めて伺います。賭博場のために新税を使うというのですか。国交大臣、明確にお答えください。

なお、出国時に課税するやり方は、国際連帯税の一方式として長年にわたり検討されてきました。国際連帯税は、その財源を温暖化や飢餓、感染症など、地球規模の課題の対策に充てようというもので、超党派の国会議員と市民団体の間で議論が重ねられてきました。今回の新税は、その課税方式だけをこそくにも借用し、国際連帯税の崇高な目的をないがしろにしようとするものであり、多くの市民から怒りの声が上がっています。財務大臣、この声にどう応えますか。

もうけ本位のゆがんだ観光戦略のために拙速な議論で安易に新税を創設しようとするなど、何重にも誤りを重ねるものです。日本の文化や自然を大切にし、住む人も訪れる人も気持ちよく過ごせる観光政策への転換を求めて、質問を終わります。(拍手)

〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕

○国務大臣(麻生太郎君) 山添議員から、森友学園への国有地貸付け、売却に関する決裁文書の書換え、国際観光旅客税について、計六問のお尋ねがあっております。

まず、迫田氏の国会での説明についてのお尋ねがありました。

証人喚問におけます証人の発言についてのコメントは差し控えさせていただきます。

また、国会の運営に関する話につきましては、これは国会でお決めになることだと考えております。その上で、迫田元財務局長につきましては、昨年三月二十四日の参議院予算委員会に参考人として招致され、既に質疑が実施されているものだと承知をいたしております。

次に、決裁文書の書換えの経緯や理由についてのお尋ねがありました。

決裁文書の書換えにつきましては、私から指示をいたした上で、全省挙げて書換えの事実について調査を行い、書換えは昨年の二月下旬から四月にかけて本省理財局によって行われていたことが既に明らかになっております。

さらに、決裁文書の書換えの経緯や目的につきましては、今後、進行中の捜査にも全面的に協力するとともに、財務省として引き続き更なる調査を進め、しっかりと全容を解明をしてまいりたいと考えております。その上で、二度とこうしたことが起こらないよう、信頼回復に向けて取組を行っていくということで職責を果たしてまいりたいと考えております。

次に、決裁文書の書換えに関する事態の重さについての私の認識についてのお尋ねがありました。

決裁を経た公式行政文書につきまして書換えを行うようなことは、極めてゆゆしきことなのであって、誠に遺憾であり、私としても深くおわびを申し上げなければならないことだと度々申し上げさせていただいております。二度とこうしたことが起こらないよう、信頼回復に向けて取組を進めてまいりたいと考えております。

次に、新税創設に当たっての検討についてのお尋ねがありました。

観光財源の確保については、一昨年三月の観光ビジョンや昨年四月の未来投資戦略二〇一七に明記し、観光庁で検討会を開催するなど、有識者や事業者の意見も踏まえつつ、政府内で丁寧に検討を進めてきたところであります。

その後、与党の税制調査会において精力的に御議論をいただいた結果、国際観光旅客税の創設を提案することになったものであり、拙速との御批判は当たらないものだと考えております。

次に、国際観光旅客税を特定財源とした理由についてのお尋ねがありました。

特定財源の制度というものは、従来より、当該財源の使途があらかじめ限定されることにより不必要な支出を招きかねないという指摘がある一方、受益者に直接負担を求めることに合理性があり、受益と負担の関係の明確化を通じて負担についての理解を得やすいというメリットがあります。

今回の国際観光旅客税は、快適に旅行できる環境の整備を始め、高次元の観光施策に充当する財源として、受益を受ける旅行客、旅客に負担を求めるものであり、受益と負担の関係が明確であることから、特定財源としたものであります。

最後に、国際連帯税との関係についてのお尋ねがありました。

国際連帯税は、一般的には、貧困問題、環境問題などの地球規模の問題への対策のための財源確保を目的とした税を指すものと認識をいたしております。課税の対象や税収の使途など、その具体的な検討は進展していないと承知をいたしております。

他方、国際観光旅客税は、観光は成長戦略の柱、地方創生の切り札との認識の下、観光施策の充実を図るための財源を確保する観点から、政府や与党における具体的な検討を経て創設するものであります。(拍手)

〔国務大臣石井啓一君登壇、拍手〕

○国務大臣(石井啓一君) 山添議員にお答えをいたします。

森友学園への国有地売却についてお尋ねがありました。

大阪航空局の見積りにつきましては、これまで御説明しているとおり、当時検証可能なあらゆる材料を用いて行われたものであります。

本件土地につきましては、現に校舎が存置されており、また、現在も森友学園側と土地や存置されている建物の取扱いを含め様々な交渉を行っているところでありますので、直ちに本件土地の地下の詳細な調査を行うことは困難と考えております。

首都圏空港の機能強化が住民などに与える影響についてお尋ねがありました。

国土交通省としましては、急増する訪日外国人旅行者の受入れ、我が国の国際競争力の強化、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックの円滑な開催などの観点から、首都圏空港の機能強化は必要不可欠であると考えております。

一方で、首都圏空港の機能強化に当たっては、落下物や航空機騒音に対する懸念の声などがあることは承知をしております。このため、落下物防止対策基準の策定、義務化、補償の充実などの落下物対策や、防音工事の充実強化などの騒音対策などに取り組んでいるところであります。

こうした取組や機能強化の必要性などについては、住民説明会などを通じて丁寧に説明させていただいているところであります。

今後とも、落下物対策や騒音対策などを着実に実施するとともに、引き続き、住民や関係自治体の方々に丁寧な情報提供を行い、首都圏空港の機能強化について御理解いただけるよう努めてまいります。

民泊についてお尋ねがありました。

住宅宿泊事業法は、急速に拡大するいわゆる民泊サービスについて、必ずしも安全面、衛生面の確保がなされていないことや、騒音やごみ出しなどによる近隣トラブルが発生していることなどに対応するため、一定のルールを定め、健全な民泊の普及を図るものとして制定されました。

同法においては、住宅宿泊事業を行おうとする者に対して、都道府県知事等へ届出を義務付けるとともに、届出住宅への標識の掲示を義務付けることで匿名性を排除しております。

さらに、住宅宿泊仲介業者としての登録を義務付けるとともに、仲介を行うに当たって届出の有無を確認すること等を義務付けるなど、違法民泊の取締り強化に資する様々な仕組みを導入することとしております。

国土交通省としては、住宅宿泊事業法を施行し、これらの制度の運用を開始するとともに、改正旅館業法に基づき違法民泊への取締りを強化することにより、民泊サービスの適正化に取り組む必要があると考えております。

観光政策の基本理念についてお尋ねがありました。

住んでよし、訪れてよしの国づくりは、観光立国の実現に関する施策の基本理念であり、観光立国推進基本法第二条においては、地域の住民が誇りと愛着を持つことのできる活力に満ちた地域社会の持続可能な発展を通じて国内外からの観光旅行を促進することが特に重要であると規定をされております。

国土交通省としては、観光施策はこの基本理念に基づいて実行されるべきものと考えております。明日の日本を支える観光ビジョンの中では、地域の経済や経済の好循環が創出されるといった経済的な側面も盛り込まれておりますが、必ずしもそうした側面だけでなく、例えば、我が国の自然や文化といった豊富で多様な観光資源を誇りを持って磨き上げ、その価値を日本人にも外国人にも分かりやすく伝えていく必要があること、高齢者や障害者等を含めた全ての旅行者が旅の喜びを実感できるような社会を築いていく必要があることなどといったことも盛り込まれており、様々な観点から観光施策の必要性が位置付けられているものと認識をしております。

このため、観光立国の実現に関する施策の基本理念である、住んでよし、訪れてよしの国づくりの考え方は、いささかも揺らぐものではないと考えております。

新税の使途に従来型の公共事業が含まれるのかについてお尋ねがありました。

国際観光旅客税の税収、いわゆる観光財源については、二〇二〇年訪日外国人旅行者数四千万人等の目標達成に向け、第一に、ストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備、第二に、我が国の多様な魅力に関する情報の入手の容易化、第三に、地域固有の文化、自然等を活用した観光資源の整備等による地域での体験滞在の満足度向上の三つの分野に充当する旨を国際観光振興法案第十二条第一項に規定をしております。

また、観光財源は既存施策の財源の単なる穴埋めとすべきではなく、同財源を充当する施策は、受益と負担の関係から負担者の納得が得られること等を基本とすることとしております。

このため、公共事業関係費を含め、これまで一般財源で行っていた既存事業を、観光財源を充当する事業に単に振り替えていくことは困難であると考えております。

いずれにしましても、観光財源の使途につきましては、これまで申し上げた考え方を基本といたしまして、民間有識者の意見も踏まえつつ、中身をしっかり精査してまいりたいと考えております。

国際観光旅客税の使途についてお尋ねがありました。

IRについては、現在、内閣官房において具体的な制度の設計に関する検討を行っている段階であり、IR整備法案もまだ提出していない状況であります。現にIRは存在をしておりませんし、IRをつくるための制度もできていない状況でありますので、現時点では観光財源を充てることはできないと考えております。(拍手)

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