山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2022年・第208通常国会

憲法審査会で、オンライン国会をめぐり、憲法56条1項「出席」に関する意見表明。

要約
  • 憲法審査会で、オンライン国会をめぐり、憲法56条1項「出席」に関する意見表明。 「新型コロナと絡めていたずらに危機感をあおって結論を急ぐべきではない」と述べました。

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
この間、衆参で本会議へのオンライン出席の可否をめぐり、憲法五十六条一項に関する憲法審査会が開かれてきました。
しかし、新型コロナの感染拡大が繰り返す下でも、国会議員の三分の二、参議院の定数でいえば百六十四人が同時に一定期間にわたり国会に参集できない事態は生じていません。衆議院で高橋和之参考人が明確に述べたように、本会議へのオンラインでの出席、表決を必要とする具体的事実はないと言うべきです。
国会のコロナ対策は議院運営委員会で議論が重ねられ、マスクの着用の徹底や委員会室の座席配置の変更など随時行われてきました。科学的知見に基づく適切な対策が必要であり、引き続き議運で対応すべきです。
参議院改革協議会でもオンライン審議が検討項目に挙がっています。憲法審査会で議論する緊急の必要はなく、ましてや憲法五十六条一項の解釈を多数決で確定するなどということは審査会の権限を越えます。
日本国憲法第四章は、国会議員は全国民の代表であるとし、その地位の独立と国会における自由な発言と表決を保障し、本会議について、会議公開の原則の下、議員同士が相互に認識できる議場に出席し、議論を尽くして表決することを要請しています。国民主権と議会制民主主義の大原則です。
衆議院で高橋参考人は、憲法五十六条一項はルールを定めた規定であり、厳格に解釈すべきだと述べ、この規定は会議体を成立させる最低限の要件として、少数者を保護し、あるいは権力の濫用を防止するために置かれたものだと指摘しました。国会も国家権力の一つであり、多数派による立法権行使の濫用、暴走を防ぐ上で、条文解釈は厳格になされるべきです。
当審査会で赤坂幸一参考人は、国会議事堂という場で国民代表の声が出されていることが重要であるとして、特定の事情で議会が物理的に集会できないような場合にのみ例外的ないし限定的にオンライン審議を行うことも議会の形成権に入るだろうと述べました。もっとも、それがどういう場合に生じるかは予見するのが難しく、濫用の懸念については全会一致ルールを併せ考える重要性を指摘しています。
長谷部恭男参考人は、憲法五十六条一項は準則としての性格が濃いとして、オンライン出席が認められるのは、それを認めない限り国会としての最低限の機能をも果たすことができないという例外的な事情が客観的に認定される場合に必要最小限の範囲内のみとすべきだとし、それは誰が見ても本会議に集会できるような状況ではない、多くの人に元々コンセンサスがある場合であろうと述べました。
両参考人の意見は、いずれもオンライン出席を必要とする場面は極めて限られるという前提に立つ慎重なものです。予見し難い事態を軽々に想定すべきではなく、当審査会で現下のコロナ対策と絡めたり、いたずらに危機感をあおったりして、結論を急ぐべきではありません。
新型コロナ対応と憲法に関わっては、臨時国会の召集義務違反に触れざるを得ません。憲法五十三条は、「いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。」としています。ところが、二〇二〇年七月と二〇二一年七月、野党が求めた臨時国会召集を安倍内閣、菅内閣は拒み続けました。赤坂参考人は問題があると言い、長谷部参考人も学界の通説は赤坂参考人が述べたとおりとしました。
国民の生存権が脅かされる中、憲法の明文に反して国会を開こうともしなかったことへの反省もなく、緊急時の国会出席を殊更論じるのは不可解です。コロナ危機に乗じて、権力集中を伴う緊急事態条項の創設に向け、改憲論議を加速する呼び水という疑いすら抱かせます。
今政治に求められるのは、新型コロナ第七波を見据えた対策の強化やウクライナ侵略を受けた更なる物価高騰に備える補正予算を組み、暮らしと経済を支えることです。予算委員会を始め徹底した審議を行うべきであり、憲法審査会を動かすべきではないことを強調し、意見とします。

 
○堀井巌君 自由民主党の堀井巌でございます。
新型コロナウイルス感染症など感染症の全国的な流行、大規模災害などの緊急事態に際し、国会機能を維持していくことは極めて重要と考えます。その観点から、このオンライン出席について、憲法改正をすることなく、憲法五十八条の議院自律権を根拠に議院運営規則の改正などによって実現していく、することが可能というふうな意見があることについて、私は一定の理解をいたします。
ただし、議院自律権の範囲についてはおのずから制約があると考えます。
オンラインでの出席や投票を認めるか否かについては、重要なことは国民の理解を得ることだと思います。したがって、本来であれば憲法改正を行って、憲法上明確にしていくことが望ましいのではないかとも考えております。また、オンライン会議の規定のみならず、そもそも緊急事態における統治機構の運用を規定する緊急事態条項の規定を憲法において整備していくことが望ましいと考えております。
なお、オンラインの活用についての考察を進めるに当たっては、ふだんから議院運営全般にわたって情報通信技術の積極的な活用を行い、技術的な課題も含めて習熟しておくことが重要と考えます。例えば、政府側の出席者や参議院事務局職員の出席については、5Gを活用した高精度な動画配信を用いればオンラインによる新たな取組も可能ではないかと考えます。
ところで、去る七日、報道によれば、日本共産党の志位委員長が党本部での会合で、急迫不正の主権侵害が起こった場合には、自衛隊を含めてあらゆる手段を行使して国民の命と日本の主権を守り抜くのが党の立場だとおっしゃられたとの報道がございました。
私は、厳しい安全保障環境の中で我が国の平和を守り抜くためには自衛隊の存在が不可欠と考える立場であり、私はこの発言を歓迎したいと思っております。
そこで、山添委員に質問させてください。
現行憲法においてこの自衛隊の位置付け、どのようにお考えか、教えていただければと存じます。
○山添拓君 御質問いただきましたので、お答えいたします。
日本共産党は、憲法九条と自衛隊とは矛盾する存在だと考えています。そのため、憲法九条の完全実施に向けて段階的に進んでいくべきだという考えを持っています。
そして、その上で、急迫不正の侵害が万が一起きた場合には、現在の状況の下では、自衛隊を含むあらゆる手段によって国民の命と主権を守っていくという考えを併せて持っています。このことは、二〇〇〇年に行いました我が党の第二十二回の党大会で既に表明してきた考え方であります。
ただ、急迫不正の侵害によって何らかのその侵略を受けるということになれば、これは国民の側に何らかの被害を生じるということになりますので、私たちは、そういう事態が生じないようにするということが政治の役割であって、そのために平和外交を尽くしていくということを重ねて強調してきております。
ですから、自衛隊をいつでも活用するとか、あるいはそのために軍事力を増強するということを方針として持っているわけではありません。戦争させない、侵略を受けさせないための平和外交の努力が最も大事だと考えています。
○堀井巌君 ありがとうございました。
我々議員は、多様な国民の意見をこのように代表いたしております。本憲法審査会での議論を通じて、憲法の様々な論点について国民的な理解が更に深まることを期待し、私の意見といたします。
山添先生、ありがとうございました。

 
○会長(中川雅治君) 山田宏君。
○山田宏君 ありがとうございます。
まず、五十六条につきましては、先ほど我が党の山下委員が発言されたように、合憲、違憲のいろいろな議論はあるんでしょうけれども、この間の参考人の意見も基にしながら、今、白委員の方からもお話がありましたように、その長谷部先生の範囲内でどこまでできるのかという、そういうことをまずこの院できちっと定めていくということがまず大事だと。いつ何が起きるか分からないですから。そうですよね、はい、ありがとうございました。それを御提案したいと思います。
それから、私、三月の二十三日に自衛隊を憲法に明記すべきだという点で発言をさせていただきました。先ほど、我が党の堀井委員の方から山添委員の方に御質問がございました。その点について、もう一つだけ山添委員の方にお聞きをしておきたいと考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
この問題は今メディアでも多く取り上げられている問題でございますので、ちょっと憲法上どうなのかなという点でお話をしておきたいんですけれども、まず、山添委員のお話をお聞きしますと、現在の自衛隊というのは憲法九条に合わないということは、違憲という認識でよろしいんでしょうか。
○山添拓君 憲法と矛盾する存在だということを綱領上も掲げています。憲法九条の、戦力を持たない、武力を放棄したという憲法九条とは整合しないものだと考えます。
○山田宏君 憲法の議論をしているので、違憲なのか合憲なのか、どっちなんでしょう。
○山添拓君 憲法九条と自衛隊とは矛盾する存在だというのが私たちの党としての公式見解です。それを重ねて申し上げていますので、憲法とは反する存在だということですよ。
○山田宏君 ちょっとよく分からないんだけれども。
仮に、ちょっと今日、川崎法制局長、突然でちょっと、法制、法律の専門家の御意見をお聞きしておきたいんですが、この違憲、仮に違憲だとすると、国の中にある仮に違憲の存在が行った行為というものは、これはやっぱり違憲なんですかね。
つまり、この自衛隊が、仮に今回のウクライナのような状況に日本が陥ったときに、自衛隊員が相手の兵士を殺害するというような行為が起きた場合、仮にこの自衛隊が違憲の存在だということであった場合、この自衛隊員の行為というのはどのように法的には判断されるんですか。
○法制局長(川崎政司君) なかなか難しい問題でございますので、明確なお答えをすることは難しいと思いますが。
まず、違憲の行為、違憲の存在の行為をどう評価するかという問題でございますが、違憲の存在である以上は、それは行為についてもその憲法との関係が問われると。ただ、それが直ちに無効になるかどうかというのは分かりません。いろいろな状況の下での判断になると思います。
それから、今自衛隊員の話がございましたが、もうそうなってまいりますと、国際法との関係とかいろんな問題も出てきますので、憲法の関係だけで論じられるかどうかという問題もあるので、そこはなかなか明確なお答えはできないというふうに思います。
○山田宏君 今お話がありましたように、大変、こういった場合、現実考えると、自衛隊員のそれぞれの行動が法的に極めて不安定な状況に置かれるというふうに今お答えをお聞きをいたしました。
そういったことを考えますと、そういう急迫不正の外国からの侵略に対して、きちっと、やはり国を守っていくために自衛隊を、又は自衛権の存在というものをきちっと法的に明記をしていくということが必要だということを改めて申し上げて、私の発言を終えたいと思います。
○会長(中川雅治君) 山添拓君。
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
今日は、憲法五十六条一項の出席に関する議論を中心として意見交換を行うという趣旨での審査会ですが、その中で、憲法五十六条一項とは直接は関係しない緊急事態条項をめぐる議論が行われたり、あるいは憲法九条に関わって私にも質問がありました。これは、本来中心的に議論の課題とし、また先週の参考人質疑も受け、今日の法制局や事務局長からの説明も受けた審査会の在り方とはそぐわないものだと思いますが、質問を受けたこともありますので、改めて九条と自衛隊について、我が党としての、また私の意見を表明しておきたいと思います。
憲法九条と自衛隊とは矛盾する存在だと考えます。ですから、軍縮を経て段階的に解消を図っていくというのが私たちの立場です。そして、それは、勝手に進めるということではなく、それぞれ国民合意を経て進めていくべきだということも表明してきました。今すぐ自衛隊をなくそうとは考えていません。そして、憲法九条も命も守るという立場で、そのためには、やはり外交努力を尽くし、武力衝突に至らないようにすることが政治の役割だというのが我が党の基本的な立場です。
その上で、九条に自衛隊を明記するべきだという意見が述べられました。今、自民党などが主張しているこの九条への自衛隊明記は、そこで言われている自衛隊というのは、安保法制の下で集団的自衛権を行使する自衛隊です。海外派兵を大幅に拡大している自衛隊です。さらに、今、岸田政権が検討を進めている敵基地攻撃能力の保有によって先制攻撃まで可能にしていく、専守防衛さえ投げ捨てようというものであります。
こうした自衛隊を憲法九条に明記するということは、国民の命と暮らしを守るどころか、ますます日本とアジアの平和環境を脅かすものだと言わなければなりません。
加えて、最後に申し上げたいのは、こうして憲法審査会が開かれることになれば、初めはコロナを理由にしてオンライン国会、オンラインでの出席が必要だ、そういう議論を開始しようとし、さらには緊急事態条項に進み、あるいは九条だと言い、次々と改憲項目のすり合わせに向かっていくということが今日の審議を通じても明らかになったと思います。
今国民の多くが、政治の優先課題として憲法改正を望んでいない中、やはりこの審査会は動かすべきではないという意見を述べて、私の意見といたします。

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