山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2023年・第211通常国会

政府安全保障能力強化支援(OSA) 紛争助長のおそれ 撤回せよ/防衛省設置法一部改正案に対する反対討論

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
防衛省設置法改正案は、安保三文書に基づき、自衛隊のサイバー攻撃対処や統合防空ミサイル防衛能力を強化する体制づくりを進め、米国の軍事戦略に日本を一層深く組み込むものであり、反対です。北朝鮮の弾道ミサイル発射はもちろん許されませんが、軍事的対抗を強めるのでは悪循環に陥ります。平和外交の努力こそ求められます。
そこで、外務大臣に伺います。政府のODA、開発協力大綱は、非軍事的協力による開発協力を掲げ、それが平和国家としての我が国に最もふさわしい国際貢献の一つであるとしてきました。非軍事的協力が最もふさわしいとしてきたのはなぜですか。

○外務大臣(林芳正君) ODAは開発途上国の経済社会開発、これを目的とするものでございます。現行の開発協力大綱において、軍事的用途への使用を回避するいわゆる非軍事原則を定めておりまして、今回の新たな開発協力大綱案においても本原則を堅持する方針を明らかにしたところでございます。

○山添拓君 いや、これまでなぜそれが最もふさわしいとしてきたのかということを伺っています。

○国務大臣(林芳正君) 少しちょっと簡単に申し上げ過ぎたかもしれませんが、ODAは開発途上国の経済社会開発、これを目的とするものでございます。まさにそういったものであるという趣旨に鑑みて、先ほど申し上げましたように非軍事原則を定めておるところでございます。

○山添拓君 余りはっきりしませんけれども、平和国家としての我が国に最もふさわしいと、こういう言い方しているわけですから、やはりそれが我が国らしい国際貢献だという位置付けだったかと思うんですね。その国際協力の在り方を大きく変えるのが、ODAと全く別に進めようとしているOSA、政府安全保障能力強化支援です。
資料もお配りしておりますが、同志国の安全保障上の能力や抑止力の強化に貢献し、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出を目指すといい、開発途上国の軍等が裨益者、まあ受益者となる協力だとしています、軍事支援ですね。
同志国の定義はないのだと政府自身が認めておりますが、今年度の援助国はフィリピン、マレーシア、バングラデシュ、フィジーの四か国だと、先ほどもお話しがありました。なぜ、この四か国なのかという先ほどの羽田議員の質問に対しては、総合的に考慮したという答弁がありました。この実施方針を見ますと、国際紛争との直接の関連が想定し難い場合に行うとされています。しかし、フィリピンとマレーシアは、南シナ海で中国と領土紛争を抱えています。
軍事支援はこの紛争を助長するのではありませんか。

○外務省 大臣官房審議官(石月英雄君) 本件支援におきましては、平和国家としての歩みを引き続き堅持するとの観点から、我が国の安全及び平和、地域の、我が国及び地域の平和と安定を実現しつつ、国際社会の平和と安定及び繁栄の確保に積極的に関与し、平和貢献、国際協力の積極的な推進を進めるという観点から定められてある防衛装備、防衛装備移転三原則及び同指針に基づいて行うものでございます。

○山添拓君 軍事支援が、フィリピンやマレーシアで既に抱えている中国との領土紛争、助長することになりませんかと伺っています。

○政府参考人(石月英雄君) お答え申し上げます。
本件支援につきましては、国際紛争と直接関連が想定されない分野に限定して行うということを考えておりまして、具体的には海上監視ですとか、そういった分野を想定して行うことを考えているところでございます。

○山添拓君 直接関連しないということは、間接的には関連し得るということですか。

○政府参考人(石月英雄君) お答え申し上げます。
本件支援につきましては、先ほどから申し上げているとおり、平和国家としての歩みを引き続き堅持するという観点から、防衛装備移転三原則及び同指針の枠内で行うこと、また、先ほど申し上げました国際紛争と直接関連が想定されない分野について支援を行うということ、さらに、国連憲章等の規定を守った形で行うこと、こういったことを定めてその枠内で行うことを想定しております。

○山添拓君 お答えがありません。
バングラデシュは、一帯一路構想の一つの焦点であります。中国が潜水艦や戦車、戦闘機など兵器を供給してきました。フィジーのある南太平洋は中国が軍民両用の港湾や飛行場の開発に関心を示し、二〇一七年には中国軍系の企業がバヌアツに埠頭を建設しています。
政府が検討する四か国への軍事支援は、いずれも対中国への緊張関係を高めることになりかねません。それは、中国に対して外交上あれこれ物を言うのとは全く異なるメッセージを与えることになると思うんですね。
今お話があったように、いろいろ手だてを取るんだと、実施方針にもそのように書いています。提供した資機材や整備するインフラについて、相手国に目的外使用や第三者移転に係る適正管理の確保を義務付ける、国連憲章の目的及び原則に適合した形で使用することを義務付けるなどとしています。
これはどうやって義務付けるんでしょうか。義務違反を認めた場合にはどうするんですか。

○政府参考人(石月英雄君) お答え申し上げます。
OSAの実施に際しては、実施方針に定めた事項が遵守されるよう、支援実施の際に締結する国際約束において、目的外使用、第三者移転に係る適正管理や国連憲章の目的及び原則に適合した形での使用等を相手国に義務付ける考えでございます。その上で、在外公館とも連携しつつ、適切なモニタリングを行っていく考えでございます。

○山添拓君 OSAは無償の資金協力とされますので、一旦実施すれば、レーダーであれ警戒艇であれ、その管理と運用は相手国に委ねることになるでしょう。仮に義務違反の使用を確認できたとしても、その兵器を返せですとか、あるいは整備したインフラを取り壊してくれなどということにはならないんじゃありませんか。

○政府参考人(石月英雄君) お答え申し上げます。
支援の実施に際しては、相手国に必要な協力を義務付ける等の対応を行った上で、在外公館とも連携しつつ、適切なモニタリングを行っていく考えであるところでございます。
例えば、在外公館職員が現地視察に行く等して、供与した機材の使用状況等を確認することを想定しております。その上で、違反が判明した場合には、是正の要求を行った上で、場合によっては以後の支援を停止することも含め、個々の事例に応じて厳正に対処する考えでございます。

○山添拓君 今、以後の支援を停止するというお話がありましたが、つまり、既に行った支援については、その後仮に義務違反があったとしても、何らかの対処をすることは難しいだろうということを既におっしゃっているんだと思うんですね。
日本政府は、ミャンマー政府に対して、二〇一七年から一九年にかけてODAで旅客船三隻を供与しました。ところが、二一年二月、軍事クーデターが起きました。二二年九月十三日、ラカイン州政府の運輸大臣が、内陸水運公社の当州の部署に、日本政府が供与した旅客船、キサパナディ1とキサパナディ3をシットウェ―ブティーダウン間の航行に向け準備するよう指示し、翌十四日、この二隻を使って百人以上の軍人と物資を移送したといいます。
開発協力大綱の軍事的用途への使用の回避原則、非軍事原則ですね、これに反する軍事利用がされたのではありませんか。

○外務省 大臣官房審議官(日下部英紀君) 御指摘の案件でございますけれども、ミャンマーの水上交通輸送の能力向上のため、ミャンマー内陸水運公社に対して旅客船を供与したという案件でございます。二〇一六年に日・ミャンマー政府間で交換公文を締結し、二〇一七年に二隻の中古船、二〇一九年に一隻の新造船がミャンマー側に引き渡され、ミャンマー国民の通勤等の交通に利用されてきたものであります。
昨年九月、当該船舶がミャンマー国軍により兵士や武器の輸送に利用されているとの報道があったことを受けて、直ちに在ミャンマー大使館からミャンマー側に事実確認と仮に事実であった場合の対応、すなわち即時利用停止や再発防止の申入れを行うとともに、その後も累次にわたる事実確認等を現在行っているところでございます。

○山添拓君 ラカイン州の警察長と運輸大臣が同州の首相代理として運輸・通信大臣に送った文書で、二隻の旅客船が軍事目的に利用されたということを報告しております。NGOのヒューマン・ライツ・ウォッチが外務省に問い合わせたのが昨年九月ですね。確認をしておりますという答弁でしたが、半年たってまだ確認できていないんですか。

○政府参考人(日下部英紀君) 昨年九月の現地報道を受けまして、在ミャンマー大使館からミャンマー側に繰り返し事実確認を行っているところでございますけれども、事案発生の場所が大使館所在地のヤンゴンから離れており、治安状況が悪化していたラカイン州であったこともあり、事実関係の確認に時間を要しているところでございます。できる限り早期の事実確認に努めてまいりたいと考えております。

○山添拓君 ですから、確認できていないわけですよね。ODAですらこれですよ、非軍事の。交通の利便性、航行安全の向上を目的としたODAによる旅客船です。既にこうした事態が起きているわけですね。OSAでも目的外利用や国連憲章違反、そういう使われ方を、その可能性を否定はできないんじゃありませんか。

○政府参考人(石月英雄君) お答え申し上げます。
先ほど申し上げたとおり、OSAの実施に際しては、実施方針に定めた事項が遵守されるよう、支援実施の際に締結する国際約束において、目的外使用、第三者移転に係る適正管理、国連憲章の目的及び原則に適合した形での使用等を相手国に義務付ける考えでございます。その上で、在外公館とも連携しつつ、適切なモニタリングを行っていきたいと考えております。

○山添拓君 これはにわかには到底信じ難いですね。OSAの実施方針は、防衛装備移転三原則とその運用指針の枠内で実施するとしています。二〇一四年に、武器輸出禁止三原則を投げ捨て、解禁した兵器輸出であり、これ自体容認ができません。
しかも、この間政府は、ウクライナ侵略を受け、運用指針を変え、紛争当事国をも支援対象に加えました。自民党と公明党は、統一地方選挙の後、殺傷力のある武器輸出まで可能にするための更なる変更の議論まで計画しているといいます。
三原則の枠内と、こうされていますが、三原則と運用指針が変わればOSAの内容もどんどん拡大する。おととい与党議員からは、小さく産んで大きく育てるというような発言までありましたが、外務省もそういうお考えなんですか。

○政府参考人(石月英雄君) お答え申し上げます。
本件支援に当たりましては、平和国家としての歩みは引き続き堅持するという観点から、防衛装備移転三原則及び同運用指針の枠内で行うこととしているところでございます。

○山添拓君 ですから、その枠内が変われば当然広がり得るわけでしょう。

○政府参考人(石月英雄君) お答え申し上げます。
防衛装備移転三原則及び同運用指針の改定については今後議論がなされるところであり、現段階で予断を持って申し上げることは困難でございます。

○山添拓君 これはつまり、OSAの対象も無限定になっていく、護衛艦や戦闘機、弾薬まで可能ということになりかねないです。殺傷力のあるなしで線引きは困難だという発言もありましたから。
日本のODAは、長年軍事支援から距離を置くことで多くの国で中立的と見られ信頼を築いてきた。だからこそ、日本のNGOは欧米各国が入れないような地域でも活動を許される、そういうケースがあった。OSAで日本のイメージが変質し、NGOの活動にも影響を及ぼしかねないと、これは日本国際ボランティアセンターの今井高樹代表理事の発言です。
外務大臣に伺いますが、この実施方針を決めるに当たって、NGOや学識経験者など専門家の意見を聞かれたんですか。

○国務大臣(林芳正君) この同志国の安全保障能力、抑止力の強化を目的とする本支援につきましては、我が国の平和国家としての歩みを引き続き堅持しつつ、同志国の安全保障上のニーズに応えていくことを大前提としており、今般、そのための実施方針を定めたものでございます。
この目的が達成されますように、OSAの主管官庁である外務省で原案を作成いたしまして、国家安全保障局や防衛省を始めとする関係省庁とも協議を行った上で、国家安全保障会議で決定に至ったものでございます。

○山添拓君 専門家の意見を聞いたかどうかなどについては御答弁がありませんでした。
このOSA実施方針の決定過程については、極めて不透明だと思います。その記録を当委員会に提出するよう求めたいと思います。委員長。

○委員長(阿達雅志君) ただいまの件につきましては、後刻理事会において協議をいたします。

○山添拓君 我が国にとって望ましい安全保障環境の創出といい、国際協力まで軍事一辺倒で進めることは許されないと考えます。
OSAの実施方針は撤回すべきだということを申し上げて、質問を終わります。

―――

○山添拓君 日本共産党を代表し、防衛省設置法改正案に反対の討論を行います。
自衛官の定数変更は、岸田政権が閣議決定した安保三文書に基づき、自衛隊のサイバー攻撃対処や統合防空ミサイル防衛能力、IAMDを強化するものです。
まず、自衛隊サイバー防衛隊を約百五十人増員する計画は、兵器のネットワーク化が進められる下で、自衛隊が米軍と共同軍事行動を取るための基盤の維持強化を図るものです。
次に、イージスシステム搭載艦の導入に向けた海上自衛隊百四十人の定員化は、破綻したイージス・アショア配備計画の反省もなく、巨額の費用を掛け転用するための体制整備です。米国のIAMD計画の一翼を担い、ミサイル防衛と敵基地攻撃を一体に米軍の軍事作戦を補完するものです。
いずれも、米中の覇権争いが激化し、軍事的対立を強めようとする中、米軍が圧倒的優位を維持強化しようとする軍事戦略に日本を一層深く組み込むものにほかなりません。
地方防衛局の所掌事務の追加は、二〇二二年十二月に合意された日米間の相互政府品質管理に係る取組に基づき、米国からの有償軍事援助、FMS調達で日本が品質管理費用の減免を受ける代償として、従来は米国防総省が職員を派遣して実施していた在日米軍の装備品等の調達に係る品質管理業務を肩代わりするものです。
これにより、FMS調達額を年間二十億円程度削減できるといいますが、安保三文書に基づく二三年度予算は、FMS調達額を前年度の四倍以上となる一兆四千七百六十八億円も計上しています。空前の大軍拡こそ中止すべきです。
平和な東アジアのために今行うべきは、軍事的対抗を強め対立をあおることではなく、緊張緩和のための平和外交の実践であることを強調し、討論といたします。

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