山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2023年・第211通常国会

企業に莫大な利益保証 軍需産業支援法案 本会議で追及

○山添拓君 日本共産党を代表し、防衛装備品基盤強化法案、すなわち軍需産業支援法案について質問します。
岸田政権は、安保三文書に基づき憲法違反の敵基地攻撃能力保有を解禁し、長射程ミサイルの開発や量産など、五年で四十三兆円もの大軍拡を進めようとしています。本法案は、軍需産業を防衛力そのものと位置付け、生産・技術基盤を強化する、大軍拡実施法の一つにほかなりません。
三文書の改定に向けて政府が設置した有識者会議の報告書は、軍需産業について、政府だけが買手である構造から脱却し、海外に市場を広げ、国内企業が成長産業としての防衛部門に積極的に投資する環境をつくることが必要と唱え、防衛力整備計画は、武器輸出について、販路拡大を通じた防衛産業の成長性の確保にも効果的であるなどとしています。
政府は、軍需産業を成長産業にしたいのですか。国内軍需産業の販路開拓のために武器輸出を拡大していくつもりですか。
二〇一六年一月七日の参院本会議で、当時の安倍総理は、武器輸出を国家戦略として推進するといったことは全く考えておりませんと答弁しました。ところが、国家安全保障戦略は、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出などといい、官民一体の武器輸出を文字どおり国家戦略としています。安倍氏の答弁を百八十度転換するものではありませんか。そもそも海外で兵器を売り歩くことが、どうして我が国にとって望ましい安全保障環境の創出に結び付くのですか。
二〇一四年に閣議決定された防衛装備移転三原則とその運用指針は、輸出の対象を救難や輸送など五分野に限定し、殺傷能力のある兵器については、米国など安全保障で協力する国との共同開発や生産に限っています。
一方、与党間では、殺傷能力のある兵器を含めて輸出範囲を拡大する協議が行われています。本法案で支援する武器輸出も、三原則の運用が変われば、それに応じて内容が変わるのではありませんか。与党協議中を理由に答弁を拒み、採決後に大幅に拡大しようとするのは、国会審議を愚弄するものであり、許されません。
以上、防衛大臣の答弁を求めます。
自民党の昨年四月の提言は、ウクライナを例に挙げ、国際法違反の侵略を受けている国に幅広い分野の装備を渡せるよう政府に検討を求めました。しかし、日経新聞の二月の世論調査では、ウクライナに武器を提供する必要はないとの回答が七六%に上っています。
来日したゼレンスキー大統領が期待を述べたのは、戦後復興における日本の技術でした。岸田総理自身、三月にウクライナを訪問した際、日本ならではの支援を続けると表明しています。憲法九条を持つ日本は、国際紛争の助長を回避する立場で、あくまでも非軍事の人道、復興支援に徹するべきです。答弁を求めます。
政府は、長年、武器輸出を禁止してきました。外務省のホームページには、現在も、武器の輸出については、平和国家としての我が国の立場から、それによって国際紛争等を助長することを回避するため慎重に対応してきたと掲げています。これが、政府の従来の認識だったのではありませんか。
軍需産業を守るためといい、平和国家の立場も国是というべき武器輸出禁止もないがしろにするのは本末転倒ではありませんか。
以上、外務大臣の答弁を求めます。
本法案は、自衛隊の任務遂行に不可欠な兵器を製造する企業が製造ラインの強化や事業譲渡を行う場合、政府がその費用を直接負担することとしています。任務遂行に不可欠かどうかは、いかなる基準で判断するのですか。自衛隊のあらゆる装備が任務遂行に不可欠となりかねないのではありませんか。また、補助金や助成金ではなく全額政府が負担するのはなぜですか。
兵器や部品の製造企業への貸付けについて、政策金融公庫が配慮することとしています。どのような融資条件を想定しているのですか。通常の中小企業融資を受けられないような場合であっても配慮するという意味ですか。なぜ軍需産業だけは特別扱いで融資の配慮を求めるのですか。
様々な支援の手を打っても手段がない場合、国が製造ライン等を買い取る国有化の仕組みまで盛り込まれています。戦前、戦中の工廠、国営軍需工場の復活につながるとの批判をどう受け止めますか。
国有化した製造ライン等は別の企業に譲渡するといいます。しかし、そもそも事業譲渡による買手が付かなかった場合に次のステップとして認められるのが国有化であり、簡単に譲渡先が見付かるとは思えません。いつまで国有を続けるのか期限はありますか。管理運営を行う企業が仮に現れたとしても、長期にわたり国有民営の状態が続きかねません。赤字の兵器製造ラインを国がいつまでも保有し続けるのですか。お答えください。
背任、天下り、談合、水増し請求、さらには不祥事による指名停止中の受注など、防衛省と軍需産業による不正は枚挙にいとまがありません。
旧防衛施設庁が、職員とそのOBらの主導で天下りの受入れ具合を考慮して有利な発注を行う官製談合事件を起こし廃止されたのは二〇〇七年のことです。官民の癒着が厳しく批判されたのを受け、公共調達の適正化に関する財務大臣通達が出され、防衛調達も、真にやむを得ないものを除き一般競争入札など競争性のある方式によることとされました。この経過を大臣はお忘れですか。
防衛省はその後一転して随意契約を拡大、二〇一五年には、日本経団連が防衛産業政策の実行に向けた提言で随意契約の活用を求め、防衛省もその期待に応じてきました。
本法案は、競争入札どころか、特定の兵器製造企業を政府が直接支援し、場合によっては施設を国有化した上で特定の企業に管理運営を委ねようとするものであり、官民の癒着が構造的に懸念されます。汚職や腐敗を繰り返す危険は従来以上に高まるのではありませんか。
本法案は、防衛省と契約する企業やその下請企業の従業員に秘密保全義務を課し、漏えいした場合は一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金を科す規定を設けます。現在でも、契約上の秘密保持義務を負わせ、違反に対して違約金が予定されています。防衛省は何件の違反事例を確認していますか。それはどのようなケースでしたか。契約上の義務では足りず、刑事罰の対象となる法律上の義務とするのはなぜですか。
本法案は、防衛大臣が指定する秘密を取り扱う従業員の氏名、役職その他の防衛大臣が定める事項について、防衛大臣に報告する義務を定めています。防衛大臣が定める事項とは何ですか。病歴や信用状態、思想や交友関係などを経営者にチェックさせ、報告を求めるなら、プライバシーの侵害ではありませんか。報告事項の回答に応じない従業員について、解雇や配置転換、賃下げなど、労働者に不利益が及ぶことはないと断言できますか。
以上、防衛大臣の答弁を求めます。
安保三文書と本法案は、企業にも従業員にも軍需産業への一層の適応を求め、それに応じる場合には至れり尽くせりの支援メニューを用意し、空前の大軍拡で莫大な利益を保証しようとするものです。
一方、今年度予算では、中小企業予算や農業予算が連続して削減されました。社会保障費も削られ、国立病院や年金の積立金まで軍事費に充てられようとしています。国防は最大の福祉などと言う与党議員がおりましたが、暮らしの予算を削り軍事費に充てるのは言語道断です。
政治が行うべきは、戦争を起こさせないために平和外交を尽くすことです。軍事に軍事で対抗し、経済と産業までゆがめるなど断じて許されないことを指摘し、質問といたします。(拍手)

〔国務大臣浜田靖一君登壇、拍手〕

○防衛大臣(浜田靖一君) 山添拓議員にお答えいたします。
初めに、防衛装備移転の推進についてお尋ねがありました。
まず、御指摘の二〇一六年一月七日の参議院本会議における安倍元総理の答弁は、防衛装備移転の推進そのものを否定したものではないと考えております。
また、防衛力整備計画にあるとおり、防衛装備移転は、あくまで防衛産業の成長性の確保にも効果的ということであり、防衛産業を成長産業にし、販路を開拓するために推進するものではありません。
その上で、国家安全保障戦略に記載のとおり、防衛装備移転は、特にインド太平洋地域における平和と安定のために、力による一方的な現状変更を抑止して、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出等のための重要な政策的な手段となると考えております。
次に、防衛装備移転三原則等の見直しについてお尋ねがありました。
防衛装備移転三原則や運用指針を始めとする制度の見直しに係る具体的な内容については何ら決まっておらず、予断を持ってお答えすることは困難であります。
その上で、我が国の政策については、国民の皆様の御理解を得ることは重要であると考えており、国会における質疑などを通じて適切に説明してまいります。
次に、政府による財政上の措置についてお尋ねがありました。
任務遂行に不可欠かどうかは、それが欠けることで自衛隊が任務を遂行するのに支障が生じるかどうかで判断することを想定しています。防衛省が直接負担する費用は防衛装備品の安定的な製造に必要な経費を支払うものであり、政府が負担することが適切です。
次に、日本政策金融公庫による貸付けの配慮についてお尋ねがありました。
防衛産業は、我が国の言わば防衛力のそのものであり、その事業が安定的に行われることが必要であることから、今般、防衛省は、金融面からの支援策を講じることとしております。
日本政策金融公庫における配慮は、この政策の趣旨を踏まえ、特に中小・小規模事業者に寄り添った丁寧な対応を取られるよう規定したものであり、防衛産業の特有の長期資金の需要に応える融資制度の創設についても公庫や関係当局と議論しているところです。
次に、国による製造施設等の保有についてお尋ねがありました。
国が取得するのは製造施設、土地、整備に限られており、当該施設で装備品を製造する事業主体はあくまで民間企業です。従業員の確保や管理も民間企業が自身で行う必要があり、民間企業そのものを国有化するわけではなく、御指摘は当たりません。
また、製造施設等の国による保有に係る年限は本法律で規定しておりませんが、取得して、製造施設等について、国は早期譲渡に努めることとしており、民間の事業者が自ら製造施設等を保有して製造等が行われるよう、様々な取組を通じ、防衛事業の魅力化を図ってまいります。
次に、公共調達適正化に係る入札についてお尋ねがありました。
公共調達については、競争性及び透明性を確保することが必要であり、国民から不適切な調達を行っているのではないかとの疑念をいただかれることがあってはならないため、平成十八年に財務大臣より各省庁に対して、公共調達の適正化に関する通知が発出されています。その中で、原則として一般競争入札による調達を行うものとするとされた上で、競争性及び透明性を担保するなどして、契約相手方が一者に限られた場合には随意契約も認められており、防衛省においてもこの通知にのっとった調達を実施しています。
次に、法案が汚職や腐敗を引き起こすとのお尋ねがありました。
防衛省は、御指摘の公共調達適正化に関する通知を含む法令にのっとった適正な調達実施をしており、今後もそのように実施していくことは当然です。
今般、本法律案は、我が国防衛を全うするために力強く持続可能な防衛産業の構築が不可欠であるとの考えから策定されたものです。規定されている施策は、競争力の前提となる公平性、公正性に配慮しつつ実施する所存であり、同時に、予算審議等を通じた国会の関与や実施状況の開示も確保されています。そのため、汚職や腐敗の危険が高まるとの御指摘は当たりません。
次に、装備品等秘密の罰則についてお尋ねがありました。
近年、安全保障環境が厳しさを増す中、サイバー攻撃の脅威などのリスクや諸外国との装備品等の共同開発の進展に伴い、これまで以上に装備品等の情報管理の徹底が必要となっています。
したがって、今般、装備品等に関する情報を取り扱う契約事業者の従業者に対しても守秘義務を法定化した上で、故意に情報を漏えいした場合の罰則を設け、保全の強化を図ることとしたものです。
なお、情報漏えいに対する違約金については、これまで対象となった事業者はございません。
最後に、従業者情報の確認についてお尋ねがありました。
現在、契約事業者からは、防衛省との契約に基づいて秘密を取り扱う従業者の氏名、生年月日、所属する部署、役職といった情報を提出いただいているところであります。今回の法案においては、この枠組みを踏まえつつ、装備品等秘密を取り扱う業務に就く前に必ず従業者本人から同意をいただくこととしており、個人の権利を尊重して対応してまいります。(拍手)

〔国務大臣林芳正君登壇、拍手〕

○外務大臣(林芳正君) 山添拓議員にお答えをいたします。
日本のウクライナ支援についてお尋ねがありました。
日本は、ロシアによる侵略開始直後から、ウクライナ及び周辺国等に対して、人道、財政、食料、復旧復興の分野で総額七十六億ドルの支援を表明し、着実に実施してきております。G7広島サミットの機会に行われたゼレンスキー大統領との首脳会談においても、岸田総理大臣から、表明済みの支援を着実に実施していく旨述べ、ゼレンスキー大統領からも深甚なる謝意が示されたところであります。
長期的な復旧復興支援については、今後もウクライナ側のニーズを踏まえ、日本の持つ経験や知見を活用していくことが重要です。地雷対策、瓦れき除去、電力等の生活再建、農業、民主主義、ガバナンス強化等の分野で、機材供与を含む日本らしいきめの細かい支援をできるだけ迅速に行っていく考えです。
次に、防衛装備移転についてお尋ねがありました。
武器輸出三原則等では、平和国家としての我が国の立場から、国際紛争等を助長することを回避するため、慎重に対処することを基本としていました。その結果、実質的には全ての地域に対して輸出を認めないこととなったため、政府は、個別の必要性に応じて例外化措置を重ねてきました。
こうした中で、新たな安全保障環境に適合するよう、それまでの例外化の経緯を踏まえ、包括的に整理をし、二〇一四年に防衛装備移転三原則を定めました。その中でも、平和国家としての基本理念は引き続き堅持していくこととしています。(拍手)

○議長(尾辻秀久君) これにて質疑は終了いたしました。

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