山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2023年・第211通常国会

軍需産業支援法案に関する参考人質疑

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
参考人の皆さん、今日はありがとうございました。
尾上参考人にまず伺いたいと思います。
航空自衛隊の御出身でもあるということで、是非御所見をと思いますが、安保三文書では、統合防空ミサイル防衛能力、IAMDの強化がうたわれています。ネットワークを通じて、各種のセンサーやシューターを一元的に、かつまた最適に運用できる体制を確立していくということがうたわれております。これは米軍が世界的にも求めてきているものかと思います。
日本がこのIAMDを構築することは、インド太平洋地域の安全保障に関して、アメリカにとってはどのような意味があるものだとお考えでしょうか。

○参考人 元航空自衛隊補給本部長・空将(尾上定正君) ありがとうございます。
IAMDの強化というのは、抜本的に防衛力を強化をする七つのうちの重要な二番目の柱だったと思います。
日本を取り巻く厳しい安全保障環境を見たときに、やはり一番重大で深刻な懸念というのは、北朝鮮の核開発、ミサイル発射だと思います。ここ一、二年の北朝鮮のそのミサイル発射の数というのは異常なぐらい増えておりますし、それからまた、その内容も、極超音速ミサイルを含んだり、あるいは軌道を変更するようなミサイルも撃っていると。運用能力を高めるということを目的に、様々な発射の形態、列車で移動するプラットフォームから発射をしたり、あるいは潜水艦を追求したりといったような形になっているわけなんですね。
したがって、この北朝鮮のミサイル脅威に対してどういうふうに我が国を守るかというのは、これはもう本当に真剣に考えなければいけない話だと思います。
これまで自衛隊は、弾道ミサイル防衛、BMDシステムというのを構築をして、実際それを運用してきたわけですね。今般、北朝鮮が衛星を打ち上げるということを通告いたしましたので、万が一それが日本に着弾するようなことがあってはならないわけですから、既存の弾道ミサイル防衛システムを使ってその可能性に対処する態勢をやっぱり取るわけです。ところが、今の弾道ミサイル防衛システムでは、やはりその極超音速ミサイルですとか軌道を変更するミサイルに対処するのは極めて困難だというふうに言われておりますので、その対処する態勢を構築するというのが、まずやはり重要だと思います。
これは、アメリカとの関係というよりは、むしろ、アメリカが持っている様々な衛星情報ですとか、そういったものを日本の防衛のためにいかに活用していくかという発想かなというふうに思っております。
アメリカは、もちろん、北朝鮮がICBM、大陸間弾道ミサイルを開発をして、アメリカ本土を脅かすような核ミサイルを持つと、これはもう本当に真剣にアメリカは防衛のために考えると思いますけれども、今のところは、同盟国である日本あるいは韓国をその北朝鮮の核ミサイルの脅威からどうやって防衛をするかという間接的な話なんですね。したがって、主体は日本だと思いますので、日本の防衛のためにIAMDは必要であるというふうに考えております。

○山添拓君 ありがとうございます。
次に、佐藤参考人に伺いたいと思います。
癒着の話が、官民の癒着の話が先ほど来少し出ております。
羽田議員の質問に対して、癒着が生じるのは、官の裁量の大きいときに民が必要以上に寄り添うと、こういう中で生まれてきたのではないかという御所見も述べられ、なるほどなと思ったんですが、今度の法案では、支援をする企業は大臣認定による計画を実施していく企業が対象となっています。あるいは、輸出に関して言えば、指定法人を通じた助成金の交付という形です。さらに、国有化ということもありますが、これはむしろ国の裁量を強化していく、拡大していくような法案ということでもあると思うんですね。その意味で、この法案によって進めようとしている種々の支援というのも、佐藤参考人の言葉で言えばかなり悩ましいたぐいのものということになるのでしょうか。

○参考人 拓殖大学教授(佐藤丙午君) ありがとうございます。
先ほど羽田先生の御質問に答えて、官民の癒着の場合は、官の裁量が大きい場合に民がそれに過剰に寄り添うときにそういうことが起こるというふうに申し上げました。
過去の防衛省における不祥事を見ている限りにおいては、やはり、官の意向に過剰にそんたくし、官の意向を先取りする形で民間企業が動くところに様々な問題が生じてきた過去があるように思います。そういう意味においても、今回この基盤強化法の中で、官が認定し官の裁量を増やすというところにおいてやはり潜在的にはそういうリスクがあると思いますので、その癒着をいかに防止し公正な競争を担保するかということが、この法案を円滑に進める際の一つの肝といいますか、鍵といいますか、非常に重要なポイントだと思います。

○山添拓君 佐藤参考人、加えて伺いますと、その意味で、この法案では、防衛大臣の判断に委ねて、政令など下位の規範に委ねているところが幾つかあるかと思います。それらは法案審議の中では必ずしも明らかにされていないところかと思うのですが、そういった点で、少なくともこのような点は、先ほど透明性という話もありましたが、透明性の確保のためにこういう点は必要だと、癒着は構造的に生まれやすい問題だとは思いますので、何か御意見がありましたら伺えればと思います。

○参考人(佐藤丙午君) 官民の癒着を防ぐための制度的な様々な工夫というのは、防衛省の中にもあると思いますし、また、予算の審議を通じて、立法府においても様々な探求というのはなされていくものだというふうに考えております。
国民の一人としては、やはり防衛大臣を含めて政治の責任というのを非常に重く考えておりますので、その政治の責任の中で、透明性の担保、またそれが公正に運営されているという、公正に運営、運用されているということをモニターしていっていただければ有り難いというふうに考えております。

○山添拓君 ありがとうございます。
杉原参考人に伺います。
日本は長く武器輸出の禁止を国是としてきましたが、先ほども御答弁があったように、二〇一四年、安倍内閣の下で防衛装備移転三原則で百八十度転換され、その後も拡大されてきました。
武器輸出禁止が言わばなし崩しにされてきたと思います。その経過ですとか、それについてのお考えについてお示しいただければと思います。

○参考人 武器取引反対ネットワーク(NAJAT)代表(杉原浩司君) ありがとうございます。
皆さん外交防衛委員ですから御存じのことなんですが、六七年、七六年、佐藤内閣、三木内閣によって事実上の全面禁輸、輸出禁止になったわけですが、八五年に中曽根内閣が対米武器技術供与を解禁し、そして、二〇〇四年、五年にミサイル防衛の日米共同開発で穴を空け、さらに、野田民主党政権が武器の国際共同開発を丸ごと例外化するという形で大きな穴を空け、最終的に安倍政権が二〇一四年に原則そのものを撤廃したと。しかも、閣議決定だけで撤廃したわけですね。
私、そのこと自体が非常に問題だと思っていまして、なぜかといえば、かつての武器輸出三原則というのは、八〇年代に衆参両院で全会一致で、厳格に守るべきだという決議を上げているわけです。ですから、閣議決定だけでそれを撤廃するんじゃなくて、少なくとも再び全会一致の決議を衆参で取って転換するんだという、それぐらい重い国是とまで言われた平和原則だったわけですが、それをいとも簡単に安倍政権が閣議決定で撤廃して、それ自体がやっぱり暴挙だと思うんですね。
その前提の上で、今回、安倍さんがやりたかったことを菅さんが先送りし、そして岸田さんがいよいよ、一つは、敵基地攻撃能力の保有にお墨付きを与え、そして今、自公の与党協議によって、これも秘密協議です、何も分からない、私たちには。しかも国会は無視するわけですね、ここまま行けば。与党だけで、秘密協議によって殺傷能力のある武器の輸出にかじを切るかもしれないという、そういう重大なある意味最終的な段階に来ているということ自体が非常に問題で、私が強く訴えたいのは、先ほど佐藤参考人の方からも、武器輸出の妥当性について国会が責任を負うべきだという意見ありました。それと同じように、今回、殺傷能力のある武器輸出まで解禁しようとする、もしそういう決定を自公が与党協議でやろうとするのであれば、少なくとも最終決定の前に必ず国会を関与させるべきだと思うんですね。方法はいろいろあると思います。この委員会でやっぱりしっかりとした審議時間を取って集中審議なりをするなり、あるいは特別委員会を設置してもいいです。公聴会やパブリックコメントだって必要だと思います。
それぐらい重みのある決定なわけですから、絶対に与党協議のみでさせない、立法府として、武器輸出、賛否にかかわらず、それぐらいのやっぱり立法府としての責任を是非果たしていただきたいというふうに思っています。

○山添拓君 ありがとうございます。
もう一点、杉原参考人に伺います。
本法案は、企業に対しても、従業員に対しても、軍需産業への一層の適応を求めて、そしてこれに応じる企業には様々な支援メニューを用意しています。中小の事業者を含めて、産業の軍事化を進めることになるだろうと思います。
この間の政治を全体として見ますと、例えば学術会議への行政の介入は、軍事研究解禁への圧力という側面があろうかと思います。あるいは、経済安全保障、今日も話題に上っていますが、これも米中対立の中で、経済を軍事に従属させようとする動きと言えると思います。
こうした産業や経済、学問など、社会の全体を軍事中心に言わば誘導するような動きに関わって、是非御所見を伺えればと思います。

○参考人(杉原浩司君) ありがとうございます。
おっしゃるとおりなんですね。
先ほど尾上参考人の方からも、経済安保法と一体なんだというお話がありました。ある意味、確かにそうなんです。逆に言うと、私から見れば、山添議員がおっしゃったことと同じなんですが、今進んでいる事態というのは、本当に、日本の国家、ある意味総動員で、学術も技術もあるいは産業も経済も、やはり戦争の準備のような形で軍事的な方向に全体が今進んでいるというふうに思うんですね。
学術会議についても、おっしゃられたとおり、防衛省の軍事研究推進制度に慎重な対応を示した声明を出したわけです。それに対してやはり自民党などは、何を言っているんだということで、そうであれば、結局今進んでいる事態は、軍事研究制度、防衛省の制度には大学の応募がもう激減している。じゃ、もうそこは無視して、経済安全保障法によって五千億円の基金を積んで、研究者を一本釣りしていくという、そういうある意味別の方向から軍事研究の誘導を行っている。
御存じだと思いますが、元国家安全保障局の次長の兼原信克さんは、最近では、筑波研究学園都市のような軍事研究に特化した学園都市をつくれと、一兆円を付けて横須賀辺りにつくれみたいなことを堂々と言い出している。これも、かつてであれば荒唐無稽な意見だったんですが、今の状況だと実現しかねないような状況になっていて、私たちも本当に対応できないぐらい様々な分野で軍事的な方向がかじを切られている。やっぱり、私たち、日本の平和主義にとって非常に大きな正念場だと思っています。
世論は必ずしもそこに全て誘導されているわけではないわけですね。武器輸出についての非常に慎重な世論がまだしっかりとある。そういう中で、国会との乖離が激し過ぎると僕は思っています。ですから、もっとバランスの取れた議論をしていただきたい。衆議院の参考人、四人とも法案賛成派ですよ。参議院でようやく私が何か異物であるかのように入っているけれども、これバランス悪過ぎます。
幾ら賛成会派が多いといっても、だからこそ批判的な意見をきちっと受け止めて議論するのが参議院としての良識の府だと僕は思うんですね。そういう懐の深さを持って、今のこの全面的な軍事化とも言うべき国の曲がり角、もっと慎重にこれでいいのかどうかを見極めながら議論をしていただきたいと強く思っています。

○山添拓君 重く受け止めて審議に当たりたいと思います。
杉原参考人に残りの時間で簡潔にお答えいただければ有り難いですが、武器取引反対ネットワークの活動を拝見しますと、軍需産業を構成する大企業に対して直接の要請やいろんな申入れなどを行ってこられたと思います。企業側の対応で何か印象的だった出来事がありましたら、最後に御紹介ください。

○参考人(杉原浩司君) 有り難い質問です。
私たちの活動って本当に地道で、企業に申入れに行ったり、あるいははがきを送って武器輸出をやめてください。最近の例でいえば、三月十五日に幕張メッセで行われた武器見本市で、イスラエルのエルビット・システムズという軍事企業があります。これ、パレスチナ人を実験台に武器を開発してきた、まさに死の商人だと私は思いますが、そこと提携して日本で売り込みを手伝うという日本エヤークラフトサプライさんと伊藤忠アビエーションさんが契約を取り交わして、見本市の会場でシャンパンを乾杯したんですね。ここまで日本は来ているんです。ですから、私たちは、それをやめてほしい、政権が替わらなくとも企業がやめれば実現しないわけですから、そこに働きかけをやってきました。
で、今まで成果は余りないんですが、唯一あったのは、二〇一八年の夏に川崎の市営のスポーツ施設で行われたイスラエルの監視カメラやサイバーセキュリティー製品の、まあ武器ではないですが、準武器のような見本市について反対の取組をした結果、この見本市に最も日本の企業で前のめりになっていたソフトバンクさんが出展も協賛もスピーチも全て、直前ですが、取りやめたんですね。それは私たちが働きかけて、地元の神奈川新聞さんがしっかり報じてくれることによって、このまま突っ込めば企業としてのイメージダウンにつながるということで決断をされたわけです。

○委員長(阿達雅志君) 申合せの時間が参りましたので、おまとめください。

○参考人(杉原浩司君) ですから、私たちの取組は無駄ではない。市民として、消費者として企業に対して物を申していくということは、権利でもあるし、力もあるということを議員の皆さんにも理解していただきたい、そういうふうに思います。

○山添拓君 終わります。ありがとうございました。

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