山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2023年・第211通常国会

憲法整合性検討せず 敵基地攻撃能力保有 批判

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
本法案で言わば財源探しをしている五年で四十三兆円もの大軍拡は、昨年十二月に閣議決定された安保三文書に基づくものです。今日は、連合審査会の最初の審議ですので、敵基地攻撃能力の保有、解禁を始め、そもそも岸田政権が進める大軍拡が許されるものか否かという点から議論をしたいと思います。
内閣法制局に伺います。
安保三文書の閣議決定に先立って、防衛省からどのような意見照会があったんでしょうか。

○内閣法制局 第一部長(木村陽一君) 昨年の十二月十六日に閣議決定されました国家安全保障戦略等につきましては、国家安全保障局及び防衛省から閣議決定に先立って御照会がありまして、当局では、従前からの憲法解釈との整合性の観点から確認を行い、最終的に異論がないことを確認いたしまして、国家安全保障局及び防衛省に対しまして意見がない旨を回答したものでございます。

○山添拓君 憲法解釈にも関わって意見照会を受け、審査を行ったということかと思います。
資料をお配りしています。これがその法制局の回答書ですが、意見がない旨回答したとあります。改めて聞きますが、これはどういう意味ですか。

○政府参考人(木村陽一君) 当局におきましては、昭和三十一年二月の船田防衛庁長官代読によります鳩山総理答弁、そういうものを原点といたしまして、累次のその国会答弁、質問主意書、そういったその答弁書で示されております政府の考え方に照らしまして、その三文書の記述を法理の面から確認をし、意見がないという旨を回答したものでございます。

○山添拓君 今、法制局は昭和三十一年の答弁を挙げられました。
資料の二枚目を御覧ください。安保三文書も、防衛省が法制局に提出した参考資料も、また今の答弁も、敵基地攻撃が法理的には自衛の範囲に含まれ、可能とした、昭和三十一年、一九五六年の鳩山内閣の答弁を引用しています。しかし、そのすぐ下に挙げておりますが、政府は、従来、敵基地攻撃は法理的には可能とする一方で、そういう事態は現実には起こり難いとして、平生から他国を攻撃するような兵器を保有することは憲法の趣旨とするところではないとしていました。つまり、敵基地攻撃は法理的には可能ということと、その能力を保有することは憲法の趣旨とするところではない、二つの観念は別個の問題だと述べています。一九五九年、伊能防衛庁長官の答弁です。
法制局は、安保三文書とこの五九年答弁の関係については検討されたんでしょうか。

○政府参考人(木村陽一君) 個々の答弁との整合性一つ一つにつきましてお答えすることは難しいんでございますけれども、基本的には、その昭和三十一年の鳩山総理答弁で示された法理といいますのは、私どもとしては一貫しているものということで理解をしておりますし、政府として、昭和三十一年の鳩山答弁の法理を確認する趣旨の答弁も積み重ねられているというふうに理解をしております。

○山添拓君 いや、そんないいかげんな話はないですよ。個々の答弁で片付くような答弁じゃないですよね。
これは、敵基地攻撃は法理的には可能、しかしその能力の保有については憲法の趣旨でない、二つは独立に、矛盾しないものだと、これ五九年に言われているわけですよ。それを個々の答弁だといって無視してきたんですか、内閣法制局は。

○政府参考人(木村陽一君) 考え方としては一貫してきているということで申し上げたものでございます。

○山添拓君 いや、全く一貫していないと思います。
内閣法制局の役割は法律問題について意見を述べると、こういうものだと思います。ところが、憲法の趣旨に反するという、この過去の国会答弁との関係については、少なくともこの安保三文書に当たって、検討しなかったということですね。

○政府参考人(木村陽一君) 先ほど申し上げたとおり、鳩山総理の答弁のその考え方というのは一貫していると、私どもとしては理解をしておるところでございます。

○山添拓君 五九年の答弁について、どう評価され、どう検証されたのかと伺っているんですよ。

○政府参考人(木村陽一君) この答弁をどのように理解するかということにつきましては、私どもとして、直ちにこの場でお話、御答弁を申し上げるべきものかどうか少し迷うところでございますけれども、少なくとも、平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っているというようなことは、憲法の趣旨とするところではないと申しますのは、従来、政府として答弁してきております、性能上専ら相手国の国土の壊滅的破壊のためにのみ用いられる、いわゆる攻撃的兵器は保有が許されないというような趣旨のものと理解することが当然できると思いますし、そういった答弁も含めまして、私どもとしては全体をその一貫したものとして理解をしているということでございます。

○山添拓君 この場で答弁することは迷うとおっしゃいましたので、改めてこの連合審査会に見解を出していただきたいと思います。

○委員長(酒井庸行君) 後刻理事会で協議いたします。

○山添拓君 つまり、これでは何のための法制局かということになると思うんですね。
資料の三枚目を御覧ください。
防衛省が法制局への意見照会の際、添付した「反撃能力について」と題する説明資料がしんぶん赤旗日曜版の情報公開請求で開示されました。その一枚です。「日米共同対処」というタイトルです。以下のオペレーションのサイクル、特に目標情報の共有、反撃を行う目標の分担、成果についての評価の共有等について、日米で協力を行うなどと書かれて、すぐ下には一連の行動がサイクル状に図示されています。
防衛省に伺いますが、ここにある指揮統制を日米で共同して行うというのはどういう意味でしょうか。

○防衛省 防衛政策局次長(安藤敦史君) お答え申し上げます。
まず、国家防衛戦略に記載したとおり、反撃能力につきましては、弾道ミサイル等の対処と同様に、日米が協力して対処していくこととしております。
御指摘の資料は、我が国政府の検討資料として、一般的に考えられる反撃能力のオペレーションサイクルを示した上で、目標情報の共有、目標の分担、攻撃成果についての評価の共有等について、日米で協力を行うことが考えられる旨を記載したものでございます。
その上で、情報収集を含め、日米共同でその能力をより効果的に発揮する協力体制を構築することとしておりますが、その具体的な協力の内容については、今後、日米両政府間において議論していくものであり、また、自衛隊の運用に関わる事柄であるため、その詳細についてはお答えできないことを御理解いただきたいと考えております。

○山添拓君 指揮統制で協力するということになれば、これは一体に武力行使を行うことにならざるを得ないと思うんです。
安保三文書は、統合運用の実効性を強化するためといって、陸海空自衛隊の常設の統合司令部を創設するとして、一月の日米2プラス2ではアメリカ側からこの常設の統合司令部設置の決定を歓迎する旨の発言があったと言います。
防衛大臣に伺います。
自衛隊の統合司令部は、この図に言う指揮統制で米側の総合司令部とどのように協力するんですか。

○防衛大臣(浜田靖一君) 本年一月の日米2プラス2において、戦略三文書に関する議論を行う中で、米側から日本による常設の統合司令部設置の決定について歓迎の意が示されたことは、今委員からお話があったとおりであります。
常設の統合司令部については、その具体的な在り方について現在検討中であり、お答えできる段階にはありませんが、陸海空自衛隊の一元的な指揮を行い得るようにすることで、統合運用の実効性を強化するために検討を進めているところであります。
日米協力については、統合司令部の下でも連携を一層強化させる必要が考えておりますが、まずは常設の統合司令部の具体的な在り方を検討した上で米側と議論していくことになると思っております。
いずれにせよ、あっ、そこで止めます。

○委員長(酒井庸行君) どうぞ、大臣。いいですか。

○山添拓君 結局、これからだということでお話にならないのですが、この図のとおりであれば、日米の統合司令部が共同で反撃能力、敵基地攻撃能力の行使を担っていくということになるだろうと思います。
安保三文書は、ミサイル迎撃と敵基地攻撃を一元的に運用できる体制、IAMD、統合防空ミサイル防衛を強化すると記しています。これは米軍が同盟国に求めている構想です。総理や防衛大臣は、このIAMDについて、アメリカのIAMDとは異なる我が国の主体的な取組であって、自衛隊と米軍は各々独立した指揮系統に従って行動するなどと答弁されてきました。
大臣に伺うんですが、この図によりますと、日米は各々独立などでは全くなくて、文字どおり一体じゃありませんか。

○国務大臣(浜田靖一君) この図の、図で、図を見ればそういうふうに見えるかもしれませんが、しかしながら、我々とすれば、常にその指揮系統については我が国の指揮系統に基づいてこれを判断して行うということでございます。

○山添拓君 いや、この図で説明してくださいよ、これを法制局に届けたんですから。指揮統制も共同対処の一環となっていますよ。独立して行うんだったら、日米は別々のサイクルになるはずじゃありませんか。

○国務大臣(浜田靖一君) 私といたしましては、今申し上げたとおり、指揮統制でここまでこういった形で流れていくということがここに示されているのであって、我々とすれば、これはあくまでも情報を収集するための一環として考えているところがあるわけであります。常に我々が自分たちの指揮の下に情報を収集して動くということは、これは当然のことであります。

○山添拓君 情報収集について言われました。そこで伺いますが、これは、火力発揮、すなわち攻撃の後は、BDA、攻撃の成果についての評価を行う、ISRT、情報収集、警戒監視、偵察、追尾等、そして情報分析、次の計画立案、目標割当て、攻撃と続いていくんですね。
日本は、戦果や、戦果の確認や攻撃目標の情報収集を独自に行う手段を持っておりません。ですから米側と協力するということなんでしょうけども、そうやって米側から提供された情報が正しいものかどうか、これはどうやって確認するんですか。

○政府参考人(安藤敦史君) お答え申し上げます。
スタンドオフ防衛能力等を活用した反撃能力につきましては、弾道ミサイル等の対処と同様、日米の協力により対処することとしており、情報収集、分析についても日米で協力することとなりますが、米国の情報だけでなく、我が国自身で収集した情報を始め全ての情報を総合して運用していくものでございます。したがいまして、我が国が主体的な判断ができないとの御指摘は当たらないものと考えております。

○山添拓君 いや、聞いていることはそうじゃないんですよ。
もちろん両方の情報があると思うんですが、米側からしか得られない情報があるからこそ協力するんだと思うんですね。そのときに、米側の情報が正しいのかどうか、これは確認するすべがないんじゃないですか。

○政府参考人(安藤敦史君) お答え申し上げます。
先ほど申し上げましたが、先ほど申し上げましたとおり、米国の情報だけではなく、我が国自身で収集した情報を始め全ての情報を総合して運用していくこととなっております。したがいまして、我が国が主体的な判断により対応するというものでございます。

○山添拓君 いや、それはお答えになっていないですよ。結局、米側の情報は正しいという前提で対応せざるを得なくなると思うんです。
ついでに教えていただきたいんです、この図について。攻撃は、この図によると、どこで終わるんですか。出口はないじゃありませんか。

○政府参考人(安藤敦史君) お答え申し上げます。
御指摘のとおり、まさに反撃能力のオペレーションサイクルを示したものでございまして、これを、目標情報の共有、目標の分担、攻撃成果についての評価の共有等、こういう流れで業務が行われていくというところでございます。

○山添拓君 流れていったら、いつまでたっても終わらないわけですよ。元航空自衛隊第七航空団司令の林吉永さんは、しんぶん赤旗日曜版の取材に対して、米軍の判断に引きずられ、反撃に際限がなくなると答えています。そのとおりだと思います。アメリカがよしと言うまで米軍と一緒に、文字どおり際限のない戦争に巻き込まれてしまいかねないと思うんですね。
財務大臣に伺います。
敵基地攻撃能力の保有解禁を政府は憲法の範囲内でと繰り返してきましたが、しかし、最初の法制局とのやり取りでもお分かりのように、防衛省も内閣法制局も憲法や過去の政府答弁との整合性についてすらまともに検討されてないようですよ。大臣、そのことを御存じでしたか。

○財務大臣(鈴木俊一君) 防衛省と法制局のこのやり取りについてつまびらかには存じていないところでございますが、一つの法案を作るということにおいては、これはもう通常におきまして所轄の省庁と法制局でしかるべく検討が行われるということだと理解しております。

○山添拓君 時間ですから終わりますけれども、つまびらかでないとおっしゃったのは、私は無責任だと思います。これ、軍部の暴走を止められず、侵略戦争へ突き進んだ戦前を思わせる態度だと私は感じます。
異常な大軍拡を進めて暮らしを圧迫する、更に地域の緊張関係を高めるなど言語道断だということを申し上げて、質問を終わります。

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